目录
- 作者(さくしゃ)の分身(ぶんしん)[1] である主人公(しゅじんこう)は、こうして庭(にわ)を眺(なが)めているうちに最近(さいきん)次々(つぎつぎ)と亡(な)くなった肉親(にくしん)[2] たちに思(おも)いを馳(は)せて[3] いく。つまり気分(きぶん)がますます沈(しず)みこんでいくわけで、これは先(さき)に述(の)べた「気分(きぶん)が和(なご)む[4] 」のとは逆(ぎゃく)のように思(おも)えるかもしれないが、実(じつ)は、普段(ふだん)は押(お)し殺(ころ)していた感情(かんじょう)が庭(にわ)の眺(なが)めに誘(さそ)い出(だ)され、一種(いっしゅ)の放電(ほうでん)[5] を起(お)こすことによって抑圧(よくあつ)[6] が解消(かいしょう)[7] されるのだから、本質(ほんしつ)的(てき)には「和(なご)む」のと同(おな)じ現象(げんしょう)である。そのことは、ひとしきり死者(ししゃ)を思(おも)った後(のち)に風呂場(ふろば)で頭(あたま)を洗(あら)っている主人公(しゅじんこう)が、葬式(そうしき)では決(けっ)して泣(な)かなかった自分(じぶん)が涙(なみだ)を流(なが)していることに気(き)づく、という結末(けつまつ)[8] によっても明(あき)らかだ。
- 思(おも)うに庭(にわ)の大(おお)きな効用(こうよう)の一(ひと)つは、このような治癒(ちゆ)[9] 効果(こうか)にあるのではないだろうか。そのために最低限(さいていげん)必要(ひつよう)なのは、住(す)まいに接(せっ)して、とくに美(うつく)しいものや素晴(すば)らしい眺(なが)めではなくとも、視線(しせん)を受(う)けとめてくれるに足(た)る私的(してき)に囲(かこ)われた自然(しぜん)の断片(だんぺん)[10] が存在(そんざい)することである。それを見(み)て心(こころ)が和(なご)むのは、自然(しぜん)の営(いとな)み[11] というものが、いかに断片(だんぺん)であっても、人間(にんげん)の日常(にちじょう)生活(せいかつ)の偶発(ぐうはつ)[12] 的(てき)な喜怒哀楽(きどあいらく)[13] と独立(どくりつ)[14] したリズムを持(も)って動(うご)いており、ぼくたちはそのリズムを感(かん)じとることで自分(じぶん)の感情(かんじょう)をなにがしか相対(そうたい)[15] 化(か)できるからではないか。つまりこの場合(ばあい)、視線(しせん)を受(う)けとめてくれるということは感情(かんじょう)を受(う)けとめてくれるというのにほぼ等(ひと)しい。
作者の分身[1] である主人公は、こうして庭を眺めているうちに最近次々と亡くなった肉親[2] たちに思いを馳せて[3] いく。つまり気分がますます沈みこんでいくわけで、これは先に述べた「気分が和む[4] 」のとは逆のように思えるかもしれないが、実は、普段は押し殺していた感情が庭の眺めに誘い出され、一種の放電[5] を起こすことによって抑圧[6] が解消[7] されるのだから、本質的には「和む」のと同じ現象である。そのことは、ひとしきり死者を思った後に風呂場で頭を洗っている主人公が、葬式では決して泣かなかった自分が涙を流していることに気づく、という結末[8] によっても明らかだ。
思うに庭の大きな効用の一つは、このような治癒[9] 効果にあるのではないだろうか。そのために最低限必要なのは、住まいに接して、とくに美しいものや素晴らしい眺めではなくとも、視線を受けとめてくれるに足る私的に囲われた自然の断片[10] が存在することである。それを見て心が和むのは、自然の営み[11] というものが、いかに断片であっても、人間の日常生活の偶発[12] 的な喜怒哀楽[13] と独立[14] したリズムを持って動いており、ぼくたちはそのリズムを感じとることで自分の感情をなにがしか相対[15] 化できるからではないか。つまりこの場合、視線を受けとめてくれるということは感情を受けとめてくれるというのにほぼ等しい。
[1]分身 [U]
ぶんしん
[0]〔分身〕〈名〉
もとの体からわかれでた別のもの/由原身体分出的另一物?结晶?
△子は親の~だ/孩子是父母的结晶?
(2)仏が衆生を教え救うために?種種のすがたに変えて現れること?また?その現れたもの/佛陀为了普渡众生,变化成各种形象出现?也指其变化的形象?显圣?化身?
[2]肉親◎【にくしん】【名】
骨肉亲,亲人。指血缘关系很···的人。(きわめて近い血縁関係にある者。)
△肉親もおよばない親切。/比亲骨肉都热情。
△肉親を失う。/失去骨肉。
[3]馳せる②【はせる】【自·他动·二类】
(1)驱(车)(),策(马)()。(走らせる。車·馬などを速く走らせる。(気持ちなどを)遠くまで至らせる。)
△馬を馳せる。/策马奔···。
(2)传名。((名前などを)広範囲に行きわたらせる。とどろかす。)
△名声を馳せる。/驰名。
△世界中に名を馳せる。/驰名中外。
△私は昼も夜もなく馳せてきた。/我没日没夜的赶过来的。
[4]和む②【なごむ】【自·一类】
(表情等)稳静,温柔,··静下来,温和起来;(气候等)温和,缓和。(気持ちなどがやわらいで落ち着く。なごやかになる。)
△思わず表情が和む。··不由地表情温和起来。
△心が··む。/心情平静下来。
△寒さ··和む。/冷劲儿缓和了。
△彼··いると心が和む。/和他在一起心里稳妥。
[5]放電◎【ほうでん】【名·自动·三类】
放电。(帯電体···電気を失う現象。電池から電流が流れ出ること。)
△放電管。/放电管。
△放電電流。/放电电流。
△火花放電。/火花放电。
[6]抑圧◎【よくあつ】【名·他サ】
压制,压迫。强行控制··动或自由等。(行動や自由などを無理におさえつけること。)
△抑圧を受ける。/受压迫。
[7]解消◎【かいしょう】【名·自他サ】
解除,取消,消灭··(それまでにあった関係や状態をすっかりとりのぞくこと。)
△発展的解消をする/为了发展[扩大组织]而解散。
△この雨で水不足も解消した/由于这场雨旱象也解除了。
△契約を解消す···/取消合同。
△婚約を解消す···/解除婚约。
[8]結末◎【けつまつ】【名】
结尾,终结;(最后的)结果···结局。(物事·文章などの終り。最後のしめくくり。)
△結末がつく。/有了结果;结束了;定局。
△結末をつける。/结束;解决。
△その事件はまだ結末がつかない。/那个事件还没有了结。
[9]治癒①【ちゆ】【名】【自サ】
治愈,治好,痊愈。(手···ての結果、病気が治ること。)
△完全に治癒する。/完全治好。
△治癒率。/痊愈率。
[10]断片③◎【だんぺん】【名】
断片,片断,部分。(細かく···ぎれた、一片。また、まとまったものの、わずかな一部分。)
△会話の断片。/会话的片断。
△生活の断片。/生活的片断。
[11]営み◎【いとなみ】【名】
(1)行为。(生活·行為。〕
(2)工作,事情。(生活のための仕事。)
(3)准备,从事。〔したく。〕
(4···做法事。(神事·仏事を行うこと。)
(5)特指性行为。(特に、性行為。)
△性の営み。/性交。
[12]偶発◎【ぐうはつ】【名·自サ】
偶发,偶然发生。(物··が思いがけず起こること。)
△偶発的なできごと。/偶发事件。
△偶発戦争。/偶然发生的战争。
[13]喜怒哀楽①【きどあいらく】【名】
喜怒哀乐。(喜びと怒り···悲しみと楽しみ。人間のさまざまな感情。)
△アイドルの喜怒哀楽。/作为一个偶像的喜怒哀乐。
△俳優になりたいなら、まず喜怒哀楽を表現してみて。/想要成为演员先试试表演一下喜怒哀乐。
[14]独立◎【どくりつ】【名·自动·三类】
(1)孤立,独立,单独存在。(単独の存在。)
△母屋から独立した部屋/和主房不毗连的房屋。
(2)独立。(個人が一家を構え、生計を立て、私権行使の能力を有する事。)
△彼はもう独立して生活している。/他已经独立生活了。
△アフリカの国々は植民地支配から独立した。/非洲的国家从殖民统治下独立了。
△独立採算制···/独立核算制。
△独立国。/···立国。
[15]相対◎【あいたい】【名】
(1)面对面,当面。(他人を仲介に立てないで、当事者がさしむかいで行うこと。)
(2)双方同意。(合意のうえであること。)
△相対尽す。/相互商定同意。