自分は明日、息子が入門するのを見届けた[1] ら、すぐ帰郷する。入門後は百日、面会[2] はできないというが、里心[3] がつくといけないから面会などせずに、郷里で寺を守りながら、息子がおよそ五年間の修行を終えて帰ってくるのを待つつもりでいる……。
「それじゃ、息子さんは今夜で娑婆[4] とは当分[5] のお別れ[6] ですね。お夕食はうんと[7] ごちそうしましょう。なにがお好きかしら。」そうきくと、母親は即座に、
「んだら、とんかつ[8] にしていただきゃんす。」といった。
「とんかつ……そんなものでよろしいんですか?」
「へえ。あの子は、寺育ちのくせに、どういうものかとんかつが大好物でやんして[9] ……。」母親は、はにかむように笑いながらそういった。
だから、夕食には、これまででいちばん厚いとんかつをじっくり[10] と揚げて出した。しばらくすると、給仕[11] の女中が降りてきて、
「お二人は、しんみり[12] 食べてますよ。今のぞいてみたら、お母さんの皿はもう空っぽ[13] で、お子さんのほうはまだ食べてます。お母さんは箸を置いて、お子さんがせっせと[14] 食べるのを黙って見てるんです。」と言った。
それから一年近くたった翌年の二月、母親だけが一人でひょっこり[15] 訪ねてきた。面会などしないと強気でいても、やはり、いちど顔を見ずにはいられなくなったのだろうと思ったが、そうではなかった。修行中の息子が、雪作務のとき僧坊[16] の屋根から雪といっしょに転落[17] し、右脚を骨折して、いまは市内の病院に入院しているのだという。
[1]見届ける◎④【みとどける】
【他动·二类】
看到,··准,看清;一直看到最后,结束,用眼看,确认。(最後まで見る。また、しっかり見る。)
△全員避難したのを見届ける。/确认全体人员都避难去了。
△最期を見届ける。/一直看到咽气。
△子どもの行く末を見届けよう。/要亲眼看到孩子的发展前途。
[2]面会◎【めんかい】
【名·自动·三类】
会见··见面,会面。(人と直接に会うこと。)
△先生が父兄と面会する。/老师与家长会面。
△面会を求める。/求见。
△金曜日が面会日になっている。/规定星期五是会面日。
△彼はだれにも面会しない。/他谁也不见。
△いつ彼に面会できますか。/什么时候可以见他呢·
△病人は重··で面会謝絶です。/病人病重谢绝会面。
△面会人。/会见者,来访者。
[3]里心③【さとごころ】
【名】
想家,思乡。怀··家乡。乡愁。(実家や郷里を恋しく思う心。)
△里心が付く。/得思乡病。
△この子犬は里心がついて泣いているんだ。/这只小狗因为想家一直在哭。
[4]娑婆①【しゃば】
【名】
(1)红尘,尘世,人···,人间,人世间,俗世。(仏語。釈迦が衆生を救い教化する、この世界。煩悩や苦しみの多いこの世。現世。)
(2)(狱外的)自由世界。(刑務所·兵営などにいる人たちが、外の自由··世界をさしていう語。)
△娑··で見た弥次郎。/(对熟人)装不认识。
[5]当分◎【とうぶん】
【名】【副】
暂时,一时··将来のある時期までをばくぜんと表す語。しばらくの間)。
△ここ当分/目前。
△当分の間休業する/暂时停业一下。
△雨は当分やむまい/雨一时不会停。
△この寒さは当分の間続くだろう/寒冷还要继续几天吧。
△当分の間、ご辛抱ください/请忍耐一时吧。
[6]お別れ【おわかれ】
辞别
[名]分手,分别
[7]うんと①◎【うんと】
【副】
(1)量大,很多地。···程度·分量のはなはだしいさま。)
△石油がうんとある。/石油有的是。
(2)用力。(力を込めるさま···)
△うんとなぐる。/狠揍。
△うんと怒られた。/被狠狠骂了一顿。
△うんと働く。/加油···。
△うんと力を入れなければ···高いところには持ち上げられない。/不使把劲,举不到高处去。
[8]豚カツ◎【とんカツ】
【名】
炸猪排。(豚肉の··ツレツ。豚肉に小麦粉·とき卵·パン粉をつけ、油で揚げたもの。)
[9]やんす
〔助動〕
(近世語?活用はサ変型)
①動詞の連用形に付いて丁寧の意を表す?…ます?浄瑠璃?仮名手本忠臣蔵?一走り見て来やんしよ?
②?で?の下に付いて?丁寧の意を表す?…であります?…でございます?浄瑠璃?大経師昔暦?利なしでやんす?
[10]じっくり③【じっくり】
【副】
慢慢地;仔细地;··慌不忙;踏踏实实。(落ち着いて、ゆっくり物事をする様。)
△じっくり考える/踏实地思考。
△あわてないでじっくりやればなんとかなる/不要慌,慢慢来总会有办法。
△じっくりやるのがこつだ/诀窍是要稳扎稳打。
△あなたとじっくりお話ししたい/想和你好好谈一谈。
△じっくり時間をかける/踏踏实实地下功夫。
△じっくり腰をすえて仕事しなさい/要踏踏实实沉下心去做工作。
[11]給仕①【きゅうじ】
【名·自动·三类】
(1)···候(吃饭)。(食事や宴会の席などで,そばにいて世話をすること。また,その人。)
(2)勤杂,工友,茶房,服务员,侍者。(もと,事務所·役所などで雑用をし··人。)
△事務所の給仕。/办··处的勤杂.
△ホテルの給仕。/···店的服务员.
△給仕にチップをやる。/给侍者〔服务员〕小费。
[12]しんみり③【しんみり】
【副·自サ】
(1)心平气··『成』,平心静气『成』,恳切地。(落ち着いて静かなようす。しみじみ。)
△しんみりと話す。/恳切地谈。
(2)沉静,悄然,寂静。寂然而清净。(さびしく静かなさま。しめやか。)
△亡き母をしのんで一同はしんみりした。/缅怀亡母,四座悄然。
[13]空っぽ◎【からっぽ】
【名·形動】
空,空虚。(中に何も入っていないこと。)
△空っぽの財布。/空的钱包。
△空っぽの箱。/空箱子。
△頭が空っぽな人。/没有脑筋的人。
△みんな出かけて家が空っぽだ。/举家出门,空无一人。
△彼の演説の内容は空っぽだ。/他的演说没有内容。
△わたしの心はまったくの空っぽになった。/我心里十分空虚。
[14]せっせと①【せっせと】
【副】
孜孜不倦地。(仕··などを、休まずに一所懸命にするさま。)
△せっせと働く。/拼命地干活儿;勤勤恳恳地劳动。
△せっせと針を運ぶ。/不停地缝。
△せっせとかせぐ。/拼命地挣钱。
[15]ひょっこり③【ひょっこり】
【副】
偶然;突然。(··いがけず人に出会うさま。不意に現れるさま。)
△ひょっこり田中君に会った。/偶然遇见了田中。
△午前中彼がひょっこりやってきた。/上午他突然来了。
[16]僧坊【そうぼう】
僧房,禅房
[17]転落◎【てんらく】
【▽顛落】
(1)滚下,掉下。(ころげ落ちること。)
(2)落魄,潦倒。(上位から下位に一挙に落ちること。急激に落ちぶれること。)
△転落の人生。/落魄的人生。
(3)堕落,沦落。(堕落すること。身をもちくずすこと。)
△夜の女に転落する。/沦为妓女。
△悪の道に転落する。/堕入歧途。
有没有中文的翻译啊??
倒数第二段的「その節」应该读作「そのせつ」。