風を感じて空を見上げると、真っ黒い飛行機が飛んでいくところだった。
月光[5] を遮って[6] 浮かびあがる最後の文明。あるいはその名残[7] 。鋼[8] の機体[9] は鈍く強く輝きながら、東の空を目指していく。
しかも今回は新記録だ。わたしはいつも以上の無理難題を押しつけて、一日のうちに求婚者を追い返した。島でも前代未聞[11] だと怒られたけれど、今日ばかりは仕方がない。満月の日にやってくる相手が悪い。場の空気を読め、というヤツである。酸素[12] は薄くなったけど、愛を語るのならそれぐらいは常備[13] してほしい。
わたしの住む島は人口五十人足らず[14] の小さなコロニー[15] だ。都市のある本土[16] は海を隔てた[17] 遙か彼方[18] 。島には港[19] がなく、三日月[20] 形の海岸には島特有の珊瑚礁[21] が広がっている。島の人々にとって珊瑚礁はごく普通のものだけど、都市部の人々にとっては宝石より価値のあるものらしい。
おばあちゃんの頃から、この島は聖域[22] として扱われている。海から入ることは固く禁じられ、飛行機なんて貴重品[23] を持っている人しか上陸[24] できない。わたしがお姫[25] (ひい)さんと呼ばれるのも、本土の人たちにとってこの島が特別なモノだからだ。人類復興[26] の希望の星、と彼らは言う。わたしたちにとっては極めて日常的な、いつ終わっても『そんなものか』的な環境にすぎないのだけど。
「でも残念。空は飛べても、月のサカナはやっぱり無理なのね」
わたしは毎回、求婚者に無理難題を押しつける。
月は一方通行[28] の世界だ。行く方法はまだ残っているらしいけど、帰ってくる方法がないらしい。行くだけなら現実的だけど、戻ってくる事はできない。生きていながら見る事のできる、現実的な死の世界。
月に行け、というだけでも酷[29] (こく)な話なのに、その上、居るはずのないサカナを取ってこいというのだから、アリシマの君が怒って帰るのも頷ける[30] 。
けれど誓って、わたしは本気なのである。
[1]おや(っ)
〔感〕哎āi,唷yō,噢ō,哎呀āiyā.
▲ ~,いらっしゃい/唷,你好.
▲ ~,しばらく/噢,好久不见了.
▲ ~,もうこんな時間だ/唷,已经┏这时候〔这么晚〕啦.
▲ ~,雨だ/哎!下雨了.
▲ ~,大変だ/哎呀!糟了!
▲ 彼の話を聞いて~と思った/听了他的话,我感到很┏意外〔吃惊〕.
[2]有島【ありしま】
【日本地名】
[3]逞しい④【たくましい】
【形】
(1)健壮,强壮···魁梧。体格结实强壮。(体つきががっしりしていて強そうである。)
△逞しい若者。/健壮的小伙子。
△逞しい力。/强大的力量。
(2)旺盛,蓬勃,茁壮。充满活力。(活力に満ち溢れている。)
(3)顽强,刚毅,坚韧不拔。意志坚强,无论遇到什么事都不灰心失望。(意志が強く··、どんなことにもくじけない。)
△たくましい精神力。/坚强的精神。
[4]駆動◎【くどう】
【名】
驱动。传递动力使之··动。(動力を与えて動かすこと。)
△駆動軸。/驱动轴。
[5]月光◎【げっこう】
【名】
月光。(月の光。··
△月光の曲。/月光曲。
△月光を浴びる。/在月光下。沐浴着月光。
[6]遮る③【さえぎる】
【他动·一类】
(1)遮,···挡,遮住,遮蔽。(光の照射や視界を邪魔する。妨げる。)
△風を遮る。/遮风。
△光線を遮る。/遮住〔遮挡〕光线。
△ビルに視界をさえぎられる。/一座大楼遮住了我们的视线。
△広い草原を遮るものはなにもない。/广阔的草原上没有什么遮挡。
(2)遮断,遮拦,阻挡。(進路や人の話を途中で妨げ、先へ進まないようにする。···
△道を遮る。/遮路;拦道。
△発言を遮る。/打断〔阻止〕发言。
△人の話を遮る。/打断别人的话。
[7]名残◎【なごり】
【名】
(1)余音,余韵。(···ること。)
△古代文明の名残···/古代文明的遗迹。
△名残の···。/残雪。
△台風の名残で波···高い。/受台风的影响波浪很大。
(2···惜别,依恋。(人との別れを惜しむ気持ち。)
△名残を惜しむ。/惜别;恋恋不舍。
△いつまで話しても名残は尽きない。/说到什么时候,还是依依不舍。
[8]鋼◎【はがね】
【名】
钢,钢铁。(鉄鋼。··
△鋼のような筋骨。/象钢铁··般的筋骨。
△鋼色。/钢青色··
[9]機体◎①【きたい】
【名】
机身,机体,飞机。··飛行機の本体。翼以外、またはエンジン以外の部分。また、飛行機の全体。)
△機体が傾く。/机体倾斜。
[10]撃墜◎【げきつい】
【名·他动·三类】
击落、···下。(敵の飛行機を撃ち落とすこと。)
[11]未聞◎【みもん】
【名】
未听见过,未闻。(··だ聞いたことがないこと。)
△前代未聞。/前所未闻。
[12]酸素①【さんそ】
【名】
氧。(気体元素。)
△酸素化合物。/氧化物。
△液体酸素。/液体氧。
△酸素マスク。/氧(气)面具。
△酸素ボンベ。/氧气瓶。
[13]常備①【じょうび】
【名】【他サ】
常备。(··つも用意しておくこと。)
△··害援助費を常備する。/常备救灾费。
△常備薬。/常备药。
[14]足らず◎【たらず】
【汉造】
不足……,不到…··。(その数値に満たないという意を表す。)
△10分足らずで。/不足十分钟。
[15]コロニー①【ころにー】
【名】【英】colony
(1)殖···地。(植民地。)
(2)疗养区,···养设施。(治りかかった患者·身体障害者·精神薄弱児などを集めて、開放的な自然環境の中で、保護したり訓練したりする施設。)
△身障者コロニー。/残疾者聚居处。
[16]本土①【ほんど】
【名】
(1)本土,本国。( 本国。おもな国土。離島や属国などに対していう。)
△イギリス本土。/英国本国。
△本土防衛。/本土防卫。
(2)佛土,佛界。(仏土。浄土。)" id="amw_comment_0"/>
[17]隔てる③【へだてる】
【他动·二类】
(1)隔开···分开,间隔,遮挡。(間にものをおく。さえぎる。)
△ついたてで隔てる。/用屏风隔开。
△中日両国は狭い海を隔てただけの隣邦である。/中日两国是一衣带水的邻邦。
△家が道を隔··て向かいあう。/房子隔道相对。
△彼とテーブルを隔ててすわっていた。/和他隔张桌子坐着。
(2)间隔。(距離をおく。)
△30メートル隔てて電柱を立てる。/间隔三十公尺埋设电杆。
(3)相隔。(年月をおく。)
(4)离间。···ひき離す。)
△友だちの仲を···てる。/离间朋友的关系。
[18]彼方①【かなた】
【代】
那方,那边。(遠く··れた方。)
△山の彼方。/山··那边。
△海の彼方に。/在海··彼岸;在海外。
△はるか彼方··見える山。/遥遥可见的远山。
△遠く彼方に。/遥远的彼岸;九霄云外。
[19]港◎【みなと】
【名】
港,港口;码头。(··や河口を利用し、また防波堤を築いて、船が安全に碇泊できるようにした所。港湾。)
△港を出る。/出港。
△港にはいる。/进港。
△港に寄る。/停靠码头。
[20]三日月◎【みかづき】
【名】
新月;月牙『口』··娥眉月。(陰暦の月の三日目に出る月。また、その前後の細長い弓形の月)
△三日月眉/月牙眉;娥眉。
[21]珊瑚礁③【さんごしょう】
【名】
珊瑚礁
[22]聖域①【せいいき】
【名】
神圣地带,不可侵··的禁区。(聖人の地位または境地。神聖な地域。神社·寺院の境内、神が宿るとされる所など。それに触れてはならないとされている問題や領域。)
△聖域を汚すことは許されない。/神圣地带不容亵渎。
[23]貴重品◎【きちょうひん】
【名】
贵重物品。(··価で大切な品物。)
△貴重品··送。/贵重品运送。
[24]上陸◎【じょうりく】
【名·自动·三类】
上··,登陆。登岸'。(船や海から陸に上がること。)
△敵前に上陸する。/在敌前登陆。
△台風が四国に上陸する。/台风登上四国岛。
△上陸を許された水夫。/被允许上岸的海员。
△無事に上陸する。/平安登陆。
△上陸日。/(水手)准许上岸日。
△上陸部隊。/登陆部队。
△上陸用舟艇。/登陆艇。
[25]お‐ひい‐さま【御姫様】
?おひめさま?の転?
[26]復興◎【ふっこう】
【名】
复兴,重建。衰败··事物再度兴隆、昌盛。(衰えものが再び興隆すること。また、盛んにすること。)
△文芸復興。/文艺复兴。
△水害を受けた町を復興する。/重建遭受水灾的城镇。
△目ざましい復興ぶり。/惊人的复兴情况。
△日本の戦後復興。/日本战后的复兴。
△復興計画。/重建计划。
△復興事業。/复兴事业。
[27]題①【だい】
【名·自动·三类】
(1)题;···题;书名。(頭部のしるしをつける所。ひたい。また、巻頭にしるした文字。書物の名。書名。詩歌·文章·美術作品などでその主意を短く示すもの。)
△題を出す。/出题。
△小説の題をつける。/为小说命(起)名。
△題の意味がよくわからない。/不十分了解标题的意义。
(2)题;题目;问题。(問い。解決を求められている事柄。試験などの問いの数を数える語。)
△問題を10題出す。/出十道题。
[28]一方通行③【いっぽうつうこう】
【名】
(1)单向···行。(車両などの通行を道路の一方向に限って許すこと。一方交通。)
(2)只传达单方面的意见,不传达反对意见。(ある一方からの伝達が行われて、その···の伝達が行われないこと。)
△話が一方通行だ。/传达单方面的话。
[29]酷①【こく】
【形動】
苛刻,残酷。(度を··して厳しいさま。)
△ 酷な批···。/严酷的批评。
△ それはすこし酷だ。/那有点太苛刻了。
[30]頷ける【うなずける】
可以理解,能够同意