なにしろ[1] 増やす気がなくなったのである。放っておけば五十年ほどで種は途絶えてしまう。それでもなんとか生き延びているのは、十人に一人の割合で“まだ頑張(がんば)れる”物好き[2] がいたからだ。
自分だけで手一杯[3] (ていっぱい)なのに、他人にまで気を配れる[4] というマメ[5] な人たち。そんな物好きたちが集まって作り上げた[6] 『かつての』人間の集まりが、都市部と呼ばれる生活圏。行ったコトがないので詳しくはなんとも。
名を人類復興[7] 委員会[8] 。生命の基本に立ち返ろう[9] 、という運動。その原理を愛という。
わたしにはそれが本気で分からない。気持ち悪いのではなく、互いを思い合うという状況が、どんなものなのか想像できない。それはほんとうに気持ちの良いコトなのだろうか。きっと不具合[10] しか生じない[11] 。もっと系(システム)的なもので相互補助[12] した方がよっぽど気持ちはいいと思う。そこには安心があり、打算[13] があり、明確な作業[14] がある。見えもしない相手の心を理解しよう、なんて行為は、それこそ現実的ではない。
このように。わたしが求婚される度に無理難題を押しつけるのは、自分では愛が測れないから、相手に測ってもらっているだけなのだ。わたし以上に価値のあるものを手に入れてなお引き替え[15] にできるなら、その人は確かにわたしを必要としているのだと証明できる。
殿方[16] も人間も好きだけど、愛だけは理解できない。でもそれなりに幸福だ。太陽と水と空気があれば、なんとなく生きていけるのがわたしたちだし。あぁ、こんなだから人間は終わってしまったのでしょう、と自己嫌悪[17] (けんお)もなくはないけど、
「星はまたたく[18] 。海はさざめく[19] 。人恋しくて[20] 珊瑚は謳(うた)う。
わたしたちは海月みたいに、ふわりふわりと[21] その日ぐらし」
暗い野原[22] で歌いながら、くるくると[23] ステップ[24] を踏む。
「おや。人生を海月[25] に喩える[26] とは、また力強い[27] 」
見えない膜[30] (まく)に包まれたような、男の人の声だった。
[1]何しろ①【なにしろ】
【副】
(1)无论怎样,不管怎样,反正,总之;毕竟,到底。(とにかく。つまりは。)
△何しろおもしろい。/总之有意思。
△何しろ行ってみることだ。/反正得去看看。
△何しろやってみたまえ。/反正先干一下试试。
(2)因为,由于。(なにしろ…なので。なににせよ。)
△何しろちかごろ忙しいものですから。/因为最近太忙。
△何しろ10年も日本にいたのだから。/毕竟在日本住了十年啊。
△何しろあれだから、手のつけようがない。/因为是那样,所以毫无办法。
△何しろ問題が問題だから、そう簡単には解決できそうにない。/问题终究是问题,不可能那么简单地解决。
[2]物好き③②【ものずき】
【名·形动】
好奇,好事(者)。有好奇心的人。(好奇心の強いこと。風変わりで特殊なことを好むこと。また、その人。)
△物好きな人。/好奇的人,好事之徒。
△この寒さで泳ぐなんて何たる物好きだ。/这么冷还要游泳,真是太闲不住了。
[3]手一杯②【ていっぱい】
【形动·副】
(1)竭尽全力,尽量;没有空闲,忙得不可开交。(それ以上のことをする余裕がないさま。それだけで限度であるさま。)
△手一杯に市場を広げる。/全力扩大市场。
△注文をこなすだけで手一杯だ。/光熟练点餐就已经忙得不可开交了。
(2)(生活)勉强维持,(收支)勉强相抵。〔やっとつづける。〕
△月10万円では手一杯だ。/每月十万日元刚够开销。
[4]配る②【くばる】
【他动·一类】
(1)分配,分给,分送。〔分配する。割りあてて渡す。)
△菓子を配る。/分配糕点。
△新聞を配る。/分送报纸。
(2)多方注意,多方留神,用心周到。使(注意等)留心各处,亦指观察到各处。〔気をつける。注意などを行き渡らせる。また、視線などを行きとどかせる。)
△病人が出ないように気を配る。/多方面加小心防止出现病人。
△目を配る。/注意环视四周。
△気を配る。/(全面地)留神,警惕。
(3)部署,分派,分放。〔配置する。〕
△警備員を要所に配る。/在重要地点部署警卫人员。
[5]まめ◎【まめ】
【名·形動】
(1)勤;勤恳.。(勤勉で、労をいとわず物事に精を出すさま。)
△ふでまめな人/笔头勤快〔爱动笔写〕的人。
△まめに働く/勤恳地工作。
△彼はまめな人で少しもじっとしていない/他是个勤快人,一点也呆不住。
△手まめ,足まめ,口まめ/腿勤,手勤,口勤。
△まめに電話をかける/不耐其烦地打电话.。
△まめにつとめる/诚诚恳恳地工作。
(2)健康,健壮。(体が丈夫なこと。)
△まめに暮らしている/身体健康;很硬朗。
[6]作り上げる⑤【つくりあげる】
【他动·二类】
(1)造成,做完。(完成させる。)
△りっぱな人物を作り上げる。/培养成卓越的人物。
△2年かかって作り上げた計画書。/花了两年的工夫才订出来的方案。
△人民の英雄像を作り上げる。/塑造人民英雄形象。
(2)伪造,虚构,炮制。(実際には無いことを有ることのように見せかける。)
△あの話は全部作り上げたうそだ。/那种话全都是捏造的谎言。
△作り上げられたイメージ。/人工炮制的形象。
[7]復興◎【ふっこう】
【名】
复兴,重建。衰败的事物再度兴隆、昌盛。(衰えものが再び興隆すること。また、盛んにすること。)
△文芸復興。/文艺复兴。
△水害を受けた町を復興する。/重建遭受水灾的城镇。
△目ざましい復興ぶり。/惊人的复兴情况。
△日本の戦後復興。/日本战后的复兴。
△復興計画。/重建计划。
△復興事業。/复兴事业。
[8]委員会②【いいんかい】
【名】
委员会。(委員によって構成される合議制の機関。また、その会議。)
△委員会設置会社。/委员会制度型公司。
[9]立ち返る③⑤◎④【たちかえる】
【自五】
(1)回来,返回。(もとの所へもどる。)
△家に立ち返る。/回家。
(2)恢复。(本来無心であった状態や正規とされる状態にもどる。)
△本心に立ち返る。/恢复本性。
[10]不具合③【ふぐあい】
【名】【形动】
状态不佳,状况不好(状態·調子がよくないこと)。
△不具合な箇所を直す/改正不好的地方。
[11]生じる【しょうじる】
しょうずる(生ずる)【自他上一】
生;长;出生;产生;发生;出现(同しょうずる)
[12]補助①【ほじょ】
【名·他动·三类】
补助。(助ける。)
△生活費を補助する。/补助生活费。
△人の補助を受けて生活する。/接受别人补助而生活。
△学生に学資を補助してやる。/补助学生学费。
△補助記号。/补助记号(符号)。
△補助いす。/加坐。
△補助貨幣。/辅币。
△補助員。/辅助人员。
△補助リレー。/辅助继电器。
[13]打算◎【ださん】
【名·自动·他动·三类】
算计,盘算。(数えること。特に、損得を勘定すること。見積もること。)
△損得の打算もない。/不计较得失。
[14]作業①【さぎょう】
【名·自动·三类】
工作;操作,作业;劳动。((技術·機械の)仕事。また、仕事をすること。特に、一定の目的と計画のもとに、身体または知能を使ってする仕事。)
△作業の段取り。/生产工序;操作程序。
△作業の能率をあげる。/提高工作效率。
△荷役作業。/装卸工作。
△作業服/工作服;劳动服。
△作業員。/操作人员;作业人员。
△作業場。/车间;作坊;工作现场;工地,工段,施工区间。
△作業教育。/作业教育;劳作教育。
[15]引き替え◎【ひきかえ】
【名】
交换,兑换,更换。(取りかえること。交換。)
△代金と引き替えに品物を渡す。/以物抵债。
[16]殿方◎②【とのがた】
【名】
(妇女对男子的敬称或雅称)男人们。(女性が男性を丁重にさしていうときに用いる語。)
△殿方用の手袋。/男士用的手套。
[17]嫌悪①【けんお】
【名】
嫌恶,厌恶;讨厌。(きらいにくむこと。ひどくきらうこと。)
△自己嫌悪。/自我嫌恶;自我厌弃。
△嫌悪の念を抱く。/感到厌恶。
△彼を見るとどうしても嫌悪の気持ちが起きる。/一见到他就不免感觉讨厌。
△嫌悪感。/嫌恶之感;反感。
[18]瞬く③【またたく】
【自五】
(1)眨眼.〔まぶたをぱちぱち開けたり閉じたりする·まばたきをする·〕
△不安そうに目をぱちぱちとまたたかせた。/显得很不安地直眨巴眼睛。
(2)闪烁,明灭。〔灯火や星が消えそうになってちらちらする·〕
△星が瞬く。/星光闪烁。
△ろうそくの火が風にまたたいた。/烛光迎风摇曳。
△遠くに瞬くともし火。/远处闪烁的灯火。
[19]さざめく③【さざめく】
【自动·一类】
(1)喧哗,喧嚷,大声说笑。大声喧嚷,闹哄哄地说话,叽叽喳喳地谈笑。(大声をあげて騒ぐ。にぎやかに話す。ざわめく。さんざめく。)
△笑いさざめく。/笑语欢声。
(2)沙沙作响,哗哗响,发出叽喳声。发出“沙沙,哗哗,叽喳”等的声音,叽叽喳喳。(ざわざわと音を立てる。ざわめく。)
△林が風にさざめく。/树林随风沙沙作响。
[20]人恋しい【ひとこいしい】
想和人见面的,因寂寞而想与人见面或找人说话的心情。
人恋しい季節/思念人的季节。
[21]ふわりと②【ふわりと】
【副】
(1)轻轻飘。(軽くただようさま。)
△白雲が空にふわりと浮かんでいる。/白云飘在空中。
(2)轻轻地。(軽くそっと載せるさま。軽く飛び降りるさま。静かに落ちるさま。)
△毛布をふわりと掛ける。/轻轻地盖上毛毯。
(3)暄暄的。(やわらかいさま。)
△ホット·ケーキがふわりと焼ける。/蛋糕烤饼烤得暄腾腾。
[22]野原①【のはら】
【名】
(1)原野,野地。(草などの生えた広い平地。)
△子供は野原で遊んでいる。/孩子们在草地上玩耍。
(2)日本的地名和姓氏。(日本の地名。また、日本人の姓氏。)
△野原しんのすけ。/野原新之助。(蜡笔小新中的主角的名字。)
[23]くるくると【くるくると】
滴溜溜地(转),手脚不停,勤快,一层层地
[24]step【ステップ】
(1)〔踏み段〕踏板,阶磴.
(1)〔踏み段〕踏板,阶磴.
△バスのstepに足をかけて上がる/脚踏踏板上公共汽车.
(2)〔ダンスの〕舞步.
△ジルバのstepを踏む/迈吉特巴舞步.
(3)〈陸上〉(第二级)单足跳,跨步.
△stepを踏んで勉強する/逐步地学习; 一步一步地学习."id="amw_comment_0"/>
(4)〈登山〉(冰雪斜坡上的)搭脚处.
△stepを踏んで勉強する/逐步地学习; 一步一步地学习."id="amw_comment_0"/>
(5)〔段階〕阶段.
△stepを踏んで勉強する/逐步地学习; 一步一步地学习.
[25]海月◎【くらげ】
【名】
水母;海蜇;没有定见的人
[26]例える③【たとえる】
【他动·二类】
比喻,打比方。(ある事柄の内容·性質などを、他の事物に擬して言い表す。)
△たとえて言えば。/打个比方说吧……
△美人を花に例える。/把美人比喻成花。
△その景色はたとえようもないほど美しい。/其景色之美是无法比喻的。
△兎と亀の話にたとえて油断をいましめる。/拿兔子和乌龟的故事做比喻来劝戒疏忽大意。
[27]力強い⑤【ちからづよい】
【形】
(1)觉得胆子壮;心里踏实;有仗恃。〔心づよい。〕
△力強い助け。/有力的援助。
△あなたがそばにいると力強い。/有你在旁边,就觉得胆子壮。
(2)强有力;矫健。〔力がある。〕
△力強い呼びかけ。/强有力的号召。
△力強い声が会場にひびきわたった。/一阵铿锵有力的声音响彻会场。
△力強い足どりで前進する。/迈着矫健的步伐前进。
[28]独白◎【どくはく】
【名】【自动·三类】
独白。(心中に思っていることなどを観客に知らせるために、ひとりで言うせりふ。モノローグ。)
[29]遮る③【さえぎる】
【他动·一类】
(1)遮,遮挡,遮住,遮蔽。(光の照射や視界を邪魔する。妨げる。)
△風を遮る。/遮风。
△光線を遮る。/遮住〔遮挡〕光线。
△ビルに視界をさえぎられる。/一座大楼遮住了我们的视线。
△広い草原を遮るものはなにもない。/广阔的草原上没有什么遮挡。
△こんもりと生い茂った木の葉が午後の日差しを遮っている。/浓密的枝叶挡住了午后的阳光。
(2)遮断,遮拦,阻挡。(進路や人の話を途中で妨げ、先へ進まないようにする。)
△道を遮る。/遮路;拦道。
△発言を遮る。/打断〔阻止〕发言。
△人の話を遮る。/打断别人的话。
[30]膜②【まく】
【名】
(1)膜。(生物体内の諸器官をおおい,または境をなしている薄い層·)
(2)皮,薄皮,薄膜。(物の表面をおおう薄い皮·)
△表面に膜が張った。/表面结起了一片薄膜。
△ゴムの膜/橡皮膜。