一年じゅう青々[1] とした芝[2] の広がるゴルフ場[3] 、人工雪を降らせたスキー場、農業でも施設園芸[4] が一般化し、もしかすると一年じゅう成長しつづける木もそのうちに生みだされるかもしれない。自然の制約から抜けだそうとしてきた人間たちは、いま季節のない自然をつくりだしはじめたのかもしれないというような気さえするのである。
近代文明は四季があること自体を、めんどうなこととみなして[5] しまった。だから一年じゅう室温の変わらない工場をつくり、一年じゅう変わらない生活のリズムをつくりあげた。そしてそのことによって、私たちはしだいに自然を忘れていった。季節とつきあい、やりすごしながら、季節に助けられて暮らす生活を忘れることは、自然を忘れることである。
桜の花が咲くと私も花見にでかける。染井吉野の華やかさに驚き、霞[6] のように白く浮きあげる山桜に足を止める。その桜の下で人々が花見の宴を盛り上げているのを見るのは楽しい。
この時ばかりは、まるで季節を克服しようとしてきた文明の歴史に抵抗するかのように、私たちは人間もまた季節とともに生きていることを実感する。そして昔の人々と同じように、生命が湧き上がって[7] くる春を楽しむ。自然と人間の関係をつなぐもののひとつに、四季という時間の流れがあることを、そのとき私たちはあらためて再発見しているのである。
『山里紀行』による
[1]青々【あおあお】
青绿,青翠。绿油油。
△ひげを剃ったあとが青々としている。/刮完的胡茬子青须须的。
[2]芝◎【しば】
【名】
(1)结缕草。(イネ科の多年草,シバ·コウライシバ·オニシバ·イトシバなどの総称。)
△芝を植える。/铺草坪。
△芝を刈り込む。/剪草坪。
△芝刈り機。/剪草机,割草机。
(2)日本地名。(東京都港区の地名。旧区名。増上寺·東京タワーがある。)
[3]ゴルフ場【ゴルフ場】
高尔夫球场
[4]園芸◎【えんげい】
【名】
园艺。(蔬菜·果樹·庭樹·花卉かきなどの栽培。また、その技術。)
△園芸品種。/园艺品种。
△園芸作物。/园艺植物。
[5]見なす◎②【みなす】
【他动·一类】
看作,认为,当作。(見て、これこれだ、と判定したり仮定したりする。)
△オートバイに乗る少年を不良と見なす。/把骑摩托车的少年看作行为不端。
△証拠不十分と見なされた。/被认为证据不足。
△人生を旅と見なす。/把人生当作旅途。
[6]霞◎【かすみ】
【名】
(1)霞,霭(空気中に浮遊するごく小さな水滴·ちりなどのために,遠くのものがはっきり見えなくなる現象。また,そのために,山腹などに帯状に見える薄雲のようなもの。普通,春のものをいう)。
△夕霞/晚霞;暮霭。
△霞がかかる/有霞。
△春の野に霞がたなびく/春日的原野上雾霭缭绕。
(2)朦胧,迷蒙(視力が落ちたりして,物がぼんやりとして見えること)。
△目に霞がかかる/眼睛朦胧。
[7]湧き上がる【わきあがる】
勃起,奋起
这里缺少了半句,第二页 もしかすると、こんな暮らし方を、文明の発達度が低い証というのかもしれない。
不错