とはいえ、私は、ここで仮面の美醜[1] を論じよう[2] としているのではない。私が力点[3] を置いて考えようとしているのは、人類文化における仮面の普遍性なのである。古今[4] 東西を問わず人間のいるところ仮面というものは必ず存在している。仮面の無い文化は一つもなく、更に言うなら、仮面という高度の象徴物の発明は、ひょっとすると、人類を他の動物から分かつ[5] 重大な指標[6] の一つなのではないか、とも思われるのである。
実際、文明史を振り返ってみるなら、さまざまな異形[7] の仮面は古代[8] 、いや、それ以前から作られていたようである。少なくとも、今日の地球の上でなおかすかに残っている石器[9] 時代の生活をしている人々の姿が、我々のかつての祖先の姿と似ているとするならば、人类と仮面との付き合いは十万年以上も続いているはずなのだ。それは、ハーバート[10] ?リードなども言うように、人類史におけるもっとも古い象徴的造形としてとらえることができるのかもしれない。いわゆる古代文明の成立するはるか以前から、人間は仮面というものを発明し、それをかぶり、そこになんらかの――というよりは極めて重大な――意味を求めていたのである。いったい、なぜ、人は仮面などという奇想天外[11] なものを作り、かつ、かぶるのか。
一般的に言って、仮面というものは多かれ少なかれ[12] 宗教的な起源[13] を持っているようである。例えば、お神楽[14] のようなものを考えてみよう。お神楽というのは、その言葉からも分るように、神を喜ばせるための音楽であり、舞である。そこで音楽を奏で[15] 、舞う人たちは、人間であって同時に神の世界に近づいた人たちである。その人たちは人間のままの姿であってはいけない。少なくとも、ふだんの姿ではいけない。神と近づき、或は神の意志によって動くこれらの人たちは、それにふさわしく自分を変えなければならないのである。
[1]美醜◎【びしゅう】
【名】
美丑,妍媸。(うつくしいことと、みにくいこと。)
△外観の美醜は問わない。/不问外观的美丑。
△善悪美醜。/善恶美丑。
[2]論じる◎③【ろんじる】
【他动·二类】
论述,讨论。(「論ずる」の上一段化。互いに意見をたたかわす。論争する。また、言い争う。)
△事の是非を論じる。/争论事情的是非。
△現実を無視して論じるのは無意味だ。/无视现实争论是没有意义的。
[3]力点◎③【りきてん】
【名】
(1)〈理〉力点。(てこの原理を応用した道具で物を動かすときに力を加える所。)
(2)重点,着重点。(重視する所。主眼。)
△語学に力点を置いている。/将重点放在外语学习上。
[4]古今①【ここん】
【名】
古今,从古至今。(昔と今。昔から今にわたってならびないこと。)
△古今に通じる。/博古通今。
△古今に例をみない。/史无前例。
△古今にその比をみない。/古今无与伦比。
△古今東西。/古今中外。
[5]分かつ②【わかつ】
【他五】
(1)分,分开,隔开。(「分ける」の、少し改まった言い方。)
△たもとを分かつ。/分别,分离,断绝关系。
(2)分辨,辨别。(いい悪いを考えて決める。)
△是非を分かつ。/分辨是非。
[6]指標◎【しひょう】
【名】
(1)指标,目标,标志,标识。(物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの。)
△景気指標。/景气指标。
△生活水準の指標。/生活水平的指标。
△砂糖の消費量は文化程度の指標になるといわれる。/据说糖的消费量是文明程度的标识。
(2)〈数〉指标,特征标。
[7]異形◎【いぎょう】
【名】【形动】
奇形怪状『成』,妖魔鬼怪。(普通とは違う怪しい形·姿をしていること。また、そのさま。)
△異形のいでたち。/希奇古怪的打扮。
[8]古代①【こだい】
【名】
古代。(古い時代。)
△古代の遺物。/古代的遗物。
△古代風。/古代的风格,古装。
△古代模様。/古代的花样。
△古代紫。/灰紫色,紫红色。
[9]石器【せっき】
石器
[10]ハーバート【ハーバート】
男人名
[11]奇想天外②◎【きそうてんがい】
【名】【形動】
异想天开
[12]多かれ少なかれ⑦【おおかれすくなかれ】
【连语】
或多或少,多多少少,多少有点。(多い少ないという違いはあっても。多少なりとも。いくらかでも。)
△戦争では全国民が多かれ少なかれ被害をこうむった。/战争,全体国民多多少少总要蒙受其害。
[13]起源①【きげん】
【名】
起源。事物发生的根源,起因,根源,起初。(物事の起こるもと。根源。)
△人類の起源は100万年以上も前のことといわれる。/人类的起源,据说是一百多万年以前的事。
△日本語の起源をたずねる。/追寻日语的起源。
[14]お神楽【おかぐら】
(1)〔建て物の〕在平房上增建(的)二楼.
(1)〔建て物の〕在平房上增建(的)二楼.
(2)〔かぐら〕祭神的音乐和舞蹈.
[15]奏でる③【かなでる】
【他动·二类】
奏,演奏。(演奏する。手足を動かして舞う。)
△一曲奏でる。/演奏一曲。
△琴を奏でる。/弹筝。
正文后面是不是少了五段左右呢
你猜对了,的确有不少错误,我一般只保证生词不要错,其他的就不认真了~