もちろん、広告とはつねに商品についての広告であり、その特徴や他の商品との差異[1] について広告しているように見える。だが、人がたとえばある洋菓子店のウィンド一のプディングの並べ方は他の店に比べてセンス[2] が良いと感じるとき、あるいはある製菓[3] 会社のプディングのコマーシャルは別の会社のよりも迫力に乏しい[4] と思うとき、それは広告されているプディング同士の差異を問題にしているのではない。それは、プディングとは独立に、広告それ自体のあいだの差異を問題にしているのである。
広告と広告とのあいだの差異――それは、広告が本来媒介[5] すべき商品と商品とのあいだの差異に還元[6] しえない、いわば「過剰[7] な」差異である。それゆえそれは、たとえばセンスの良し悪しとか迫力の有る無しとかいうような、違うから違うとしか言いようのない差異、すなわち客観的対応[8] 物を欠いた[9] 差異そのものとしての差異としてあらわれる。
だが、広告のこの過剰であるがゆえに純粋[10] な差異こそ、まさに企業の広告活動の拠って[11] 立つ基盤[12] なのである。
言語についてソシュ–ルは、「すべては対立として用いられた差異にすぎず、対立が価値を生み出す。」と述べているが、それはそのまま広告についてもあてはまる。差異のないところに価値は存在せず、差異こそ、価値を生み出す。もし広告が単に商品の媒介にすぎず、広告のあいだの差異がすべて商品のあいだの差異に還元できるなら、企業にとってわざわざ広告活動をする理由はない。企業が広告にお金を出すのは、ひとえに[13] 広告の生み出す過剰なる差異性のためなのである。すなわち、広告とは、それが商品という実体の裏付け[14] をもっからではなぐ逆にそれがそのような客観的対応物を欠いた差異そのものとしての差異を作り出してしまうからこそ、商品の価値に帰着しえないそれ自身の価値をもっのである。
[1]差異①【さい】【名】
差异;差别。(違い。隔たり。)
△予算と実情との差異/预算与实际业绩间的差异。
[2]センス①【センス】【名】【英】sense
(1)感觉;审美能力···美感,品味。(感覚的能力。)
△女性はアクセサリーをつける場合がありますが、仕事のじゃまにならない程度の、センスの感じられるものをさりげなく身につけると良いでしょう。/女性有时候会带首饰,但要注意不要给工作带来不便,随意地带一些有品位的就好。
△彼女のセンスは時代にマッチしている。/她的审美能力跟得上时代(和时代一致)。
(2)常识。(常識。)
△コモンセンス。/常识。
[3]製菓◎【せいか】【名】
制造糕点
[4]乏しい③【とぼしい】【形】
(1)缺乏,不足,缺少。(たりない。)
△経験が乏しい。/缺乏经验。
△魅力に乏しい。/缺乏魅力。
(2)贫穷,贫乏,贫困。(まずしい。)
△乏しい生活に耐える。/忍受贫苦的生活。
△乏しきを憂えず、等しからざるを憂う。/不患寡而患不均『成』。
[5]媒介◎【ばいかい】【名·他动·三类】
媒介,传播。(···方の間にはいって仲立ちをすること。橋渡し。多く,病原菌をうつすこと。)
△病原菌を媒介する。/传播病菌。
△マラリアは蚊の媒介によって伝播する。/疟疾由蚊子(作媒体)传播。
[6]還元 [U]
かんげん
* [0]〔還元〕〈名?自他サ〉
(1)酸化物から酸素をとりさること/指从氧化物中除去氧?还原?
【反】酸化?
(2)みんなのためになるようにすること?また?もとにもどすこと/指使之有益于大家?也指恢复原样?还给?恢复?还原?
△うけた恩惠を社会に~する/把享受的恩惠还给社会?
△白紙~/恢复原状?
[7]過剰◎【かじょう】【名·形动】
过剩。(必要な、また···適当な数量や程度を超えていること。)
△人口過剰。/人口过剩。
△生産が過剰だ。/生产过剩。
△過剰人員に苦しむ。/苦于人员过剩。
△過剰物資。/过剩的物资。
[8]対応◎【たいおう】【名·サ変自】
(1)对应,相对;相互正对着。(互いに向かい合っていること。)
(2)互相平衡。(互いに釣り合うこと。)
△人気に対応する実力がない/没有与受欢迎程度相适应的实力。
(3)··付,回应。看人行事。(相手に応じて物事をすること。)
△交通事情に対応して一方通行を実施する/为适应交通情况实行单线通行。
△相手のでかたに対応する/应付对方的态度。
△対応策を考える/考虑相应的对策。
(4)两个事物互相处于一定的关系。(二つの物事が互いに一···の関係にあること。)
△意味···対応する語/意思相对应的词语。
[9]欠く①◎【かく】【他动·一类】
(1)缺,缺乏,缺少。(···足する。)
△あの人は常識を···いている。/那个人缺乏常识。
△塩は1日も欠くことができない。/食盐一天也不能缺。
△暮らしにはこと欠かない。/生活还过得去(不缺什么)。
△必要欠くべからず。/不可欠缺。
△歯を欠く。/掉牙。
△刃を欠く。/缺刃。
[10]純粋◎【じゅんすい】【名·形动】
(1)纯净。(まじりけのないこと。)
(2)完全。(完全なこと。)
△純粋数学。/纯理论数学。
(3)纯粹。(邪念···欲がなく清らかなこと)
△純··な若者。/纯真的年轻人。
△··粋に真理を追求する。/一心追求真理。
[11]拠る◎【よる】【自动·一类】
(1)由于,因为。(それを原因とする。起因する。)
△火の不始末に拠る火災。/对火不经心引起的火灾。
△不注意に拠るミス。/由于不小心而造成错误。
(2)在于,取决于,要看……,与……有关。(物事の性質や内容などに関係する。応じる。従う。)
△時と場合に拠る。/···决于时间和场合;看时间和情况。
(3)靠,依赖;通过,利用。(頼る。依存する。手段···する。)
△辞書によって、知···ないことばの意味を調べる。/不懂的词,靠辞典来查明它的意义。
△思想は言語によって表現される。/思想通过语言来表达。
(4)基于,根据,按照;遵照。(根拠とする。)
△聞くところに拠ると。/据闻。
(5)有关,在于,取决于。(よりどころとする。のっとる。)
△努力いかんによる。/在于有多努力。
[12]基盤◎【きばん】【名】
(1)基础;底座;底子。(物事が動いていくための一番基礎となるもの。)
△…を基盤とする/以……为基础。
△…の基盤をなす/构成……的基础。
△田舎に基盤を置いている/把基础放在乡下。
△基盤が弱い/基础薄弱;底子薄。
[13]偏に②【ひとえに】【副】
专心;诚心诚意;完全(同まったく;ひたすら)
[14]裏付け◎【うらづけ】【名】
证据。(从旁)支持。保证。···据。(証拠。証明。保証。)
△事実の裏付けのない論議は無意味だ。/没有事实根据的议论是无意义的。
△裏付け物資。/保证物资;回程物资。
△裏付け捜査。/搜查证据。