私は治療の結果が心配でした。手術の機械など私は持っていないので、鉛筆削り[1] の小刀[2] で持って、彼の翼から四発の散弾[3] を穿り出し[4] 、その傷口を石炭酸で洗って、ヨードフォルムをふりかけておいたのです。六発の散弾が翼の肉の裏側[5] からはいり込んで、そのうちの二発は肉を裏から表に突き抜けて[6] いました。多分この鳥を狙い撃ちにした男は、雁が空に舞い上がったところを見て、銃の引き金[7] を引いたのでしょう。そして弾丸[8] に当った雁は、空から斜めに落ちて来て、負傷[9] の痛手[10] が治るまで水草の中で休んでいるつもりでいたのでしょう。ちょうどそこへ私が通りかかったわけで、その時私は、言葉に言い現せないほど屈託[11] した気持ちで沼池の岸を散歩していたのです。
私は、縛った[12] ままの雁を部屋の中に置き去り[13] にして、隣の部屋で石炭酸のにおいのする手を洗ったり、雁に与える餌を作ったりしていました。けれど私自身はたいへん疲れてしまっているのに気がついて、私は火鉢[14] に凭れて[15] 眠ることしました。こういう眠りというものはしばしば意外に長い居眠り[16] となってしまうものです。そして夜更けになってからでなくては、眼がさめないというようなことがあります。
私は真夜中[17] ごろになって目がさめました。けたたましい[18] 雁の鳴き声[19] によって目を覚ましたのです。隣の部屋で傷ついた雁は甲高く[20] 且つ[21] 短く三度ほど鳴きました。足音[22] を忍ばせて襖[23] の隙間[24] からのぞいて見ると、雁は脚や翼を縛られたまま、五燭の電灯の方に首を差し伸べて、もう一度鳴いてみたいような様子をしていました。おそらくこの負傷[25] した渡り鳥[26] は、電灯の明かりを夜更けの月と見違えたのでしょう。
[1]鉛筆削り【えんぴつけずり】
削笔器,卷笔刀
[2]小刀③②【こがたな】
【名】
(1)小刀。(もの···削ったり、細工をしたりするときに用いる小さな刃物の総称。ナイフ。)
(2)···刀鞘旁插的小刀。(刀の鞘(さや)にさし添える小さな刃物。小柄(こづか)。)
(3)小··。小型刀。(小さい刀。)"id="amw_comment_0"/>
[3]散弾◎【さんだん】
【名】
小球形的子弹,铅··子。(発射すると、薬莢(やっきょう)に込められた多数の細かい鉛のたまが銃口から散らばって出るように作られた銃弾。ばらだま。)
△散弾銃。/散弹枪。
[4]穿り出す【ほじくりだす】
挖出,抠出;翻;[欠点などを]挑,挑剔.【他五】
挖出来
[5]裏側◎【うらがわ】
【名】
反面,背面。后面··朝里面的部分。(裏の方。裏に面する部分。裏面。)
△月の裏側。/月亮的背面。
[6]突き抜ける④【つきぬける】
【自动·一类】
(1)穿··,扎透。(突き破って裏まで通る。突き通る。)
(2)穿过。(向こう側··通りぬける。)
△横町を突き··けて大通りへ出る。/穿过胡同走上大道。
△雲を突き抜け、霧をはらって飛んで行く。/穿云拨雾地飞去。
[7]引き金◎【ひきがね】
【名】
(1)扳机。枪上的···属机件,射击时用手指扳动它,以便发射子弹。(小銃·ピストルなど、指で引いて弾丸を発射させるための金具。)
△引き··を引く。/扣扳机。
(2)诱因。开端,起因。((比喩的に)物事が引き··こされる直接的原因。きっかけ。)
△口論が引き金となってなぐり合いのけんかとなった。/吵着吵着就动手打了起来。
[8]弾丸◎【だんがん】
【名】
(1)子弹、炮弹的···称。枪弹。弹丸。(銃弾および砲弾の総称。)
△高速度弾丸。/高速炮弹。
(2)超···。高速。快速如飞。
△弾丸道···。/超速公路。
△弾丸列車。···高速列车。
[9]負傷◎【ふしょう】
【名·自动·他动·三类】
负伤,受伤;挂彩,挂花。(きずを負うこと。けが。)
△腕に負傷する。/腕部受伤。
△空襲のときの負傷がもとで死亡する。/因空袭时负伤至死。
△敵にたくさんの負傷者を出させた。/使敌方多人受伤。
△負傷者。/受··的人;负伤者;伤号;伤员。
[10]痛手◎【いたで】
【名】
(1)重伤。(重い傷···)
△痛手を負う。/负重伤。
(2)沉重的打击。(大きい被害や損害。)
△冷害で米作は痛手を受けた。/由于气候寒冷水稻受到严重损害。
[11]屈託◎【くったく】
【名】【自サ】
(1)担心···操心,发愁。(くよくよすること。)
△心に屈託がない。/心宽。
(2)厌倦,无聊。(飽きること···)
△屈託そうな顔をして、火···で火を弄っていた。/他显出一副无聊的表情,用火筷子挑弄着火苗。
[12]縛る②【しばる】
【他动·一类】
(1)捆,绑···(紐、縄などで結わえる。)
△まきを縛る。/捆柴。
△鉛筆···1ダースずつ縛る。/把铅笔捆成一打一把。
△傷口を布で縛る。/用布包扎伤口。
△ゆるくしばってあったので包みがほどけてしまった。/捆得不紧,包松开了。
(2)捆绑,束缚。(捕縛する。)
(3)拘束,限制,限制性行动自由。(ある基準を持って、行動の自由を制限する。)
△規則にしばられて動きがとれない。/被规章束缚住,不能动弹。
△わたしは勤務時間にしばられてはいない。/我不受工作时间的拘束。
△金で女を縛る。/用金钱束缚住女人。
[13]置き去り◎【おきざり】
【名】
扔下,抛开,丢在··头,遗弃。(特定の者だけをそこに置き、他はどこかへ行ってしまうこと。)
△ぼくひとり置き去りにしてみんな行ってしまった。/只把我一个丢下都走了。
△妻子を置き去りにする。/抛弃妻子;扔下妻子不管。
△すべて置き去りにして無責任なやつだ。/他把一切的事情全都抛开不管,真是不负责任的家伙。
△置き去りを食う。/被扔下;被甩掉;被抛弃。
[14]火鉢①【ひばち】
【名】
火盆。(灰を入れ、··に炭火などをいけて、手を暖め、湯茶などを沸かすのに用いる具。木製·金属製·陶器製などがある。)
△火鉢にあたる。/(挨近火盆)烤火。
△火鉢を囲んで座る。/围着火盆坐。
△火鉢に炭をつぐ。/往火盆里加木炭。
[15]凭れる③【もたれる】
【自动·二类】
(1)凭靠··倚靠。(よりかかる。それを支えとして身を斜めにする。)
(2)积食,不消化。(食物··消化せずに胃中に溜まる。)
△胃に凭れる。/胃里积食。
[16]居眠り③【いねむり】
【名·自サ】
瞌睡,打盹。(すわったり腰かけたりしたままねむること。)
△居眠り運転をする/打着盹儿开车。
[17]真夜中②【まよなか】
【名】
半夜,三更半夜,··夜。(夜のもっとも更けたとき。深夜。)
△真夜中になにごとだろう。/三更半夜的发生了什么?
△真夜中1時の急行でたつ。/乘半夜一点钟的快车启程。
[18]けたたましい⑤【けたたましい】
【形】
喧嚣,嘈杂;··锐;大声。(突然高く大きな音や声の起きるさま。)
△けたたましい声を上げる。/喊出尖锐的叫声。
△警戒のベルがけたたましく鳴り出した。/警戒的铃声急切地响起来了。
[19]鳴き声◎③【なきごえ】
【名】
鸣声,啼声。(獣·鳥·虫などの鳴く声。)
△鳥の···き声。/鸟啼声;鸣声。
[20]甲高い②【かんだかい】
【形】
(声音)高亢的··尖锐的。(声の調子が高く鋭い。)
△甲高い声で叫ぶ。/发出尖锐的叫喊。
[21]且つ①【かつ】
【副】
且。边…边…。(二つ··動作·状態が並行して同時に存在することを表す。)
△且つ歌い、且つ飲む。/边唱边喝。
△おどろき、且つまた喜ぶ。/又惊又喜。
[22]足音③④【あしおと】
【名】
脚步声。(歩く足の···。)
△足音がする。/有脚步声。
△人の足音。/人的脚步声。
△足音が消えた。/脚步声消失了。
△足音をたてて歩く。/放大脚步声走路。
△足音を盗んで入る。/蹑手蹑脚地走进。
△そっと足音をしのばせて通る。/悄悄地走过。
[23]襖◎【ふすま】
【名】
隔扇。(寝る時にか··る夜具。かけぶとん。)
△襖··あける。/拉开隔扇。
△襖越··に。/隔着隔扇。
[24]隙間◎【すきま】
【名】
(1)物体与物体之间···大的空隙。也指时间或工作中间的短暂空隙。(物と物とのあいだの、わずかにすいているところ。また、時間や仕事などの途中の、わずかなあき。)
△隙間のないスケジュール。/一点空隙也没有的日程表。
(2)轴承游隙··游隙。
[25]負傷◎【ふしょう】
【名·自动·他动·三类】
负伤,受伤;挂彩,挂花。(きずを負うこと。けが。)
△腕に負傷する。/腕部受伤。
△空襲のときの負傷がもとで死亡する。/因空袭时负伤至死。
△敵にたくさんの負傷者を出させた。/使敌方多人受伤。
△負傷者。/受··的人;负伤者;伤号;伤员。
[26]渡り鳥③【わたりどり】
【名】
(1)候鸟。(繁···地と遠く離れた越冬地との間を、年に一回、定期的に往復する鳥。ある地域で、春·夏に繁殖するか、越冬するか,通過するかにより、夏鳥·冬鳥·旅鳥に分ける。ツバメ·ガンなど。)
(2)到处奔走谋生的人。(ある場所から次の場所へ転々と旅行しながら商売···興行をして稼ぐ人。)
△渡り···稼業。/流动职业。
太好了!
好!
没有第一课啊