考えてみると、我々は自分をあるしかたで認識するが、実は、その自己認識がまた自己の実体を作るという側面を持っている。人間は、生きている自分を見つめて自分のイメージを作るだけではなくて、いつの間にか自分で作ったイメージに合わせて、逆に現実を生き始めてしまうという性質を持っている。文化論についても同じことで、もし誤った民族性のイメージを作り上げて[1] しまうと、その後の行動の中でこのイメージは補強[2] され、増幅[3] され、私たちを思いがけない方向に引っ張って[4] 行くことになる。文化論というのは、決して単なる事実の認識であるだけではなくて、実は行動の規範であり、またひと回り[5] して認識の枠組み[6] にもなるという、恐ろしい事実を見つめておかなければならないだろう。
しかも、男らしさなどといういわば生理的、自然的な性格と比べた時、一つの社会の文化は格段[7] に複雑であり、多様であって、それだけにその認識は恣意的になりがちである。長い歴史の中で無数の個人が集まって、半ば無意識のうちに作り上げてきた集合[8] 的な性格、あるいは生活の様式[9] が文化というものである。したがって、一つの文化について考えるにしても、その歴史の中のどの時点に焦点[10] を当てるか、あるいは多様な広がりのどの一点を強調するかによって、まったく違ったイメージが浮かび上がって[11] くる。それだけに、文化および民族性のイメージを考えるにつけては、我々は特別に慎重[12] であり、焦点の選び方に注意深く[13] あらねばならないはずである。
(『新選国語1改訂版』尚学図書より)
[1]作り上げる⑤【つくりあげる】
【他动·二类】
(1)造成,做完。(完成させる。)
△りっぱな人物を作り上げる。/培养成卓越的人物。
△2年かかって作り上げた計画書。/花了两年的工夫才订出来的方案。
△人民の英雄像を作り上げる。/塑造人民英雄形象。
(2)伪造,虚构,炮制。(実際には無いことを有ることのように見せかける。)
△あの話は全部作り上げたうそだ。/那种话全都是捏造的谎言。
△作り上げられたイメージ。/人工炮制的形象。
[2]補強◎【ほきょう】
【名·他动·三类】
加强,增强,强化。(弱点や不足を補ってつよくすること。)
△新入選手でチームを補強する。/以新来的选手加强球队。
△補強工事。/加强工程。
[3]増幅◎【ぞうふく】
【名】
(1)增幅,放大。(波動·振動の振幅を大きくすること。特に、入力電気信号の電流·電圧の小さな振幅変化を増大させて出力すること。)
△増幅装置。/放大器。
△増幅度。/放大率。
(2)传播,扩展,夸大。(話の内容や物事の状態が拡大すること。)
△話が増幅されて伝わっているらしい。/话好像被添油加醋一番后传开了。
[4]引っ張る③【ひっぱる】
【他动·一类】
(1)拉,拽,扯,拉上,拖,牵引。(抓住棒或带状物的一端)向自己所在方向用力拉。(棒やひも状の物の一端を持って手前に強く引く。)
△耳を引っ張る。/扯耳朵。
△車を引っ張る。/拉车。
△ぐいと袖を引っ張る。/使劲拉袖子。
(2)拉上,拉紧,绷紧。引进,拉近,架设。把铁路,自来水管等铺设到某一地点。(鉄道·水道管などを、ある地点まで引く。)
△境界に綱を引っ張る。/分界处扯上绳子。
△ゴールにテープを引っ張る。/在终点处拉上终点线。
△へやごとに電話線を引っ張る。/给每个房间拉上电话线。
(3)强拉走,硬拉来。带走,拉走。〔むりにつれていく。連れてゆく。引いてゆく。〕
△警察に引っぱっていく。/揪到警察那里去。
△ものも言わさずに引っぱってくる。/不容分说地拉来。
△あちこち引っ張って歩く。/带着到处走。
△機関車が貨車を引っ張る。/机车把货车拉走。
△警察に引っ張られる。/被警察带走。
[5]一回り③②【ひとまわり】
【名·自サ·副】
(1)一圈,一周。(物のまわり、またはある範囲を、1回まわること。)
△得意先を一回りする。/老主顾转了一圈。
(2)轮流,轮一圈。( 順番に従って最後の人にまでまわること。一巡。)
△打順が一回りする。/棒球击球词序轮一圈。
(3)12属相同一属相重新转回来的年数。(十二支が1回めぐる年数。12年。)
△兄と一回り年が違う。/哥哥大我12岁。
(4)一筹。( 物事の程度、また、人の度量の大きさなどの一段階。)
△一回り大きい人物。/才识略胜一筹的人物。
[6]枠組み◎④【わくぐみ】
【名】
(1)框子的结构,框架。(枠を組むこと。組んだ枠)
△コンクリートの枠組み/制造混凝土构件的框架。
(2)(事物的)结构,轮廓。(物事のあらまし)
△計画の枠組み/计划的轮廓。
[7]格段◎【かくだん】
【名·形动】
特别,非常,格外。(物事の程度の差がはなはだしいこと。)
△格段の差。/显著的差别。
△あれとは格段の相違がある。/与那个有显著的不同。
△格段の進歩を示す。/显出格外的进步。
△彼の態度は格段に上品だ。/他的态度特别文雅。
[8]集合◎【しゅうごう】
【名】【自他动·三类】
(1)集合。(1ヵ所に集めること。また、集まること)
△全員集合/全体集合!
△明朝7時学校に集合することになっている/规定明天早晨七点钟在学校集合。
△集合住宅/集体住宅;公寓。
△集合ラッパ/集合号。
(2)〈数〉集〔合〕。(ものの集まりで、任意のものがその集まりに入っているかどうか区別でき、かつその集まりに属する任意の二つのものが等しいか異なるかを区別できるもの)
△無限集合/无穷集;无限集。
△集合論/集合论。
[9]様式◎【ようしき】
【名】
(1)样式,方式。(習慣·約束などで定められたやり方。)
△国によって生活の様式がちがう。/生活方式各国不同。
△様式どおりにつくる。/按样式做。
(2)一定的形式,格式。(ある範囲の事物·事柄に共通している一定の型·方法。)
△書類の様式を改める。/改变文件的格式。
(3)式样,风格,格调。(ある時代·流派の芸術作品を特徴づける表現形式。)
△ゴシック様式。/哥特式。
△ロマネスク様式。/罗马式。
△エンタシスはギリシア建築の様式だ。/凸肚式立柱是希腊X建筑的风格。
[10]焦点①【しょうてん】
【名】
(1)〈理〉焦点。(鏡·レンズなどで、光軸に平行な光線が反射あるいは屈折して集まる一点)
△焦点を定める/定焦点。
△焦点をあわせる/对准焦点。
△焦点距離/焦距。
(2)焦点,中心,核心。(人々の関心や注意が集まるところ。また、物事の中心となること)
△話題の焦点/话题的中心。
△ニュースの焦点/新闻的焦点。
△問題の焦点に迫る/逼近问题的核心。
△話の焦点がすこしずれている/说话有点离题了。
△この点に焦点をしぼって論じよう/集中到这一点上来讨论吧。
[11]浮かび上がる⑤【うかびあがる】
【自动·一类】
(1)浮起,浮出。(水中から水面に現れ出る。うかびでる。)
△鯨が浮かび上がる。/鲸鱼浮出水面。
(2)显目,显露,变得明显,引人注目。(それまで明らかでなかった事物が表面に現れる。注目されるようになる。)
△ある人物の名が浮かび上がる。/某人的名字显露出来。
△エネルギー問題が急に浮かび上がってきた。/能源问题突然引人注目。
(3)翻身,发迹。(今まで恵まれない環境にあったものが,よい状態になる。)
△下積み生活からやっと浮かび上がる。/终于从底层生活中翻过身来。
(4)升起,腾空。(地表を離れて空中に上がる。)
△飛行船が浮かび上がる。/飞船腾空而起。
[12]慎重◎【しんちょう】
【名】
慎重,小心谨慎,稳重,稳健。谨慎认真,沉着冷静而不轻率从事。(注意深く、落ち着いて、軽々しく行わないこと。)
△慎重な発言。/小心谨慎的发言。
△慎重な態度をとる。/采取慎重态度。
△彼は慎重な人だ。/他是稳重的人。
△慎重にことばを選ぶ。/慎重选择词语。
△慎重を欠く。/失慎。
△慎重を要する。/要加小心。
[13]注意深い⑤【ちゅういぶかい】
【形】
谨慎的,注意的。(注意する度合が深いさま。)
△注意深く点検する。/谨慎地检查。