沖のほうに、薄墨色の雲が張り出して、その末端[1] がおかしな[2] 具合に垂れ下がっている。あそこまで雨が来ているのか。
私はM君に呼びかけたが、竜巻というものを目撃したことがあるわけじゃない。しかし、いかにも暗雲[4] といった、陰悪な雲だ。
さて、このあとも、又あくる[5] 日も、海沿いのドライブを楽しんだが、これ以上海の描写は勘弁していただく。私はどうも文章で海を写すのは苦手である。皆さんそれぞれ自分の目で見られるのがよかろうと思う。
また、どの場所のどんな位置から眺望した日本海がよかったか、私にも若干意見はあるが、これも差し控える[6] 。論争しても始まらない。
とにかく、海を見て来て、私はやや希望を取り戻したようである。
雪がちらつく[8] 頃が旬[9] だという山陰の名物松葉[10] カニ、やや時季外れだったが、東京から行ったわれわれにはやはり珍しい。せっかくだからといういので、帰途[11] 鳥取駅で一匹ずつ一番大きな奴を買い込む。籠にドライアイス[12] を入れてくれたが、みそ[13] は保証しかねる[14] という。
こういう時、旅慣れた男というのは頭が動く物で、暖房の効いた客席[15] に持ち込むと傷みも早いから、グリーン車[16] の車掌[17] 専務室の横にある戸棚[18] にカニを預かってもらおう、とM君が言い出した。
車掌さんをつかまえて[19] 交渉する。相手は微笑しながら聞いていたが、
「実はカニはお預かりしないことになっているんです。」
[1]末端◎【まったん】
【名】
(1)末端,尖端,尽头。(一番端。端の部分。)
△棒の末端をつかむ。/抓住棍子的一头儿。
△末端価格。/零售价格。
△末端肥大症。/肢端肥大症。
(2)基层(组织)。(組織などの中枢から遠く離れら部分。)
△労働組合の末端組織。/工会的基层组织。
△指令が末端まで伝わらない。/指示传不到基层。
[2]おかしな②【おかしな】
【连体】
可笑,滑稽;奇怪,可疑;荒谬;不妥当。(おかしい。)
△おかしな人。/怪人。
[3]竜巻◎【たつまき】
【名】
龙卷风,大旋风。(大気の下層に起こる激しい渦巻き。積乱雲などの雲底から垂れ下がり直径十数メートルから数百メートルの漏斗状·柱状。その中心付近では風速は時に毎秒100mを超し、進路に当たる地上のものを巻き上げ、また破壊する。)
△竜巻が起こる。/掀起了大旋风。
△竜巻に船が巻き上げられる。/船舶被大旋风卷起来。
[4]暗雲②【あんうん】
【名】
(1)乌云,黑云。(真っ黒な雲。今にも雨や雪が降りだしそうな気配のある暗い雲。)
△暗雲が低く垂れ込める。/乌云笼罩大地。
(2)风云险恶,形势不稳。(戦争などの危機が迫りくる気配。)
△中東に暗雲が漂う。/中东形势不稳。
[5]明くる◎【あくる】
【连体】
下,次,翌,第二。(夜·月·年などが明けての。次の。翌。)
△明くる朝。/第二天早晨。
△明くる月。/翌月;第二个月。
△明くる5月1日はメーデーだ。/明天五月一日是国际劳动节。
[6]差し控える⑤◎【さしひかえる】
【自他动·二类】
(1)节制;控制。(物事をひかえめにする。内輪にする。)
△酒とタバコを差し控える/。节制烟和酒。
△塩分を差し控える。/节制吃盐。
△今,真実を告げるのは差し控えよう。/把真实暂时保留,不告诉他。
(2)保留,避免,不作。(ある動作をなるべくしないようにする。見あわせる。)
△外出を差し控える。/ 减少外出。
△この件については論評を差し控えたい。/关于这件事保留意见。
△差し出口は差し控える。/不多嘴。
△発言を差し控える。/避免〔不作〕发言。
△発表を差し控える。/暂缓发表,不发表。
△明日の訪問は差し控える。/明天且不去访问吧。
(3)控制,注意。(控えている。)
△次の間にさし控えておれ。/下次注意一下。
[7]余談◎【よだん】
【名】
废话,多余的话。(本筋をはずれた話。ほかの話。)
△余談だが、歴史に関しては詳しいです。/可能是废话,我对历史比较了解。
[8]ちらつく◎【ちらつく】
【自动·一类】
(1)纷纷地落,霏霏地下。(少量の雨や雪が降る。)
△小雪がちらつく。/雪花纷飞。
(2)不时浮现。〔見え隠れする。〕
△どすをちらつかせる。/摇晃着匕首。
(3)闪烁。(ちらちら光る。)
△目がちらつく。/眼神发光。
[9]旬①【じゅん】
【名】
(1)旬,十天。(一ヶ月を十日ずつに分けた時の、それぞれの十日間。)
△月の上旬/一个月的上旬。
(2)〔十年〕十年。(十回。十年。)
△齢(よわい)七旬に余る/年纪七旬有余;年过七旬。
[10]松葉【まつば】
松叶,松针.【日本地名】松叶,松针
[11]帰途①【きと】
【名】
归途。(帰りみち。帰路。)
△帰途につく。/踏上归途。
[12]ドライアイス【ドライアイス】
干冰,固体二氧化碳
[13]味噌①【みそ】
【名】
(1)酱,黄酱,大酱,豆酱。(調味料の一。蒸した大豆に塩などを加え、大豆タンパク質を分解させて作ったもの。)
△甘味噌/甜酱。
△辛味噌/咸黄酱。
△白味噌/浅色黄酱。
△あか味噌/深色黄酱。
△味噌の醸造/酿造黄酱。
(2)酱。(カニやエビの甲殻類にある。)
△かにの味噌/蟹酱。
(3)得意之处,自夸。(得意をする点。工夫を凝らして特色となる点。)
△手前味噌/自吹自擂。
△電気を使わない所が味噌です/不用电是其独到之处。
△味噌が腐る/ 嗓音太坏。
△味噌に入れた塩はよそへは行かぬ/多积一点德总不会吃亏。
△味噌の味噌臭きは上味噌にあらず/一瓶子醋不响,半瓶子醋晃荡。
[14]しかねる③【しかねる】
【他动·二类】
难以做到。(できかねる。することがむずかしい。)
△賛成しかねる。/难以赞同。
[15]客席◎【きゃくせき】
【名】
客人座席,宴席。(客の座るべき席。)
△客席に出て酌をする。/到宴席上给客人斟酒。
[16]グリーン車【ぐりーんくるま】
软席
グリーン車(グリーンしゃ、Green Car)とは、旧日本国有鉄道(国鉄)またはJRグループの旅客列車の車両のうち、普通車に比して乗客1人当たりの占有面積が広く、設備が豪華であるなどの理由で別途の料金がかかる特別車両の名称である。
[17]車掌◎【しゃしょう】
【名】
乘务员,列车员,车上售票员。(列車·電車·バスなどの車中で、車内の種々の事務を扱う者。)
△電車の車掌。/电车的车上售票员。
△車掌が検札にきた。/乘务员来查票。
△車掌室。/乘务员室。
[18]戸棚◎【とだな】
【名】
橱,柜。(三方を板などで囲い,中に棚を造って前面に戸を設けたもの。)
△衣裳戸棚。/衣柜。
△食器戸棚。/碗柜(橱)。
△食器を戸棚にしまう。/把餐器放到碗柜里。
△つくりつけの戸棚。/壁橱。
[19]捕まえる◎【つかまえる】
【他动·二类】
(1)[にぎる]抓住(……不放); [にぎってひく]揪住。
△チャンスを捕まえる。/抓住机会。
△袖をつかまえて放さぬ。/揪住袖子不放。
△給仕をつかまえてカクテルを注文する。/叫住服务员要鸡尾酒。
△その点をしっかりつかまえなくてはならない。/必须牢实地掌握这一点。
△犯人を捕まえる。/逮住犯人。
△猫を捕まえる。/把猫捉住。
△車を捕まえる。/叫住(行驶中的无客的出租)汽车。