(あ、やってますなア)
ぐらいにしか思わない。あんなもの、三十秒以上眺めたことはない。
日本海[1] だって、おおかた[2] こんなものだろうとタカをくくって[3] いる。全然期待がない。見る前から、何も報告することがないんじゃないかと心配している。それで、途中で厭になって逃げて帰ってくるといけないからと、一計を案じて[4] 、タフ[5] な友人を一人連れて行くことにする。
昔、テレビ局で一緒に仕事をしていた頃からの永年[6] の飲み友達[7] で、気心[8] の知れたM君というのに電話そて、「山陰へ二、三日、カニを食いに行く気はないかね?」と持ちかける[9] 。
「君は何もしなくていいのだ。毎晩温泉に入って、酒を飲んでりゃあいいのだ。」
などとうまいことを言って、その実、彼をカメラマン兼レンタカー[10] 用のお抱え[11] 運転手として活用[12] しようという悪い魂胆[13] である。ワニザメ[14] をだます因幡の白兔[15] みたいなものだ。
来て見れば、日本海は、荒海だった――
これでは俳句としても字あまり[18] 、結論としても馬鹿馬鹿しすぎて話にならないが、私として実感だから致し方[19] ない。それも遠目[20] に見ての印象ではない。二時間近く小船の上で揉みに揉まれて、いい加減うんざり[21] したあげく[22] の正直な感想だ。
前日の午後京都を出て、山陰本線[23] のジーゼル[24] カーと北上[25] 、まだうっすら[26] と、あるいは斑[27] に雪を残した但馬[28] の山あい[29] を縫って行くと、城之崎[30] あたりで日が暮れかかる。それからトンネルを抜けて、また暫く行ったところでようやく日本海が姿を見せる。地図でいえば竹野[31] 浜のあたり、山陰海岸国立公園のただなか[32] である。
[1]日本海【にほんかい】
〈地〉日本海R.【名】
日本海
[2]大方◎【おおかた】
【名·副】
(1)大部分,多半,大概,大体。(物事のほぼ全体。大体。大部分。あらまし。)
△出席した人の大方は学生だった。/出席的人大部分是学生。
△そのことの大方はもうわかっている。/那件事的大体情况已经知道了。
△大方の話は王さんからうかがいました。/大致的情况已听王同志说了。
(2)一般人,广泛的人们,大家,诸位。(世間一般。多くの人。)
△大方の考えがそっちへ向いている。/一般人的想法倾向那方面。
△大方の読者のご叱正(しつせい)を請う。/请诸位读者指正。
(3)大概,大约,大致,差不多。(たぶん·ほとんど。)
△大方そうだろう。/大概是那样吧。
△用意した金は大方使ってしまった。/准备的钱差不多花光了。
[3]高を括る【たかをくくる】
【惯用语】瞧不起,轻视,不屑一顾。(その程度を予測する。大したことはないと見くびる。)
△忘れないだろうと高を括って忘れてしまった。/觉得不能忘,还是给忘了。
[4]一計を案じる【いっけいをあんじる】
【惯用语】计上心头,心生一计。(ある目的を達する ための策を思いめぐらす。)
△長っ尻の常連に悩む女将は、客を笑わせて帰す一計を案じる。/对于一些赖着不走的常客,老板娘想出了让客人笑着离开的方法。
[5]タフ①【たふ】
【形动】【英】
顽强,坚强,倔强,不屈,坚韧的(頑強で,少しくらいのことには参らないさま)。
△まったくタフな男だ。/真是个硬汉子。
[6]永年◎【ながねん】
【名】
多年;漫长的岁月。(長い年月の間。多年。また、久しくそこにいること。)
△永年の努力。/多年的努力。
[7]飲み友達【のみともだち】
酒友.
[8]気心②【きごころ】
【名】
性情,脾气,性格。(その人に備わっている気質や考え方。気だて。)
△気心の知れた仲だ。/彼此都知道脾气;我们是对脾气的朋友。
△彼は気心の知れない人だ。/摸不准他的性情。
[9]持ちかける④【もちかける】
【他动·二类】
开口,说起,提出,提供。(相談などを切り出す。誘いかける。)
△子育てに悩んだら周りの人に相談を持ちかけるとよい。/在育儿过程中出现烦恼时,要积极和周围人商量。
[10]レンタカー③【れんたかあ】
【名】【英】rent-a-car
租赁用汽车。(貸し自動車。)
△レンタカーを借りる。/租出赁汽车。
△レンタカー業者。/出赁汽车行。
[11]お抱え◎【おかかえ】
【名】
私人雇佣的、专聘的。(個人的に人を雇っていること。また、その人。かかえ。)
△お抱えの弁護士。/专聘的律师。
[12]活用◎【かつよう】
【名·サ変自他】
(1)有效地利用;正确地使用。实际应用。(物の性質、働きが十分に発揮できるように使うこと。)
△物資の活用をはかる/设法有效地使用物资。
△廃物を活用する/利用废物。
△人材を活用する/正确地使用人材。
(2)词尾变化;活用。(文法で、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞が働きに応じて語型が変化すること。)
△動詞の五段活用/动词的五段活用。
△助動詞も活用する/助动词也有词尾变化。
[13]魂胆①◎【こんたん】
【名】
计谋,阴谋,企图。(心中ひそかに考える計画。)
△腹になにか魂胆があるにちがいない。/心里一定怀着什么阴谋诡计。
△なにをやらかす魂胆だろう。/到底在企图干什么·
[14]鰐鮫②【わにざめ】
【名】
〈动〉大鲨鱼。(性質の荒いサメの俗称。)
[15]いなば‐の‐しろうさぎ【因幡の素兎】
出雲神話の一つ?古事記に見える?淤岐島おきのしまから因幡国に渡るため?兎が海の上に並んだ鰐鮫わにの背を欺き渡るが?最後に鰐鮫に皮を剥ぎとられる?苦しんでいるところを?大国主神に救われる?
[16]斯くして【かくして】
【副】
如斯『書』,如此,这样(一来)。(こうして。このようにして。)
△一日は斯くして終わった。/一天就这样结束了。
△斯くして、新しい生活が始まった。/就这样,新生活开始了。
[17]無粋◎【ぶすい】
【名·形动】
不风流,不风雅,不懂风趣。(人情の機微を解さないこと。特に,男女間の情愛の微妙さがわからないこと。また,そのさま。 情緒のないこと。また,そのさま。)
△無粋な男。/不解风情的男人。
△無粋な建物。/不风雅的建筑物。
[18]余り◎【あまり】
【名】
(1)剩余,余剩,剩下。(余ったもの。残り。)
△生活費の余りを貯金する/把生活费的余额'存起来。
△日数の余りがいくらもない/剩下的日数不多了。
(2)剩下的数,余数。(数の残り。)
△8を3で割ると余りは2/八除以三余数是二。
(3)过度……的结果,因过于……而……。(事の程度が過ぎたための結果。)
△喜びの余り声をあげる/因过于高兴而欢呼雀跃。
△傷心の余り病気になる/因过于伤心,生起病来。
△余りうれしくない/不怎么高兴;不太高兴。
△余り食べたくない/不大想吃。
[19]致し方◎【いたしかた】
【名】
方法,办法。(「しかた」の改まった言い方。する方法。)
△それは致し方がない。/这也是没有办法的;这也是无可奈何的。
[20]遠目◎【とおめ】
【名】
(1)远望,从远处看。(遠くの方から見ること。また、遠くから見たようす。)
△夜目遠目傘の内。/灯下但见颜如玉。
(2)远视眼。(遠方までよく見える目。遠視。)
△遠目がきく。/看远处一清二楚。
[21]うんざり③【うんざり】
【副·サ変自】
腻,厌腻,厌烦,(兴趣)索然。(すっかり飽きて嫌になる様。)
△うんざりする仕事/腻人的活儿。
△考えただけでうんざりする/仅仅一想就够烦的。
△もうそれにはうんざりした/对那已经腻了。
△長ったらしい話で人をうんざりさせる/废话连篇使人厌腻。
[22]挙句◎【あげく】
【名】
(1)结束句。(連歌·連句の最後の七·七の句。)
(2)结果。(結局。)
△口論のあげくつかみあいになった。/争吵一阵,最后扭打起来了。
△いろいろ考えたあげく彼と絶交することにした。/再三考虑之后决定同他绝交。
△あげくのはてが刑務所入り。/到头来进了监狱。
△挙句のはて。/结果,到头来;到了最后。
△挙句のはてが刑務所入り。/到头来进了监狱。
[23]本線◎【ほんせん】
【名】
〈铁〉干线。(鉄道路線·送電線などの、主幹となる線。)
△東海道本線。/东海道干线。
[24]ジーゼル【ジーゼル】
柴油(发动)机;(狄塞尔)内燃机
[25]北上◎【ほくじょう】
【名·自サ】
北上,北进。(北に向かって進むこと。)
△台風が北上する。/台风北上
[26]うっすら③【うっすら】
【副】
(1)稍微,隐约。〔ほのかに。〕
△うっすら見える。/隐约可见。
△もやがうっすらただよう。/烟雾弥漫;雾霭'沉沉。
△うっすら目を開く。/把眼睛微微睁开。
(2)薄薄地。〔すこし。〕
△雪がうっすら積もる。/薄薄地积下一层雪。
△うっすら化粧した顔。/薄施脂粉的脸。
[27]斑③【はだれ】
【名】
斑。(雪がはらはらと降るさま。また、うっすらと一面に積もるさま。はだら。)
△斑雪。/薄雪,小雪。
[28]但馬【たじま】
【日本地名】
[29]山間②【やまあい】
【名】
山间。(山と山との間。やまかい。さんかん。)
△山間の小さな村。/山间的小村子。
[30]城之崎【きのさき】
【日本地名】
[31]竹野【たかの】
【日本地名】
[32]直中②◎【ただなか】
【名】
(1)中间,正中。(まん中。)
△群衆の直中に割り込む。/挤入人群;融入人群。
(2)正当……之际。(まっ最中。まっ盛り。)
△争いの直中に割って入る。/硬参与争论。