ある朝のこと、自分は1匹のはちが玄関の屋根で死んでいるのを見つけた。
足を腹の下にぴったりとっけ、触角[1] はだらしなく[2] 顔へ垂れ下がって[3] いた。ほかのはちはいっこうに[4] 冷淡[5] だった。巣の出入りに忙しくそのわきをはい回る[6] が全く拘泥[7] する様子はなかった。忙しく立ち働いて[8] いるはちはいかにも生きているものという感じを与えた。そのわきに1匹、朝も昼も夕[9] も、見るたびに一つ所に全く動かずにうつ向き[10] に転がっているのを見ると、それがまたいかにも死んだものという感じを与えるのだ。それは3日ほどそのままになっていた。それは見ていて、いかにも静かな感じを与えた。寂しかった。ほかのはちがみんな巣へ入ってしまった日暮れ[11] 、冷たいかわらの上に一つ残った死骸を見ることは寂しかった。しかし、それはいかにも静かだった。
夜の間にひどい雨が降った。朝は晴れ、木の葉も地面も屋根もきれいに洗われていた。はちの死骸はもうそこになかった。今も巣のはちどもは元気に働いているが、死んだはちは雨どい[12] を伝って地面へ流し出されたことであろう。足は縮めた[13] まま、触角[14] は顔へこびりついた[15] まま、たぶん泥にまみれて[16] どこかでじっとしていることだろう。外界にそれを動かす次の変化が起こるまでは死骸はじっとそこにしているだろう。それともありに引かれていくか。それにしろ、それはいかにも静かであった。せわしく[17] せわしく働いてばかりいたはちが全く動くことがなくなったのだから静かである。自分はその静かさに親しみを感じた。自分は『范の犯罪』という短編小説をその少し前に書いた。范という中国人が過去の出来事だった結婚前の妻と自分の友達だった男との関係に対する嫉妬[18] から、そして自身の生理的圧迫[19] もそれを助長[20] し、その妻を殺すことを書いた。それは范の気持ちを主にして書いたが、しかし今は范の妻の気持ちを主にし、しまいに殺されて墓の下にいる、その静かさを自分は書きたいと思った。
『殺されたる范の妻』を書こうと思った。それはとうとう[21] 書かなかったが、自分にはそんな要求が起こっていた。その前からかかっている長編[22] の主人公の考えとは、それは大変違ってしまった気持ちだったので弱った。
[1]触角◎【しょっかく】
【名】
触角,触须。(昆虫などの節足動物の頭部にある触覚および嗅覚にあずかる器官。形状は糸状·こん棒状·くし状など種類によって異なる。)
[2]だらしなく【だらしなく】
邋遢的;吊儿郎当;不修边幅;痞里痞气
[3]垂れ下がる④【たれさがる】
【自动·二类】
下垂,耷拉。(下の方へさがる。ぶらさがる。)
△ヤナギの枝が垂れ下がる。/柳枝垂下来。
[4]一向に◎【いっこうに】
【副词】
完全,全然,一向,总,一点儿也……。(まるきり。少しも。)
△一向に驚かない。/一点都不吃惊。
△一向に知らなかった。/一点都不知情。
[5]冷淡③【れいたん】
【名·形动】
(1)冷淡,冷漠,不热心,不关心。(関心や興味を示さないこと。熱心でないこと。また、そのさま。無関心。)
△個人の名利に冷淡な人。/对个人名利冷淡的人。
△仕事に冷淡だ。/对工作不热心。
△冷淡な顔をする。/作冷漠的表情。
△彼は利己主義で、他人のことにはきわめて冷淡である。/他自私,对别人的事情漠不关心。(2)不热情,不亲热,冷心肠。(同情を示さないこと。不親切なこと。そっけないこと。また、そのさま。)
△冷淡な人間。/冷心肠的人;不热情的人。
△冷淡な返事。/冷淡的答复。
△冷淡なもてなし。/冷淡的接待;冷遇。
△冷淡な目で見る。/用冷眼看。
△人を冷淡にあしらう。/冷淡待人。
△彼はわたしに冷淡だった。/他对我冷淡〔并不亲热〕。" id="amw_comment_0"/>
(2)不热情,不亲热,冷心肠。(同情を示さないこと。不親切なこと。そっけないこと。また、そのさま。)
△冷淡な人間。/冷心肠的人;不热情的人。
△冷淡な返事。/冷淡的答复。
△冷淡なもてなし。/冷淡的接待;冷遇。
△冷淡な目で見る。/用冷眼看。
△人を冷淡にあしらう。/冷淡待人。
△彼はわたしに冷淡だった。/他对我冷淡〔并不亲热〕。
[6]はい回る【はいまわる】
到处爬,爬来爬去
赤ちゃんが部屋の中を這い回っている
[7]拘泥◎【こうでい】
【名】【自动·三类】
拘泥,固执。(こだわること。必要以上に気にすること。)
△点数に拘泥するな。/不要拘泥于分数。
[8]立ち働く◎⑤【たちはたらく】
【自动·一类】
努力工作,劳动。(こまめに動き回って働く。)
[9]夕◎①【ゆう】
【名】
黄昏,傍晚。(日が暮れかけ、夜となろうとする頃。夕暮れ。夕方。夕べ。)
△朝に夕にご幸福を祈る。/朝夕祝愿你幸福。
△朝に夕に。/朝朝暮暮。
[10]俯く③④◎【うつむく】
【自动·一类】
(1)俯首,垂头,低头,脸朝下。(首を少し折って、頭を垂れる。下を向く。)
△恥ずかしくて俯く。/羞得低下头。
(2)直立したものの先端が曲がって下を向く。
△花が俯く。/花搭拉下来。
[11]日暮れ◎【ひぐれ】
【名】
黄昏,傍晚,日暮。(日の暮れようとする時。夕暮。夕方。たそがれどき。)
△日暮れになる。/到黄昏了。
△秋の日暮れ。/秋天的傍晚。
△日暮れ前に。/在黄昏前。
△日暮れ方。/黄昏时分。
[12]雨どい【あまどい】
滴水槽,檐槽,雨水管
[13]縮める◎【ちぢめる】
【他动·二类】
(1)缩,缩短;缩小。(大きさを縮小する)
△期限を縮める。/缩短期限。
△戦線を縮める。/缩短战线。
△命を縮める。/缩短寿命。
△先頭との差を縮める。/缩小同领先者的差距。
△旅行予定をちぢめて帰国する。/缩短旅行日程,提前回国。
(2)截短,弄小。(短くする)
△紙の寸法を縮める。/把纸的尺寸裁小。
△ズボンのたけを縮める。/改(弄)短裤子。
△着物を5寸ばかり縮める。/把衣服截短五寸。
(3)蜷曲;缩回。(からだをまるめる)
△足をちぢめて寝る。/蜷着腿睡。
△しかられて首を縮める。/被骂得缩了脖子。
(4)减少,削减。(へらす)
△文の長さを3分の1に縮める。/把文章压缩成三分之一。
(5)畏缩,惶恐,因为紧张、恐惧等原因而使身体或胆气变小。
△思わず身を縮める。/不由得缩起身子。
(6)使起褶皱,弄皱。
△服を縮める。/弄皱衣服。
[14]触角◎【しょっかく】
【名】
触角,触须。(昆虫などの節足動物の頭部にある触覚および嗅覚にあずかる器官。形状は糸状·こん棒状·くし状など種類によって異なる。)
[15]こびり着く④【こびりつく】
【自动·一类】
(1)粘着,附着。(〔強い粘着力や強烈な印象のために〕くっついてしまって、容易に引きはがせなくなる。)
(2)缠绕,萦绕。(ある人の身辺にまつわりつく。)
△頭にこびり着いて離れない。/深深印在脑海中挥之不去。
[16]塗れる③【まみれる】
【自动·二类】
沾满全身。(からだなどの一面に粉状や液状のものがついて汚れる。まぶる。)
△血にまみれる。/满身是血。
△汗とほこりにまみれて働く。/全身沾满汗水和尘土劳动。
△一敗地にまみれる。/一败涂地。
[17]忙しい③【せわしい】
【形】
(1)忙,忙碌,忙合。(いそがしい。)
△まったく忙しいやつだ。/真是一个忙忙碌碌的家伙。
(2)匆匆忙忙,急忙,焦急。(心がせく。)
△忙しい人だね,まあ中へ入りなさい。/真是个匆忙的人,唉,进来吧。
[18]嫉妬◎①【しっと】
【名·他动·三类】
嫉妒,忌妒;吃醋。(男女間のやきもち。)
△むらむらと嫉妬心を起こす。/不由得妒火中烧。
△嫉妬の目で見る。/用嫉妒的眼光看;嫉视。
△嫉妬からの夫婦げんか。/由吃醋而引起的夫妻吵架。
△嫉妬心が強い。/嫉妒心强; 醋劲儿大。
[19]圧迫◎【あっぱく】
【名·他动·三类】
(1)压迫。用强力压住。(強い地川で押さえつけること。)
△胸を圧迫する。/压迫胸部。
△精神的圧迫。/精神压迫。
(2)使用武力或权利等进行压制。(武力や権威などで押さえつけること。抑圧。)
△重税に家計が圧迫される/重税之下,家计难支。
△言論を圧迫する。/压制言论。
△相手に圧迫感を与える。/给对方以压迫感。
[20]助長◎【じょちょう】
【名·他サ】
助长;促进。(物事の成長·発展のために外から力を添えること。中国語の“助长”も悪い意味で使われることが多い。)
△スポーツは健康を助長する。/体育运动促进健康。
△そんなことをするとかえって彼らの悪習を助長する。/那样做反而会助长他们的恶习。
[21]とうとう①【とうとう】
【副】
终于,到底,终究,结局。(最終的な結果として物事が実現した、あるいは実現しなかったという意を表す。ついに。結局。)
△とうとう雨になった。/到底下起雨来了。
△3時間待ったが、彼はとうとう来なかった。/等了三小时,但他终于没有来。
△いそがしくて、その映画はとうとう見に行けなかった。/忙得终于没能去看那部电影。
△とうとう酒で死んだ。/终于死在酒上了。
[22]長編◎【ちょうへん】
【名】
(1)长篇。(編章の長い詩歌·文章または小説。)
△長編の詩。/长诗。
△長編小説。/长篇小说。
△長編漫画映画。/长篇动画片。
(2)长篇小说。(長編小説の略。)
阿婆主是不是一个一个词条查找粘贴过来排版好的 真的辛苦了 不知道还有没有机会看到第八九课www
足に毛の生えた大きな川がにが石のようにじっとしている 川字后面缺了一个字就是;蟹
应该是没缺的,川がに→川蟹 这样