「もう歩けるふうでやんすが、どういうことになっているやらと思いましてなあ。」
相変わらず地味な和装の、小鬢に白いものが目につくようになった母親は、決して面会ではなく、ただちょっと見舞いにきただけだといった。息子の手紙には、病院にきてはいけない、夕方六時に去年の宿で待っているようにとあったというから、
「じゃ、お夕食はごいっしょですね。でも、去年とは違いますから、なにをお出しすればいいのかしら。」
「さあ……修行中の身ですからになあ。したが、やっぱし[1] ……。」
「わかりました。お任せください。」
と引き下がって、女中にとんかつの用意をいいつけた。
夕方六時きっかりに、衣姿の雲水が玄関に立った。びっくりした。わずか一年足らずの間に、顔からも体つきからも可憐さがすっかり消えて、見違えるような凛[2] とした僧[3] になっている。去年、人前では口をつぐんだ[4] ままだった彼は、思いがけなく錬れた[5] 太い[6] 声で、
「おひさしぶりです。その節はお世話になりました。」といった。それから、調理場[7] から漂ってくる好物のにおいに気づいたらしく、ふと目を和ませて[8] 、こちらを見た。
「……よろしかったでしょうか。」彼は無言[9] で合掌[10] の礼をすると、右脚をすこし引きずるようにしながら、母親の待つ二階へゆっくり階段を昇っていった。
[1]やっぱし【none】
[副]「やっぱり」の音変化。「―負けたか」
[2]凛①【りん】
【副】
(1)天气寒冷。(寒さ···きびしいこと。)
(2)表情、态度、声音等相当的严肃,紧张。(きりっと引き締まっている様··。)
△凛とした声がひびく。·· 严肃的声音。
[3]僧①【そう】
【名】
僧,僧侣,和尚。( 出···し,仏門にはいって修行する人。ある宗教に入信してその修行をしている人。 )
△仏教の僧。/佛教皈依者。
[4]つぐむ②【つぐむ】
【他动·一类】
闭口,缄口。(口を閉じてものを言わない。だまる。もだす。)
△口をつぐむ。/闭口不谈。
[5]錬る◎【ねる】
【他动·一类】
锻造(金属)··(鉄などに焼きを入れ硬度を調べえる。)
△刀を錬る。/锻刀。
[6]太い②【ふとい】
【形】
(1)〔回りが〕粗;···『方』(直径が大きい,棒状)
△太い幹/粗树干。
△太い足···粗腿。
△太い糸/粗线。
△腕が太い/胳膊粗。
(2)(胆子)大;无耻;不要脸。(ずぶとい,大胆だ,ふてぶてしい)
△胆っ玉が太い/胆子大。
△神経が太い/不走心;心宽。
△太いやつ/无耻的东西。
△太いことをする/干不要脸的勾当。
(3)肥胖的(肥えている)
(4)〔声が〕粗。(低くて声量が豊かだ)
△太い声/粗声。
[7]調理場◎【ちょうりば】
厨房
[8]和ませる④【なごませる】
【他下一】
使平静;使柔···;使缓和(同やわらげる)
[9]無言◎【むげん】
【名】
无言,不说话,沉默··(物を言わないこと。)
△無··のまま座っている。/不声不响(一声不吭)地坐着。
△一日中無言で過ごす。/整天沉默地度日。
△無言の約束をとり交わす。/(无形之中)达成了默契。
△無言の行。/无言戒律。
△無言劇。/哑剧。
[10]合掌◎【がっしょう】
【名·自动·三类】
(1)合掌。(両手のいらを顔や胸の前で合わせてこと。)
(2)(建筑)架成人字形(的木材)。(建築で二つの材を山形に組み合わせた構造。合掌形。)
(3)合掌。写在书信末尾的词语之一。(手紙の末尾に書く文句の一。)" id="amw_comment_0"/>
有没有中文的翻译啊??
倒数第二段的「その節」应该读作「そのせつ」。