「新種発見!!」
「タカオトンボだっ!!!」歓喜の雄叫び[1] をあげてボクは一気に山道[2] を下った。だがそれもつかの間のことだった。ハッチョウトンボ……無念にも図鑑にはそう記されていたのである。
四年前、久しぶりの帰郷だったが、あの日の想い出をたどって甘池まで足をのばしてみた。背丈を越す葦の茂みと、その中に散在[3] する恐怖[4] の底無し沼、そしてリンドウの花の上を飛び交うタカオトンボを思い浮かべながら国有林に分け入った[5] 。しかし、そこに見たのは、すっかり様相[6] を変えた甘池の姿だった。無数にあったはずの地獄への抜け穴も、背丈を越す葦の茂みも今はなく、ただの山地と化した甘池だった。あのタカオトンボはどこへ行ってしまったのだろう。
ボクは営々[7] たる歳月の重みと、ホロ苦い[8] 少年の日を思い出しながら山を下りた。
(『高校新選国語I改訂』尚学図書より)
[1]雄叫び◎②【おさけび】
【名】
呐喊,吼叫,吼声。(勇ましく叫ぶこと。また、その声。)
△雄叫びをあげる。/大声呐喊。
[2]山道◎【さんどう】
【名】
山道,山路。(山の中の小さな道。やまみち。)
△雨が降ると、山道が歩くにくくなる。/一下雨,山路就变得难走了。
[3]散在③【さんざい】
【名】【自动·三类】
散在,分布。(あちこちに散らばってあること。点在。)
△湖畔に散在する別荘。/分布在湖畔的别墅。
[4]恐怖①◎【きょうふ】
【名·自动·三类】
恐惧,恐怖。(恐ろしく感じること。)
△恐怖に襲われる。/感到恐怖;害怕。
△恐怖の色をみせる。/现出恐怖的神色。
△恐怖の念を抱く。/抱有恐惧之感。
△恐怖におののく。/吓得发抖;惊恐万状;胆战心惊。
△恐怖と不安にかられる。/陷于惶恐不安。
[5]分け入る◎【わけいる】
【自动·一类】
用手(向两旁)推开进入。(かき分けて中へはいる。)
△深山に分け入る。/披荆斩棘入深山。
[6]様相◎【ようそう】
【名】
样子,情况,面貌。(ありさま。すがた。)
△紛争は長期化の様相を呈する。/纷争呈现长期化的状况。
[7]営営◎【えいえい】
【形动】
孜孜不倦,忙忙碌碌。(せっせと一生懸命に働くさま。)
△営営と家業にはげむ。/孜孜不倦地经营祖业。
[8]ほろ苦い④【ほろにがい】
【形】
味稍苦。(ちょっと苦みがある。なんとなく苦い。)
△ビールのほろ苦い味。/啤酒微苦的味道。
知识共享署名-非商业性使用-相同方式共享:码农场 » 《日语综合教程》第六册 第六課 読み物 まぼろしの“タカオトンボ”