1人きりで誰も話し相手[1] はない。読むか書くか、ぼんやりと部屋の前のいすに腰かけて[2] 山だの[3] 往来[4] だのを見ているか、それでなければ散歩で暮らしていた。散歩する所は町から小さい流れについて少しずつ上りになった道にいい所があった。山のすそ[5] を回っている辺りの小さなふち[6] になった所にやまめ[7] がたくさん集まっている。そしてなおよく見ると、足に毛の生えた大きな川がにが石のようにじっとしているのを見つけることがある。夕方の食事前にはよくこの道を歩いてきた。冷え冷え[8] とした夕方、寂しい秋の山峡[9] を小さい清い[10] 流れについていくとき考えることはやはり沈んだことが多かった。寂しい考えだった。しかしそれには静かないい気持ちがある。自分はよくけがのことを考えた。一つ間違えば、今ごろは青山[11] の土の下にあお向け[12] になって寝ているところだったなど思う。青い冷たい堅い顔をして、顔の傷も背中の傷もそのままで。祖父や母の死骸[13] がわき[14] にある。それももうお互いに何の交渉[15] もなく、——こんなことが思い浮かぶ。それは寂しいが、それほどに自分を恐怖[16] させない考えだった。いつかはそうなる。それがいつか?——今まではそんなことを思って、その「いつか」を知らず知らず遠い先のことにしていた。しかし今は、それが本当にいつか知れないような気がしてきた。自分は死ぬはずだったのを助かった、何かが自分を殺さなかった、自分にはしなければならぬ仕事があるのだ、――中学で習った『ロード.クライヴ[17] 』という本に、クライヴがそう思うことによって激励[18] されることが書いてあった。実は自分もそういうふうに危うかった[19] できごとを感じたかった。そんな気もした。しかし妙に自分の心は静まってしまった。自分の心には、何かしら死に対する親しみが起こっていた。
自分の部屋は2階で、隣のない、わりに静かな座敷だった。読み書き[20] に疲れるとよく縁[21] のいすに出た。わきが玄関の屋根で、それが家へ接続する所が羽目[22] になっている。その羽目の中にはち[23] の巣があるらしい。虎斑[24] の大きな太ったはちが天気さえよければ、朝から暮れ近くまで毎日忙しそうに働いていた。はちは羽目のあわい[25] からすり抜けて[26] 出ると、ひとまず[27] 玄関の屋根に下りた。そこで羽や触角[28] を前足[29] や後ろ足[30] で丁寧に整える[31] と、少し歩き回る[32] やつもあるが、すぐ細長い羽を両方へしっかりと張ってぶーんと飛び立つ[33] 。飛び立つと急に早くなって飛んでいく。植え込み[34] のやつでの花がちょうど咲きかけで、はちはそれに群がって[35] いた。自分は退屈すると、よく欄干[36] からはちの出入り[37] を眺めていた。
[1]話し相手④【はなしあいて】
【名】
谈话的对手、谈天的伙伴。(話合う相手。)
△友達の話し相手をする。/作朋友的聊天对象。
[2]腰かける④【こしかける】
【自动·二类】
坐下。(椅子·台などの上に腰をおろす。)
△まあゆっくり腰かけて話してください。/请坐下来慢慢谈吧。
[3]だの◎【だの】
【助】
……啦、……啦。(物事を列挙するのに用いる。)
△そばだのうどんだの、めん類なら何でも好きだ。/荞麦面条啦,小麦面条啦,凡是面条都喜欢。
△腹がすいただの疲れただのと言わないで少しは仕事をしなさい。/别说什么肚子饿了、累了之类的话,做点工作吧!
△彼はなんだのかんだのと理屈ばかりこねている。/他不管什么事都喜欢强词夺理。
[4]往来◎【おうらい】
【名】【自サ】
(1)往来,通行。(ゆきき。)
△人の往来が絶えない。/行人来往不绝。
△乗りものの往来がはげしい。/来往的车辆很多;车水马龙。
△車がひっきりなしに往来する。/车辆不断地来往。
△夜10時以後は往来禁止だ。/晚上十点钟以后禁止通行。
(2)道路;大街;马路;公路。(道路。通り。)
△家は往来からはすこしひっこんでいる。/房子从马路边稍微缩后一些。
(3)交际,来往;往返;萦回,徘徊。(互いにゆききすること。訪問。)
△子どものころの思い出が脳裏を往来する。/儿童时代的回忆在脑子里萦回。
[5]裾◎【すそ】
【名】
(1)衣服的下摆。(衣服の下の縁。)
△着物のすそを捌く。/梳理和服的下摆。
△裾がはだける。/衣服的下摆张开。
(2)山麓。(山のふもと。)
(3)下端,末端。(物の端。また、末や下の部分。)
(4)河的下游。(川の下。)
[6]縁②【ふち】
【名】
(1)边,缘;框;檐;旁侧。(物の端の、他と境界になる部分。へり。はし。また、そこを取り囲む枠など。)
△がけの縁から転げ落ちる。/从悬崖的边缘〔边上〕滚下来。
△縁の広い帽子。/宽檐帽子。
△池の縁。/池塘(水)边。
△眼鏡の縁。/眼镜框。
△黒縁の眼鏡。/黑框眼镜。
△縁をつける。/镶边。
△道路の縁を通る。/走路边上。
△彼は疲労のため目の縁が黒い。/他因疲劳眼圈黑了。
△湖の縁に立つ。/站在湖边。
[7]山女◎【やまめ】
【名】
(1)马苏大麻哈鱼。(サケ科の小形淡水魚)
(2)山中女妖(やまうば)
[8]冷え冷え◎【ひえびえ】
【副】【自动·三类】
冷冰冰,凉飕飕,心里孤寂,空虚。(冷えきっているさま。非常につめたく感じられるさま。むなしくさびしいさま。関係などの、つめたくよそよそしいさま。)
△冷え冷えした心境。/空虚的心境。
[9]山峡【さんきょう】
【名】
山峡;峡谷(同はざま)
[10]清い②【きよい】
【形】
(1)清澈,不混浊。(濁りやけがれがない。きれいである。すがすがしい。)
△清い水。/清水。
△清い流れ。/清流。
(2)纯洁,洁白。(世俗的なよごれにおかされず純粋である。)
△清い愛。/纯洁的爱。
△清い心。/纯洁的心。
(3)纯洁,清白,清纯。无涉物欲、肉欲。(物欲や肉欲とかかわりがない。)
△清い交際。/纯洁的交往。
(4)干净,痛快。干脆而爽快。(未練がなくさっぱりしている。いさぎよい。)
△ 過去のことは清く水に流す。/过去的事干脆付诸流水。
[11]青山青山①【せいざん】
【名】
(1)青山。(草木が青々と茂っている山。青嶺。青々とした山。)
△人間いたるところ青山あり。/人间到处有青山。
(2)坟地。(骨を埋める土地。)
[12]仰向け◎【あおむけ】
【名】
仰起。(上を向かせること。また、上を向いた状態。)
△ 仰向けに置く。/向上放置。
[13]死骸◎①【しがい】
【名】
尸体,尸首,遗骸。(死骸,屍骸。人または動物の死んだ体。死体。なきがら。しかばね。)
△鳥の死骸。/鸟的尸体。
[14]脇②【わき】
【名】
(1)腋下;胳肢窝。(胸の左右の側面の、腕が体から分かれ出るあたり。脇の下。)
(2)侧面;旁边。(もののかたわら。横。そば。)
△先生の脇に座る/坐在老师旁边。
(3)偏离主题。(本筋を外れる方。主要でない方。)
△話を脇にそらす/把话岔开。
(4)其次。(二の次。)
△その件は脇へ置く/把那件事先放一放。
[15]交渉◎【こうしょう】
【名·他动·三类】
(1)谈判;交涉(特定の問題について相手と話し合うこと。掛け合うこと)。
△予備交渉/准备谈判;预备谈判。
△交渉による解決/通过谈判解决。
△交渉を続ける/继续谈判。
△交渉を決裂させる/使谈判破裂。
△交渉を打ち切る/停止谈判。
△交渉がまとまる/达成协议。
△いつでも交渉に応ずる用意がある/随时准备谈判。
△おやじと直接交渉する/和爸爸直接交涉。
(2)关系;联系(交際や接触によって生じる関係。かかわり合い。関係)。
△彼と交渉がある/和他有联系〔关系)。
△没交渉/没关系。
[16]恐怖①◎【きょうふ】
【名·自动·三类】
恐惧,恐怖。(恐ろしく感じること。)
△恐怖に襲われる。/感到恐怖;害怕。
△恐怖の色をみせる。/现出恐怖的神色。
△恐怖の念を抱く。/抱有恐惧之感。
△恐怖におののく。/吓得发抖;惊恐万状;胆战心惊。
△恐怖と不安にかられる。/陷于惶恐不安。
[17]クライヴ【Robert Clive】
イギリスの政治家?軍人?東インド会社書記として渡印?1757年ベンガル大守およびフランスの連合軍をプラッシーに破り?イギリスのインド支配の基礎を定めた?(1725~1774)
[18]激励◎【げきれい】
【名·他动·三类】
激励,鼓励;鼓舞;鞭策。(はげまして気を引き立たせること。ふるい立たせる。べんたつする。)
△激励のことば。/激励的言词。
△もっと努力するよう激励する。/鼓励更加努力。
△自らを激励する。/鞭策自己。
[19]危うく◎【あやうく】
【副】
(1)好容易,好不容易。〔どうやら。〕
△危うく汽車に間に合った。/好容易赶上了火车。
△危うく難を免れた。/幸免于难。
(2)险些,差一点儿,几乎。〔もうすこしで。〕
△危うく乗りすごすところだった。/差一点儿坐过了站。
△危うく死ぬところだった。/险些丧了命。
[20]読み書き③【よみかき】
【名】
读书写字,学问。(文字や文章を読むことと、書くこと。)
△読み書きを学ぶ。/学习书写。
[21]えん【縁】
(1)〔関係?結びつき〕关系guānxi,因缘yīnyuán.
▲ 彼とは~がない/和他没关系.
▲ ~が深い/关系深.
▲ ~もゆかりもない/毫无háowú关系;非亲非友.
▲ 学問には~がない/与学问没缘.
▲ 彼とは~が遠くなった/和他(关系)疏远shūyuǎn了.
▲ ~に頼って職を求める/通过关系找工作.
(2)〔めぐり合わせ,きっかけ〕缘yuán,缘分yuánfèn,机缘jīyuán.
▲ 妙な~で彼に出会う/由于一个奇妙qímiào的机缘遇上他.
▲ ご~があったらまたお目にかかりましょう/假若jiǎruò有缘,还会见面.
▲ これも~がなかったと思ってあきらめよう/事到如今,只当zhǐ dàng没有缘分就死了心吧.
▲ 彼と一緒になったのも何かの~だ/和他结婚也算一种缘分.
(3)〔親族関係〕[血のつながり]血缘xuèyuán;[夫妻の縁]姻缘yīnyuán.
▲ 親子の~/父子〔母女〕关系.
▲ ~につながる/有血缘关系;有亲戚关系.
▲ 兄弟の~を切る/断绝兄弟关系.
▲ 顔は似ているが,彼とは何の~もない/长相zhǎngxiàng很像,但彼此之间没有丝毫血缘关系.
(4)〔仏教の〕缘分,机缘.
▲ 前世の~/前世之缘.
(5)〔座敷外部の板敷き部分,椽〕廊子lángzi,套廊tàoláng.
▲ ~の下/屋檐下.
▲ ぬれ~/(檐下yánxià的)露天廊子.
[22]羽目②【はめ】
【名】
(1)板壁,木墙板。建筑物等的镶木板处,平贴木板的部位。亦指镶上去的木板。(建築で、板を平らに張ったもの。布羽目·太鼓羽目などがある。)
(2)窘况、困境、境地。令人讨厌的、或被人追逼的状况、事态。((「破目」とも書く)成り行きから生じた困った状況。)
△世話役を引き受ける羽目になった。/被迫当上了干事。
[23]蜂◎【はち】
【名】
蜂。(昆虫の一種。)
△蜂に刺された。/被蜂子蜇了。
△蜂を1箱飼う。/养一箱蜂。
△蜂がぶんぶんいう。/蜂子嗡嗡地叫。
[24]虎毛◎【とらげ】
【名】
虎皮似的毛色,虎皮似的花纹,虎皮色。(虎のように、黄褐色の地に太く黒いしまのある毛並みや模様。)
[25]あわい【間】アハヒ
①物と物?時と時とのあいだ?ま?すきま?あいま?伊勢物語?伊勢?尾張の―の海づら?
②物と物?また?人と人との組合せ?多く衣装の配色や人間関係にいう?釣合い?間柄?源氏物語桐壺?あらまほしき御―どもになむ?
③おり?都合?形勢?平家物語11?―悪しかりければ引くは常の習ひなり?
[26]すり抜ける④◎【すりぬける】
【自动·二类】
擦错去,混过去。(触れるか触れないかの勢いで通り抜ける;何かとうまくごまかしてのがれる。)
△オートバイが狭いところでもすり抜けられて便利です。/即使在很窄的地方摩托车也能穿过去,非常便利。
[27]一先ず③【ひとまず】
【副】
暂且,姑且。(なにはともあれ。とにかく。)
△これで一先ず安心だ。/这样就可以暂时安心了。
[28]触角◎【しょっかく】
【名】
触角,触须。(昆虫などの節足動物の頭部にある触覚および嗅覚にあずかる器官。形状は糸状·こん棒状·くし状など種類によって異なる。)
[29]前足◎①②【まえあし】
【名】
(兽类的)前足;前肢。(獣類の前方の両足。または足を前後に開いたときの、前の方の足。)
△前足を上げる。/提前足。
△前足で地面をかく。/用前脚扒地。
[30]後ろ足◎③【うしろあし】
【名】
(1)后腿。(四つ足動物の後ろの足。)
△後ろ足を踏む。/踌躇不前;退缩。
(2)转过身去要跑。(きびすを返して、逃げようとすること。)
[31]整える④③【ととのえる】
【他动·二类】
(1)弄齐。整理。整顿。(きちんとした状態にする。)
△服装を整える。/整理服装。
(2)备齐。备至。准备。(足りないものがないように揃える。)
△必要な種類を整える。/准备好必需的种类。
(3)谈妥。办妥。使达成。(まとめる。成立させる。)
△交渉を整える。/达成协议。
[32]歩き回る⑤【あるきまわる】
【自五】
到处走。(あちらこちら歩く。)
△室内を歩き回る。/在屋里到处走。
[33]飛び立つ③【とびたつ】
【自五】
(1)飞上天空,飞起,起飞,飞去。(空中に飛び上がる。飛んでそこを去る。)
△飛行機が飛び立つ。/飞机起飞。
(2)高兴得要跳起来。(そわそわする。)
△合格と聞いて飛び立つばかりと喜ぶ。/听到考上了,高兴地要跳起来。
[34]植え込み【うえこみ】
(庭园中栽植的)树丛,灌木丛,花草丛.
[35]群がる③【むらがる】
【自动·一类】
聚,聚集。(多くのものが一つ所に集まる。むれをなす。)
△群がって襲いかかる。/合伙袭击。
△人々は出口にいっせいに群がった。/人们一下子都聚到出口。
△砂糖にありが群がる。/蚂蚁聚集在糖上。
△広場には人が群がっていた。/广场上聚集了许多人。
[36]欄干◎【らんかん】
【名】
栏杆,扶手。(橋や縁側などのへりに設けた腰の高さほどの柵状の工作物。人の墜落を防ぎ、また装飾とする。「闌干」とも書く。おばしま。てすり。)
△欄干のない橋。/没有栏杆的桥。
[37]出入り◎【ではいり】
【名·自动·三类】
(1)出入。(でいり。)
△人の出入りが激しい。/人的出入很频繁。
△この家に自由に出入りすることを許されている。/准许自由出入这所房子。
△無用の者は出入りしてはいけない。/闲人免进。
(2)出入,差额。(数量の過不足。)
△人数は数名出入りがあるかもしれない。/人数上也许有几个人的出入。
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足に毛の生えた大きな川がにが石のようにじっとしている 川字后面缺了一个字就是;蟹
应该是没缺的,川がに→川蟹 这样