だから、男は目が醒め切るまでに時間がかかった、彼は時計を見詰め、首を傾げる。
「ぜんまい[1] を巻き忘れたはずはない。この時計、故障でもしたのだろうか。まだ買っても間もないのに…」
曇った朝だった。どんより[2] したくも。窓の外の天候[3] は、清々しいものではなかった、それを補おう[4] として、男は言った。
「さあ、元気を出そう」
自分に言い聞かせるように叫びながら、ベッドの上で少し跳ねて[5] みた。そうすることによって、自分の体力がおとろえていないことを確認できた。
体に異常はなさそうだったが、おかしな感覚はあった。彼は夜中の体験を、ふとおもいだした。柔らかいはずのベッドに、弾力[6] を感じなかった。
手で触り、押してみる。ふわふわしているはずのマットレス[7] が、なんだかごわごわ[8] している。不審[9] 感は高まり、さらにマットレスの下の、ベッドのスプリング[10] をも調べる。それもおかしかった。手ごたえのある強い弾力を示さなかった。
男はべッドの下を覗いてみた。木製のベッドの脚。それに塗ってあるニス[11] がつや[12] を失い、剥がれかけていた。その下の材質は、かさかさ[13] した感じなっている。何十年と使い古したベッドではないのに…
「へんだな…」男はまたつぶやき、テレビのスイッチを入れる。それが彼の毎朝の習慣だった。しかし、この朝のスイッチには、いつものようなびしりと[14] した手ごたえがなかった。チャンネルを回すときも、どこかがひっかるような、だらしない[15] 感覚が伝わってくる。
[1]発条◎【ぜんまい】
【名】
发条,弹簧。(弾力性に富んだ帯状などの鋼を、渦巻き状に巻いたばね。巻き締めて、そのほどけようとする力を動力として利用する。)
[2]どんより③【どんより】
【副】
(1)阴沉沉。(空がくもって重苦しいさま。)
△どんよりとした空。/阴沉沉的天空。
(2)浑浊,不明亮。(目がにごっているさま。)
△どんよりした目。/浑浊的眼睛。
△彼の目はどんよりしている。/他的眼睛不明亮。
(3)空气,水等浑浊,不新鲜。(空気·水などがにごって新鮮でないさま。)
△どんより(と)動かない運河の水。/浑浊不流动的运河水。
△部屋の空気がどんより(と)よどんでいる。/房间里的空气很浑浊不新鲜。
[3]天候◎【てんこう】
【名】
天气,气候。从几天到两三个月时间内大气的状态,是介于天气和气候之间的概念。(数日から2~3か月ぐらいの期間の、大気の状態。天気と気候のほぼ中間の概念。)
△天候が定まらない。/天气不稳。
△天候の回復を待つ。/等天气恢复(转晴)。
△天候が不順で稲のできが悪い。/因天气反常稻子收成不好。
[4]補う③【おぎなう】
【他動】
(1)补,补上,补充,贴补。(足りないところを付け足す。不足を満たす。)
△欠員を補う/补缺。
△欠陥を補う/补救缺点。
△たりない原料は輸入でおぎなっている/缺乏的原料,靠进口来补充。
△もうすこしことばをおぎなわなければ,意味がよくわかりません/如果不稍补充一些话,意思就不大明白。
(2)补偿;填补;弥补。((損失、罪などの)埋め合わせをする。)
△欠損を補う/补偿亏损。
△財政不足を補うため国債を発行する/为弥补财政不足发行国债。
△こんどの成功は前の失敗をおぎなってあまりある/这次的成功足以补偿以前的失败而有余。
[5]跳ねる②【はねる】
【自动·二类】
(1)跳,跳跃。〔おどりあがる。〕
△馬が跳ねる。/马腾跃。
△魚が水面に跳ねる。/鱼跃出水面。
△子どもがとんだり跳ねたりする。/小孩蹦蹦跳跳。〔又蹦又跳。〕
(2)溅,飞溅。〔とび散る。〕
△ズボンに泥が跳ねる。/泥溅到裤子上。
△油がなべの外に跳ねる。/油往锅外溅。
△水道の水が跳ねる。/自来水飞溅。
(3)散戏,散场。(あの日の興行が終る。)
△9時に芝居が跳ねる。/九点散戏。
(4)爆,裂开,绷开。〔はじける。〕
△炭が跳ねる。/炭爆。
△くりが跳ねる。/栗子裂开。
△桶のたがが跳ねる。/桶箍绷开。
(5)〈商〉(行情)飞涨。
[6]弾力◎①【だんりょく】
【名】
(1)弹力,弹性。(外力を加えられ変形した物体が、外力に抗して元の形に戻ろうとする力。はねかえす力。はずむ力。)
△この古いゴムひもにはもう弾力がない。/这根旧松紧带已经没有弹力了。
△弾力率。/弹性率〔系数〕。
(2)弹性,灵活。指通融起作用。(融通のきくこと。受容力。)
△弾力的に運用する。/灵活运用。
[7]マットレス①【マットレス】
【名】【英】mattress
褥垫,床垫。(スポンジなどの入った弾力性のある、西洋風の敷き布団。)
△スプリング入りマットレス。/弹簧床垫。
[8]ごわごわ①【ごわごわ】
【形动·副·自动·三类】
粗糙,硬邦邦。(紙や布などが、こわばっていてしなやかでないさま。)
△洗いたてのごわごわとしたジーンズ。/洗过后硬邦邦的牛仔裤。
[9]不審◎【ふしん】
【名】【形動】
可疑,疑问,不清楚。(はっきりしない点があって、疑わしく思うこと。また、そのさま。)
△不審な個所にしるしを付けておきなさい/不清楚的地方请划上记号。
△そのご説明で不審が晴れました/(您的)解释消除了疑团。
△不審尋問を受ける/受到盘问。
△不審に思うところがある/有可疑之处。
△挙動不審の男/行动可疑的男人。
△不審火/原因不明的火灾。
[10]スプリング◎【スプリング】
【名】【英】spring
(1)春天。〔春。〕
△スプリング·セール。/春季大贱卖。
(2)弹簧。〔ばね。〕
△スプリングがきいている。/弹簧的弹力好。
△スプリング·ベッド。/弹簧床,钢丝床。
(3)春秋衫,春秋外衣。春秋穿的较薄的外套。(スプリングコートの略。春や秋に着る薄手の外套。)
[11]ニス①【ニス】
【中】【英】 varnish
漆,洋漆,清漆。(ワニス之略。樹脂を溶剤に溶かした塗料。顔料は含まず、光沢のある透明な薄膜を形成するもの。仮漆。)
△天然なニス。/天然清漆。
[12]艶◎【つや】
【名】
(1)光泽,光亮,润泽。(光沢。)
△艶を出す。/上光,发光。
△艶を消す。/消光。
△艶のある紙。/有光纸。
△艶のある顔。/润泽的脸。
△艶インキ。/有光墨水。
(2)艳事,风流事。(男女の間の情事に関すること。)
△艶物語り。/艳史。
△艶ばなし。/风流韵事。
△もう少し艶をつけたら話がまとまりやすいかもしれない。/再加上点馈赠或许容易谈拢。
[13]かさかさ①◎【かさかさ】
【副·形动·自サ】
(1)干燥,干巴巴,不湿润。毛躁,粗糙。不圆滑。(乾いて潤いのないさま。湿り気や油気のないさま。)
△手がかさかさになる。/手变得干巴巴的。
△皮膚がかさかさになる。/皮肤干燥。
△土がかさかさに乾いている。/土干得沙拉沙拉的。
△かさかさした世の中。/缺乏人情味的世界。
(2)沙沙。((多く「と」を伴って)乾いたものが触れ合って発する音を表す語。「がさがさ」よりやや軽い感じの音。かさこそ。)
△落ち葉がかさかさと音をたてる。/落叶沙沙作响。
[14]びしりと
毫不客气地 h_ob_ k_qi de.
◆相手の矛盾を~指摘する/毫不客气地指出__方自相矛盾之__ h_ob_ k_qi de zh_chu du_f_ng z_ xi_ng m_o d_n zh_ ch_.
[15]だらしない④【だらしない】
【形】
(1)不检点;散漫;放荡;没规矩;衣冠不整;懒散〔慎みがなく。節度がない。しまりがない。整っていない)。
△金にだらしない/在金钱方面很马虎;花钱大手大脚。
△彼女は男にだらしない/她是个水性杨花的女人。
△あの男は女に関してはだらしない/那个男的对女人很放荡。
△父は酒が入るとだらしなくなる/父亲一喝酒,就没规矩了。
△だらしないふうをする/邋遢打扮;衣冠不整。
△だらしなくベッドに寝る/懒散地躺在床上;四仰八叉地躺在床上。
△彼の仕事ぶりはだらしない/他干工作吊儿郎当。
(2)没出息,不争气〔体力や気力がない。根性がない〕。
△だらしない負け方をする/遭到很不体面的失败。
△これっぽっちで音をあげるなんてだらしない/为这么个小事就气馁,太不争气〔没出息〕了。