流れる水と、噴き上げる水。
そういえばヨーロッバでもアメリカでも、町の広場にはいたるところにみごとな噴水があった。ちょっと名のある庭園に行けば、噴水はさまざまな趣向[1] を凝らして[2] 風景の中心になっている。有名なローマ郊外[3] のエステ家の別荘[4] など、何百という噴水の群れ[5] が庭をぎっしり[6] と埋め尽くして[7] いた。樹木も草花[8] もここでは添えもの[9] にすぎず、壮大[10] な水の造型[11] がとどろき[12] ながら林立して[13] いるのに私は息をのんだ。それは揺れ動く[14] バロック[15] 彫刻[16] さながら[17] であり、ほとばしる[18] というよりは、音をたてて空間に静止[19] しているように見えた。
時間的な水、空間的な水。
そういうことをふと[20] 考えさせるほど、日本の伝統の中に噴水というものは少ない。せせらぎを作り、滝[21] をかけ、池を掘って水を見ることはあれほど好んだ日本人が、噴水の美だけは近代に至るまで忘れていた。伝統は恐ろしいもので現代の都会でも、日本の噴水はやはり西洋のものほど美しくない。そのせいか東京でも大阪でも、町の広場はどことなく間が抜けて、表情に乏しいのである。
[1]趣向◎【しゅこう】
【名】
(1)趣向。意向,旨趣。(おもむき。趣意。)
△御趣向了承しました。/尊意敬悉。
△趣向を変える。/改变主意。
(2)设计。为出情趣和韵味而花费心思。(面白みや趣を出すための工夫。)
△あっと言わせる趣向だ。/一鸣惊人的方案。
△趣向を凝らす。/苦心设计。
(3)趣向。歌舞伎、净琉璃作者在构思方面苦苦思索所下的工夫。(歌舞伎·浄瑠璃の作者が、構想の上で凝らして盛り込む劇的工夫。)
(4)趣向。俳谐中句子的构思。(俳諧で、句の構想。)
[2]凝らす②【こらす】
【他动·一类】
凝;集中(意識をひとつの物事に集中させる。そそぎこむ)。
△瞳を凝らす/凝眸;目不转睛地(看)。
△耳を凝らす/洗耳恭听。
△心を凝らす/凝神;聚精会神。
△装いを凝らす/细心打扮。
△工夫を凝らす/绞尽脑汁找窍门;费尽心机;悉心钻研。
△趣向を凝らす/精心结构;独出心裁。
[3]郊外①【こうがい】
【名】
郊外,城外。(都市に隣接した地域。市街地周辺の田園地帯。)
△郊外の住宅地。/郊外住宅区。
△郊外に住む。/住在城外。
[4]別荘③【べっそう】
【名】
别墅,园林住宅。(避寒·避暑·余暇利用のために、本宅とは別の所に建てた家。)
△軽井沢に別荘を建てる。/在轻井泽建筑别墅。
△別荘番。/看(守)别墅的。
[5]群れ②【むれ】
【名】
群,伙。(あつまり。群がり。仲間。)
△人の群れ。/人群。
△羊の群れ。/羊群。
△小さな魚が群れになって泳いでいる。/小鱼成群地游着。
△デモ隊の群れに巻き込まれる。/被卷进示威的人群里。
△暴力団の群れに投ずる。/投入暴力集团之中。
△群れ生活。/群居生活。
[6]ぎっしり③【ぎっしり】
【副】
满满的。(ものがすきまなく、いっぱいにつまっているようす。)
△かばんはぎっしり詰まっている/挎包装得满满的。
△会場は人でぎっしりだ/会场挤满了人。
△ぎっしり詰まったスケジュール/排得满满的日程表。
△両側に家がぎっしり立ち並んでいる/两旁房屋鳞次栉比。
[7]埋め尽くす④【うめつくす】
【他动·一类】
不留缝隙,全部盖上,全部埋上。(すっかり埋める。ある場所を何かでいっぱいにする。)
△競技場は観客で埋め尽くされている。/观众挤满了整个竞技场。
[8]草花②【くさばな】
【名】
(1)草花,花,草本花。〔花の咲く草。また、草に咲いている花。〕
△草花を鉢に植える。/把花栽在花盆里。
(2)日本地名。(日本の地名。 東京都あきる野市。)
[9]添え物【そえもの】
(1)〔つけ加えた物〕附加物;附录;[抱き合わせ]搭配物.
(1)〔つけ加えた物〕附加物;附录;[抱き合わせ]搭配物.
(2)〔景品〕赠品.
(3)〔つまみ〕(为色、香、味而添饰的)配菜.【名】
[10]壮大◎【そうだい】
【形動】
雄壮,宏大。(他に肩を並べるものが余り無いほど規模が大きい様子。)
△壮大な建て物。/雄伟的建筑物。
△その構想は実に壮大だ。/那个构想实在宏大。
[11]造型◎【ぞうけい】
【名】【自サ】
造型。(芸術作品としての形を作ること。)
△造形美術。/造型艺术。
[12]轟き◎④【とどろき】
【名】
轰鸣,轰响。(とどろくこと。また、その音。)
[13]林立【りんりつ】
【名】【自动·三类】
林立。(林の木のように多くの物が並びたつこと。)
△高層ビルが林立する。/高楼林立。
[14]揺れ動く④【ゆれうごく】
【自动·一类】
(1)左右摇摆。(物がゆらゆらと動く。)
△葦が風に揺れ動く。/芦苇随风摇曳。
(2)不断变化。(絶えず動揺し、変化する。)
△揺れ動く世界情勢。/不断变化的世界情势。
△心が揺れ動く。/心不断变化。
[15]バロック②【ばろっく】
【名】【法】baroque
(16世紀末から18世紀に欧州で流行した芸術様式。均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、自由な感動表現、動的で量感あふれる装飾形式が特色。同じ傾向の音楽·文学の様式をもいう。)
△バロック式。/巴洛克式。
[16]彫刻◎【ちょうこく】
【名·他动·三类】
雕刻。(ほりきざむこと。造形美術の一つ。木·石·金属などに文字や模様を刻み、または物像などを立体的にほりきざむこと。また、ほりきざんだもの。丸彫·浮彫·透かし彫がある。)
△氷の彫刻。/冰雕。
△ギリシア彫刻。/希腊雕刻。
△大理石で像を彫刻する。/用大理石雕刻像。
△彫刻的な顔立ち。/轮廓清晰的脸。
△彫刻家。/雕刻家。
△彫刻師。/雕刻匠; 雕刻工。
△彫刻芸術。/雕刻艺术。
△彫刻版。/雕刻版。
△彫刻物。/雕刻品。
△彫刻刀。/雕刻刀。
[17]宛ら◎【さながら】
【副】
宛如,好像,如同。(非常によく似ているさま。まるで。そっくり。)
△宛ら滝のような雨。/宛如瀑布一样的雨。
[18]迸る④【ほとばしる】
【自动·一类】
迸出,喷出,溅出。(中にたまっていた液状のものが内部の圧力に押されてひっきりなしに噴出する。)
△鮮血が迸る。/鲜血四溅。
[19]静止◎【せいし】
【名】【自サ】
静止。(動きを止めた状態を保ち、前と同じ位置に在ること。)
△静止状態。/静止状态。
△静止衛星。/同步卫星。
[20]不図◎①【ふと】
【副】
偶然,一下,突然,忽然。(思いがけなく、突然起こるさま。不意に。たやすく。簡単に。動作の素早いさま。)
△ふと思い出す。/偶然想起。
△不図した。/一点点,偶然.
△不図ふりかえる。/一回头。
[21]滝◎【たき】
【名】
瀑布。(高いがけの上から流れ落ちる水の流れ)
△滝が落ちる/瀑布流下。
△そのがけには高さ20メートルの滝がかかっている/从那峭壁垂下高达二十米的瀑布。