ところがその夥しい[1] 鰊が、戦後次第に来なくなった。いったいどうしてあれだけ獲れた鰊が、姿を消すようになったのだろう。先ず言われることは乱獲[2] である。日本人は何によらず「ある時の米の飯」で、先を読まずに、目の前にあるものを取り尽くしてしまうと言われている。確かにそうかも知れない。先住民であるアイヌ[3] の人たちは、鮭[4] や山女[5] や岩魚[6] を獲るにも、熊の取り分や、狸、狐の取り分を必ず残して漁をすると聞いた。全部人間が取ってしまっては、熊や動物たちが困るだろうという思いやりがあるというのだ。何と優しい民族性であろう。
魚のみならずアイヌの人たちは蕗[7] 、筍、うど[8] 、わらび[9] 等の山菜[10] も、常に動物たちの分を考慮して取ったという。木を1本伐る[11] にも、充分に周囲の状況を考えて伐ったという。すばらしい愛と英知[12] である。
後から入って来た和人たちは、この英知に見習う[13] べきであった。尊重すべきであった。にもかかわらず、乱伐[14] 乱獲[15] をほしいままにした。むろん土地を開拓[16] する以上、木を伐り、森林を拓かねばならないが、どうも必要以上に乱伐したのではなかろうか。現代に至っても、その傾向は少しも改まっていないばかりか、開発途上国にまで手を伸ばし、伐りまくって[17] いるという。ある国の人たちは、日本人があまりにも木を伐り、買い取っていくのを見て、
と、言ったという話を、この頃何かで読んだ。恥ずかしい限りである。
私は知らなかったのだが、営林局[19] に勤めていた三浦と結婚して知った言葉の一つに、「魚つき林」というのがある。私は森と魚とは関係がないと思っていた。が、森林には多数の昆虫[20] が生息し、また様々な草の実、木の実が生産される。海岸に鬱蒼[21] たる森林があれば、それらが魚類[22] の餌になるという。したがって森林がなくなれば、魚が少なくなるのも当然なのであろう。現代、どのような学説[23] があるのか、門外漢[24] の私にはわからないが、鰊の来なくなった一因に、乱獲のみならず、森林の乱開発があるというのは、わかるような気がする。
[1]夥しい②【おびただしい】
【形】
(1)非常,很,相当。(甚だしい。ものすごい。大変だ。)
△だらしのないこと夥しい。/真没规矩。
(2)很多,大量。(甚だ多い。)
△夥しい烏の群。/一大群鸟。
[2]乱獲◎【らんかく】
【名】【他动·三类】
滥捕,乱打。(鳥獣や魚類をむやみにとること。)
△鯨を乱獲する。/滥捕鲸鱼。
[3]アイヌ①【アイヌ】
【名】【英】Ainu
阿伊努族,阿伊努人。虾夷族。(主に北海道に居住している先住民族。かつてはサハリン(樺太)·千島列島·東北地方にも居住。集落はコタンと呼ばれ、狩猟·漁労·採集を基本とする生活を営んでいたが、幕藩体制下での松前藩を中心とした支配·搾取、明治政府の同化政策の下で伝来の生活形態や伝統文化は根底的に破壊された。口承文芸としてはユーカラなどが口承された。)
[4]鮭①【さけ】
【名】
鲑,大马哈鱼。(サケ目サケ科の海魚の総称。また、中の一種。)
△塩鮭。/咸大马哈鱼。
△鮭の切り身。/大马哈鱼段。
△鮭のムニエル。/(法国式)黄油炸鲑鱼。
△鮭のフライ。/炸鲑鱼。
△鮭缶。/鲑鱼罐头。
[5]山女【やまめ】
〈動〉真鳟.山中女妖,同【やまうば】
[6]岩魚◎【いわな】
【名】
红点鲑;白点鲑
[7]蕗◎【ふき】
【名】【日本地名】
蜂斗叶。(キク科の多年草。原野や道端に生える。地下を長い根茎が横に走り、早春、蕗の薹とよぶ若い花茎を出し、頭状花が開くにつれて花茎を伸ばす。雌雄異株。)
△蕗のとう。/蜂斗菜的花梗。
[8]うど①【うど】
【名】
〈植〉土当归。(ウコギ科の多年草。山地に自生。茎の高さ約2メートル。葉は大形羽状複葉。夏、茎頭·葉腋に小白花が球状の花序をなして群がり開く。軟白栽培の若芽は食用とし、柔らかく芳香がある。根は漢方生薬の独活つで、発汗·解熱·鎮痛剤。)
△うどの大木。/大草包。绣花枕头。
[9]蕨◎①【わらび】
【名】
蕨菜。(イノモトソウ科の多年生のシダ。草原など日当たりのよい所に生え、高さ約1メートル。葉は3回羽状に裂け、羽片の裏面の縁に胞子嚢(ほうしのう)群をつけ、冬には枯れる。春のこぶし状に丸まっている若葉は食用に、根茎は砕いてでんぷんとする。)
[10]山菜◎【さんさい】
【名】
(山上自生的)野菜。(山に自生している、食用になる植物。ワラビ·ゼンマイ·フキノトウ·タラノキの芽など。)
△山菜料理。/用野菜做的菜。
[11]伐る①【きる】
【他五】
切开;割开;剪;铰;修剪;切伤;砍伤;洗牌;错牌;限定;截止;冲破;打破;横穿过去;扭转;转动;削球;斜打;打曲球
[12]英知①【えいち】
【名】
睿智,才智,有洞察力。(優れた智識知恵。深い知性。)
△英知に満ちた表現。/充满睿智的表现。
△英知に富んだそう明な政治家。/英明而聪慧的政治家。
[13]見習う③【みならう】
【他动·一类】
(1)见习,学习,实习。〔見て習いおぼえる。〕
△先輩に見習う。/向前辈学习。
(2)学,摹仿,以……为榜样。〔手本にする。〕
△兄さんに見習って勉強しなければいけない。/必须以哥哥为榜样,努力学习。
[14]乱伐◎【らんばつ】
【名】【他动·三类】
滥伐(树木),滥砍。(無計画に森林の木を伐採すること。)
[15]乱獲◎【らんかく】
【名】【他动·三类】
滥捕,乱打。(鳥獣や魚類をむやみにとること。)
△鯨を乱獲する。/滥捕鲸鱼。
[16]開拓◎【かいたく】
【名·他动·三类】
(1)开垦,开荒。(山林·原野などを切り開いて田畑や居住地·道路をつくること。)
△荒地を開拓する。/开荒,开垦荒地。
△開拓地。/开垦地。
(2)开拓,开辟。(新しい分野·領域·進路などを切り開くこと。)
△別の販路を開拓する。/开辟别的销售途径。
△未知の領域を開拓する。/开拓未知领域。
[17]捲る◎【まくる】
【他五】
(1)卷,挽,卷起。掖起。撩起。(端をまいて上げる。また、はぐ。)
△そでを捲る。/卷袖子。
△ズボンをひざのところまで捲る。/把裤脚挽到膝盖上。
△腕をまくって忙しそうに働く。/挽起袖子忙忙活活地干活。
△すそをまくって川を渡る。/掖起下摆渡河。
(2)揭下,剥掉。掀,翻。(紙などを裏返す。めくる。)
△テントを捲る。/揭下帐篷。
△早く起きないとふとんをまくりますよ。/你不快起床,就揭你的被子!
(3)(接动词连用型下)拼命地,激烈地。豁出命地去做…((動詞の連用形に付いて)むやみに…する。…しつづける。)
△風が吹き捲る。/大风猛刮。
△写真を撮り捲る。/一个劲儿地照(相)。
△ひとりでしゃべり捲る。/一个人喋喋不休地说个没完。
△犬に追いかけられて夢中で逃げまくった。/在梦中被狗追得拼命地跑。
[18]砂漠◎【さばく】
【名】
沙漠。(熱帯·温帯の大陸で、年降雨量200m以下の乾燥地帯に出来る荒原。土壌が発達せず耐乾性の強いキク科植物や、サボテンなどが疎生する。乾荒原。)
△タクラマカン砂漠。/塔克拉玛干T沙漠。
△砂漠のオアシス。/绿洲。
[19]えいりん‐きょく【営林局】
林野庁の地方下部機関?国有林野の管理?経営?営林署の指導?監督などを主な業務とした?1999年(平成11)森林管理局に改組?
[20]昆虫◎【こんちゅう】
【名】
昆虫。昆虫纲节肢动物的总称。(節足動物門昆虫綱に属する動物の総称。体は頭·胸·腹の三部に分かれ、頭部には一対の触角、胸部には三対の足があるのが原則。シミ·トビムシのようにはねを欠き変態しない無翅亜綱と、普通はねを有し変態する有翅亜綱とに分類される。後者はさらにトンボやセミのように不完全変態を行うものと、チョウ·ハチ·カブトムシなどのように完全変態を行うものとに分けられる。全世界で八〇万種近くが知られ、全動物の種類の四分の三を占める。大部分が陸生で、淡水産種も少なくないが海産はまれ。六脚虫。六足虫。虫(むし)。)
△昆虫採集。/采集昆虫。
△昆虫類。/昆虫纲。
[21]鬱蒼②【うっそう】
【形动】
郁郁葱葱,葱绿茂密;茂盛。(樹木が茂ってあたりが薄暗いさま。)
△鬱蒼とした森林。/茂密的森林。
[22]魚類【ぎょるい】
鱼类
[23]がくせつ【学説】
学说xuéshuō.
▲ 新しい~を立てる/提出新学说.
▲ がんの治療法に関して新しい~を発表する/发表关于治癌ái的新学说.
[24]門外漢③【もんがいかん】
【名】
(1)门外汉,外行。(その物事について専門家でない人。畑違いの人。)
△経理については門外漢だ。/对财会一窍不通。
(2)局外人,无关者。(第三者。)
群を成す 群むれ