はちの死骸が流され、自分の眼界[1] から消えて間もないときだった。ある午前、自分は円山川、それからそれの流れ出る日本海などの見える東山公園へ行くつもりで宿を出た。「一の湯」の前から小川[2] は往来[3] の真ん中を緩やかに流れ、円山川へ入る。ある所まで来ると橋だの岸[4] だのに人が立って何か川の中の物を見ながら騒いでいた。それは大きなねずみを川へ投げ込んだ[5] のを見ているのだ。ねずみは一生懸命に泳いで逃げようとする。ねずみには首のところに7寸ばかりの魚ぐし[6] が刺し通して[7] あった。頭の上に3寸ほど、のどの下に3寸ほどそれが出ている。ねずみは石垣[8] へはい上がろう[9] とする。子供が2、3人、40ぐらいの車夫[10] が1人、それへ石を投げる。なかなか当たらない。カチッ[11] カチッと石垣[12] に当たって跳ね返った。見物人[13] は大声で笑った。ねずみは石垣の間にようやく前足[14] をかけた。しかし入ろうとすると魚ぐしがすぐにつかえた。そしてまた水へ落ちる。ねずみはどうかして助かろうとしている。顔の表情は人間にわからなかったが、動作の表情に、それが一生懸命であることがよくわかった。ねずみはどこかへ逃げ込むことができれば助かると思っているように、長いくし[15] を刺されたまま、また川の真ん中のほうへ泳ぎ出た。子供や車夫はますますおもしろがって[16] 石を投げた。わきの洗い場の前で餌をあさっていた2、3羽のあひる[17] が石が飛んでくるのでびっくりし、首を伸ばしてきょろきょろ[18] とした。スポッ、スポッと[19] 石が水へ投げ込まれた。あひるは頓狂[20] な顔をして首を伸ばしたまま、鳴きながら、せわしく足を動かして上流[21] のほうへ泳いでいった。自分はねずみの最期を見る気がしなかった。ねずみが殺されまいと、死ぬに決まった運命を担いながら、全力を尽くして逃げ回っている様子が妙に頭についた。自分は寂しい嫌な気持ちになった。あれが本当なのだと思った。
[1]眼界◎【がんかい】
【名】
(1)视野。(目に見える範囲。視界。)
(2)眼界。(考えの及ぶ範囲。)
△彼は眼界が広い。/他的眼界宽阔。
[2]小川◎【おがわ】
【名】
小河。(細い流れの川。小さい川。)
△小川がさらさらと流れる。/小河水哗哗地流着。
[3]往来◎【おうらい】
【名】【自サ】
(1)往来,通行。(ゆきき。)
△人の往来が絶えない。/行人来往不绝。
△乗りものの往来がはげしい。/来往的车辆很多;车水马龙。
△車がひっきりなしに往来する。/车辆不断地来往。
△夜10時以後は往来禁止だ。/晚上十点钟以后禁止通行。
(2)道路;大街;马路;公路。(道路。通り。)
△家は往来からはすこしひっこんでいる。/房子从马路边稍微缩后一些。
(3)交际,来往;往返;萦回,徘徊。(互いにゆききすること。訪問。)
△子どものころの思い出が脳裏を往来する。/儿童时代的回忆在脑子里萦回。
[4]岸②【きし】
【名】
(1)岸,滨。陆地与水相接之处。(陸地が水と接するところ。)
△海の岸。/海岸。
△あらしで船が岸に吹きつけられた。/船被暴风吹到岸边。
(2)崖,悬崖,绝壁。土地的峭立处。(土地の切り立った所。がけ。)
[5]投げ込む④◎③【なげこむ】
【他五】
投入,投进。(投げて入れる。また、無造作に投げ入れる。)
△ごみを川に投げ込むな。/不要把垃圾扔进河里。
[6]うお‐ぐし【魚串】ウヲ‥
魚を焼く時に刺して用いる串?竹?真鍮しんちゅう?鉄などで作る?
[7]刺し通す③◎【さしとおす】
【他动·一类】
刺穿。(先のとがったもので反対側まで穴をあける。また、その穴にひもなどを通す。)
△短刀を胸に刺し通す。/用匕首扎穿胸部。
△竹串を肉に刺し通す。/把竹签子穿在肉上。
[8]石垣◎【いしがき】
【名】
石垣,石墙,石围墙。(大きな石や岩を壁のように積み重ねたもの。)
△城の石垣。/石砌的城墙。
[9]這い上がる④【はいあがる】
【自五】
(1)爬上,攀登。(はって上がる。はうようにして上にあがる。)
△がけを這い上がる。/攀登悬崖。
(2)爬上来。(苦労して悪い状態を切り抜ける。ある地位に達する。)
△最下位から這い上がる。/从最后一名爬上来。
[10]車夫①【しゃふ】
【名】
车夫。(人力車を引く人。車引き。)
△お抱えの車夫。/自家雇佣的车夫。
[11]かちっ②【かちっ】
【副】
喀嚓,喀哒。( 堅くて小さい物が打ち当たったときに出る音を表す語。また、ゆるみがなくしっかりとしているさま。)
△かちっスイッチを入れる。/喀嚓一声打开开关。
[12]石垣◎【いしがき】
【名】
石垣,石墙,石围墙。(大きな石や岩を壁のように積み重ねたもの。)
△城の石垣。/石砌的城墙。
[13]見物人◎【けんぶつにん】
【名】
游客。(見物する人。みて。観客。)
△被災地の見物人。/受灾地的游客。
[14]前足◎①②【まえあし】
【名】
(兽类的)前足;前肢。(獣類の前方の両足。または足を前後に開いたときの、前の方の足。)
△前足を上げる。/提前足。
△前足で地面をかく。/用前脚扒地。
[15]串②【くし】
【名】
扦子。(先端のとがった、鉄·竹·木などの細い棒。)
△肉や野菜を串に刺して焼く。/把肉和青菜穿在扦子上烤。
△いっぺんに団子を3串も食べた。/一下子吃了三串年糕团子。
[16]面白がる⑤【おもしろがる】
【自他动·一类】
感觉有趣。(面白いと思う。おかしがる。)
△しゃれを聞いて面白がる。/听俏皮话觉得有趣。
△小説を面白がって読む。/津津有味地读小说。
[17]あひる◎【アヒル】
【名】
鸭,鸭子,家鸭。雁鸭科的水禽,绿头鸭经改良的家禽。肉、蛋供食用,羽毛用于被褥等。(ガンカモ科の水鳥。マガモを改良した飼い鳥。肉·卵は食用、羽毛は布団などに用いる。)
△あひるの丸焼き。/烤鸭。
△みにくいあひるの子。/丑小鸭。
[18]きょろきょろ①【きょろきょろ】
【副】
东张西望。(何かを探し求めたり,とまどったり,あわてたりして,あたりを落ち着きなく見回すさま。けろけろ。)
△きょろきょろと見回す。/毛毛腾腾地四下乱看。
△目をきょろきょろさせる。/眼睛嘀溜儿转。
△なにをきょろきょろしているのか。/你直眉瞪眼地看什么?
△あたりをきょろきょろさがす。/四下里寻摸;东张西望寻视四周。
[19]すぽっ‐と
〔副〕
物が穴から勢いよく抜けたり?はまり込んだりする音?また?そのさま??コルク栓を―抜く?
[20]頓狂①【とんきょう】
【形動】
突然做出发狂似的动作;突然狂叫
[21]上流◎【じょうりゅう】
【名】
(1)上流,上游。(川の流れの水源に近い部分。川上。みなかみ。)
△川の上流に滝がある。/河流上游有瀑布。
△上流へさかのぼる。/溯流而上。
(2)上流(人士),上层。〔社会の上位。〕
△上流に育った人。/在上流社会长大的人。
阿婆主是不是一个一个词条查找粘贴过来排版好的 真的辛苦了 不知道还有没有机会看到第八九课www
足に毛の生えた大きな川がにが石のようにじっとしている 川字后面缺了一个字就是;蟹
应该是没缺的,川がに→川蟹 这样