「覚えていますよ、あの時のことは。こちらの仕事場の2階を借りて二度目の夏のことですから」
「すると、あなたも外堀公園野球場へ詰め掛けて[1] きなさっていた口か。」
「いや、夕方、放送局から戻ってくると、ちょうどパレード[2] にぶっつかったんです。」
上智大学の学生がふえ、近くに大会社のビルがいくつも建ってせいで、道幅[3] 4メートル、長さ100メートル足らずのこの新道は四谷で一番賑やかな場所になった。もっとも軒[4] を並べる店は飲み屋[5] に食べ物屋に喫茶店のどれかに限られてしまい、客を迎えるだけの、厚化粧[6] だが、なんだか素っ気[7] のない小路に化けてしまったこともたしかだ。十七?八年前と同じ店構えで頑張っているのは、新道入り口のワイシャツ店と、小路[8] の奥のこの畳店ぐらいなものである。当時の新道には生活があった。豆腐屋があり、グラス店が、お惣菜[9] 屋が、ビリヤード[10] 屋が、そして主人が会社勤めの普通の家があった。四つ谷駅のほうから新道を抜けようとする人は、ゆるやかな勾配[11] の坂を登ることになるが、その坂の真ん中のあたりには歌舞伎役者の大和屋(十世岩井半四郎)の住居もあって、夏の宵[12] などには、白木[13] 作りの玄関の前の、狭いが良く打ち水[14] した石畳[15] の上で、大和屋が中学生のお嬢さん二人とよく線香花火[16] をしていた。二人のお嬢さんはやがて良く知られた女優になるのだが、一言で言えば、そのころの新道は自足[17] していたのである。たいていの日用品は新道の中にある店屋[18] で十分に間に合っており、それらの店屋はまた新道に住む人たちだけを相手にして、とにかく暮らしが立っていた。新道は、ささやかにではあるが、しっかりと自給自足[19] しており、そこで小路全体に自信のようなものがみなぎっていた。いまはたしかに華やかな小路になっているけれど、外からやってくる客の懐中[20] をあてにしないとやってゆけないという所が見えて、なんだか脆い通りになったような気がしてしかたがない。
[1]詰め掛ける④【つめかける】
【自动·一类】
挤到近旁,许多人蜂拥而来,拥上前去拥上来,挤上来,蜂拥而来,蜂拥而至,拥到,挤到。( 大勢の人が1か所にいっせいに集まる。迫り寄る。詰め寄る。)
△現場にカメラマンが詰め掛けた。/摄影记者拥到了现场。
[2]パレード①②【ぱれーど】
【名】【英】parade
(1)阅兵式。(閲兵式。)
(2)盛装游行,游行,游行队伍。(祝賀や祭りの華やかな行列·行進。)
△パレード参加者。/游行者。
△優勝者が市内をパレードする。/优胜者在市内进行喜庆游行。
[3]道幅【みちはば】
道路宽度
[4]軒◎【のき】
【名】
(1)軒の糸水。/檐溜。
(2)軒の玉水。/从房檐落下的水滴状雨水。
(3)軒を争う。/鳞次栉比。
(4)軒を並べる。/鳞次栉比。
[5]飲み屋【のみや】
(1)〔料理屋〕酒馆.
(1)〔料理屋〕酒馆.
(2)〔居酒屋〕小饭馆,小酒铺.
[6]厚化粧③【あつげしょう】
【名】【自动·三类】
浓妆。(おしろい·口紅などを、厚くけばけばしく塗った化粧。濃い化粧。)
△厚化粧をしている。/画着浓妆。
[7]素っ気◎【そっけ】
【名】
兴趣。趣味。和蔼可亲。讨人喜欢。((多く「そっけがない」「そっけもない」の形で)おもしろみ。味わい。愛想。)
△味も素っ気もない。/枯燥无味。味同嚼蜡。
[8]小路◎【こうじ】
【名】
小径,小胡同,小巷。(幅の狭い道。町なかの狭い通り。)
△袋小路。/死胡同。
△裏小路。/背静胡同。
[9]惣菜◎【そうざい】
【名】
日常食用的菜肴。家常菜。日常使用的副食品。(日常の食事の副食物。普段のおかず。)
[10]ビリヤード③【びりやーど】
【英】billiard
台球,撞球。(室内競技の一つ。ラシャ張りの長方形の台上に数個の玉を置き、棒(キュー)で突いて他の玉にあてて勝敗を争うもの。15世紀頃イギリス·フランス両国に始まり、日本には1850年(嘉永3)頃オランダ人が伝えた。玉突き。撞球。)
△ビリヤードをする。/打台球。
△ビリヤードの玉。/台球。
[11]勾配◎【こうばい】
【名】
倾斜(面)(),斜坡,坡度,梯度。(斜面。傾斜面の傾きの度合。)
△上がり勾配。/上坡。
△急な勾配。/陡坡。
△緩い勾配。/慢坡。
△急勾配の屋根。/坡度大的屋顶。
△この坂は勾配がかなり急だ。/这个坡相当陡。
△勾配度。/倾斜度,锥度。
△勾配標。/(铁路的)坡度标。
△勾配ゲージ。/锥度量规。
△勾配ベクトル。/斜率,梯度。
[12]宵◎【よい】
【名】
初更。入夜不久的时候,夜还不太深的时候。(夜になってまだ間もない頃。夜がそれほどふけていない頃。)
△宵の明星。/夜晚的金星。
[13]白木◎【しらき】
【名】【日本地名】
本色木料。(皮をはぎ、削っただけで、何も塗ってない木。)
[14]打ち水②【うちみず】
【名】【自动·三类】
洒水。(道や庭に水をまくこと。水撒(ま)き。また、その水。特に、夏の夕方などに涼をとるためにまく。)
△庭に打ち水をした。/在院子里洒水。
[15]石畳③【いしだたみ】
【名】【日本地名】
(1)铺石的地。(庭や道路などで、平らな敷石を敷き詰めた所。また、その敷石。)
△石畳の道。/石板路。
(2)石级,石阶。(石段。)
(3)棋盘格花纹。(市松模様。)
[16]線香花火⑤【せんこうはなび】
【名】
滴花,纸捻花;三分钟热度,昙花一现。(こよりに火薬をひねり込んだ花火。俗に、最初は、はなばなしい活動をするが、さめやすい性質の意にも用いられる。)
△人気が線香花火に終わる。/曾经的大红大紫如昙花一现,转瞬即逝。
[17]自足◎【じそく】
【名】【自动·三类】
自给自足,自己满足。(自分の置かれた状況に満足すること。必要なものを自分で間に合わせること。)
△自給自足。/自给自足。
[18]店屋【みせや】
【名】
店铺;商店
[19]自給自足◎【じきゅうじそく】
【名】
自给自足『成』。(自分で自分に供給し、自らの必要を充足する意。)
△今日から自給自足の生活を強いられる。/今天开始自给自足的生活。
[20]懐中◎【かいちゅう】
【名】【自サ】
(1)怀中;衣袋里;腰包里。(ふところやポケットの中に入れて持っていること。)
△懐中に入れる。/装在怀里;装进衣袋。
△懐中の財布をすられる。/衣袋里的钱包被偷走。
△懐中無一物である。/身上一文不名;囊空如洗。
△懐中時計。/怀表。
(2)钱包,钱袋,携带的钱。(さいふ。)
△懐中を無くした。/把钱包丢了。
助かったわ…
第三页第八段:……千葉のほうヘ引っ込んだ。
引っ込む(ひっこむ)不是いんっこむ
第四页 第八段『それならばくはこの家いえをでていきます。』ばくじゃなくて、ぼくなんです。
ご指摘ありがとうございます
第三页 中村さんは ちょっと目を伏せた。不是身を伏せた。
目を伏せる已改正,谢谢!
第2页20条 懐中 在日文教材里 被翻成ふところ 第一页間取りを上に乗せること 的地方日本教材里是載せること 正好在复习的时候看到了 可以核对一下。
ふところ应该对应懐但是中就没有对应上。載せる已改正,谢谢!