サワンは、屋根に登って必ず甲高い声で鳴く習慣を覚えました。それは月の明るい夜にかぎって、そして夜更けにかぎられていました。そういうときに、私は机に肘[1] をついたまま、または夜更けの寝床[2] の中で、サワンの鳴き声に答えるところの夜空を行く雁の声に耳を傾ける[3] のでありました。その声というのは、よほど注意しなければ聞くことがないほど、そんなに微か[4] な雁の遠い音です。それはききようによっては、夜更けそれ自体[5] が孤独[6] のためにうち負かされて[7] もらす[8] 溜息かとも思われて、若しそうだとすればサワンは夜更けの溜息と話をしていたわけでありましょう。
その夜は、サワンがいつもより更に甲高く鳴きました。ほとんど号泣[9] に近かったくらいです。けれど私は、彼が屋根に登ったときにかぎって[10] 私のいいつけ[11] を守らないことを知っていたので、外に出てみようとはしませんでした。机の前に坐ってみたり、早く彼の鳴き声が止んでくれればいいと願ったり、明日からは彼の羽根を切らないことにして出発の自由を与えてやらなくてはなるまいなどと考えたりしていたのです。そうして私は寝床に入ってからも、例えば物凄い[12] 風雨[13] の音を聞くないとする幼児が眠る[14] 時のように、蒲団を額のところまでかぶって眠ろうと努力しました。それゆえサワンの号泣はもはや聞こえなくなりましたが、サワンが屋根の頂上に立って空を仰いで鳴いている姿は、私の心のなかから消え去りはしなかったのです。そこで私の想像のなかに現れたサワンも甲高く鳴き叫んで、実際に私を困らせてしまったのであります。
私は決心しました。明日の朝になったらサワンの翼に羽根の早く生じる薬品を塗ってやろう。新鮮な羽根は、彼の好みのままの空高くへ彼を飛翔[15] させるでしょう。万一にも私に古風な趣味があるまらば、彼の脚にブリキ[16] 切れの指輪[17] をはめて[18] やってもいい。そのブリキぎれには「サワンよ、月明[19] の空を、高く楽しく飛べよ」という文字を小刀[20] で刻み付けてもいい。
[1]肘②【ひじ】
【名】
(1)肘,胳膊肘子。(···腕と前腕とを繋ぐ関節。また、その折曲げた時の外側の部分。)
△肘を曲げる。/曲肘。
△肘を張る。/支开胳膊肘。
△肘で押し分けて割り込む。/用胳膊肘推开挤进去。
△肘を枕にする。/曲肘为枕。
(2)肘形物。((1)の形に曲がって突き出しているもの。)
△いすの肘。/椅子扶手。
[2]寝床◎【ねどこ】
【名】
睡铺,被窝。(寝る··。また、寝る場所。ねや。ねま。ねどころ。)
△寝床にもぐり込む。/钻进被窝里。
△寝床を離れる。/离开被窝(起床)。
△寝床で本を読む。/在被窝里看书。
△寝床をこしらえる。/铺(放)被窝。
△寝床を上げる。/收拾(叠、卷)被褥(铺盖)。
[3]耳を傾ける【みみをかたむける】
倾听,聆听。
[4]微か①【かすか】
【形動】
(1)微弱;略微;···暗',朦胧,模糊。(物の形·色·音·匂いなどがわずかに認められるさま。)
△微かな泣き声。/微弱的哭声。
△微かに笑う。/微微一笑。
△微かな希望。/一线希望。
△微かにおぼえている。/模模糊糊地记得。
△鐘の音が微かにきこえる。/隐隐约约地听到钟声。
△微かに輝···。/微微有光。
(2)可怜,贫穷,微贱。(みすぼらしいさま。貧しいさま。)
△微かな暮らし。/可怜的生活。
[5]自体①【じたい】
【名·副】
(1)自己身体。···自分の体。)
△自体の重みがある上に…。/除自己的体重外再加上……。
△これは教育自体の責任だ。/这是教育本身的责任。
[6]孤独◎【こどく】
【名·形动】
(1)孤独,孤··。(一人ぼっち。)
(2)孤儿(みなし子),单身汉。(独身の男性。)"id="amw_comment_0"/>
[7]打ち負かす④⑤◎【うちまかす】
【他五】
打败,战胜。··打って負かす。すっかり負かす。特に野球などで、打撃力で相手を破る。)
△議論では徹底的に打ち負かされた。/理论上被彻底打败了。
[8]漏らす②【もらす】
【他动·一类】
(1)漏,漏··;露出;洒。遗尿;尿床,尿炕。(水や光·声などをすき間などから外に出す。こぼす)
△明かりを漏らすな/别透亮光。
△水ももらさぬ警戒ぶりだった/戒备得水泄不通;戒备森严。
(2)遗漏。(うっかりして、するべきことの一部をしないままにしてしまう)
△聞き漏らす/听漏。
△要点を漏らす/漏掉要点。
△3行目をもらしてしまった/··第三行给漏了。
△用件をもら··ないようにメモをとる/为了不遗漏要紧的事,记在本子上。
△細大もらさず話す/详尽无遗地讲述。
(3)泄漏,走漏,透露。(内部にとどめるべ··ものを外へ出す)
△計画を漏··す/泄漏计划。
△秘密はむや··に漏らすものではない/不可随便泄密。
(4)流露,发··,发泄。(感情などを思わず外に表し出す)
△不満を友人に漏らす/向朋友吐露不满。
△少女は何度もためいきをもらした/少女多次叹气。
[9]号泣◎【ごうきゅう】
【名】【自动·三类】
号泣。号哭。号啕大哭。(大声をあげて泣くこと。)
△悲報に号泣する。/收到噩耗后号啕大哭。
[10]限って②【かぎって】
【连语】
只有,唯有……··(助詞「に」の下に付けて)…だけは。…に関するかぎりは。)
△その日に限って帰りがはやかった。/只有那一天回去早了。
△彼に限ってそんなことはしない。/唯有他决不做那种事。
[11]言い付け◎【いいつけ】
【名】
吩咐,嘱咐,命令··指示(私下的场合使用,不能用于较为正式重要的场合)。(目下の者に対する命令や指示。)
△親の言い付け。/父母之命。
[12]物凄い④【ものすごい】
【形】
(1)可怕,令人···怕。(おそろしい。)
△物凄···目つきでにらむ。/用可怕的眼神瞅。
(2)惊人,猛烈;不得了。···非常に際立っている。はなはだしい。)
△ものすごく寒い。/冷得要命。
△ものすごくいい。/好得不得了。
△物凄いスピードで走る。/以惊人的速度跑;飞跑。
△あの歌手の人気は物凄い。/那位歌手红得发紫。
[13]風雨①【ふうう】
【名】
(1)风雨。(風と雨···)
△風雨にさらされる。/风···雨打。
(2)暴风雨。(あらし。)
△船は風雨に耐えた。/船艇经受了暴风雨的考验。
△風雨注意報。/暴风雨警报。
[14]眠る◎【ねむる】
【自动·一类】
(1)睡觉。···心身の活動が休止し、目を閉じて無意識の状態に入る。)
△よく眠っている。/睡得很好。
△毎日8時間眠る。/每天睡八小时。
△正体なく眠る。/酣睡如泥。
△夜も眠らず勉強する。/一夜没睡地学习;一直用功到天亮。
△草木も眠るうしみつどき···/半夜三更;夜阑人静。
△暑···て眠れない。/太热睡不着。
△すやすやと眠る。/睡得香甜。
(2)搁置不用。(一···、活動をやめた状態になったり、活用されずにある。)
△器材が眠っている。/器材闲着。
(3)死。···死ぬ。)
△友は墓の下に眠っ···いる。/友人在坟墓中安息。
△ここに眠る。/长眠于此。
[15]飛翔①【ひしょう】
【名·自动·三类】
飞翔。(空中を進むこと、空中を移動することである。)
△とびが悠々と大空を飛翔している。/老鹰在天空中悠然自得地飞翔。
[16]ブリキ◎【ぶりき】
【名】【荷】blik
马口铁,镀···铁皮,白铁皮。(スズをめっきした薄い鉄板。建材や缶詰の材料とする。)
△ブリキを張る。/包马口铁。
△ブリキ板。/镀锡铁皮;白铁皮;马口铁皮。
[17]指輪◎【ゆびわ】
【名】
戒指,指环(飾りと··て指にはめる輪。貴金属で輪をつくり,宝石をはめこんだものもある。リング)。
△結婚指輪/结婚戒指。
△婚約指輪/订婚戒指。
△金の指輪をはめる/戴金戒指。
△指輪を抜く/摘下戒指。
[18]嵌める◎【はめる】
【他动·一类】
(1)镶,嵌··安上(穴·枠·溝などの内側に,ぴったり合うように物を入れる)。
△戸を嵌める/安上门。
△引き戸にガラスを嵌める/把玻璃镶到拉门上。
△指輪にダイヤを嵌める/戒指镶上钻石。
(2)戴上,插入(物の外側に,リング状の物や袋状の物をかぶせる)。
△手袋を嵌める/戴手套。
△指輪を嵌める/戴戒指。
(3)使…陷入;欺··(人をだまして計略にかける)。
△人を嵌める/陷害人。
△··なに嵌める/骗人上圈套。
△··杯はめられた/上了个当。
[19]月明【げつめい】
【名】
月明;月光
[20]小刀③②【こがたな】
【名】
(1)小刀。(もの···削ったり、細工をしたりするときに用いる小さな刃物の総称。ナイフ。)
(2)···刀鞘旁插的小刀。(刀の鞘(さや)にさし添える小さな刃物。小柄(こづか)。)
(3)小··。小型刀。(小さい刀。)"id="amw_comment_0"/>
太好了!
好!
没有第一课啊