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- ぼくはこの落葉樹(らくようじゅ)の恩恵(おんけい)[1] を自分(じぶん)の家(いえ)で年々(ねんねん)実感(じっかん)しつづけている。両親(りょうしん)の家(いえ)の庭先(にわさき)に南北(なんぼく)[2] に細長(ほそなが)く建(た)っているわが家(や)は南端(なんたん)[3] がほとんど敷地(しきち)[4] 境界(きょうかい)[5] に接(せっ)し、その面(めん)に庭(にわ)を持(も)たないのだが、さいわい隣地(りんち)[6] は公園(こうえん)で、その落葉樹(らくようじゅ)の木(き)立(た)ちが陽(ひ)当(あ)たり調整(ちょうせい)効果(こうか)をもたらしてくれる。夏(なつ)はうっそう[7] と茂(しげ)る葉(は)が室内(しつない)を緑(みどり)の反映(はんえい)でほの暗(ぐら)く満(み)たし、冬(ふゆ)は枯(か)れ枝(えだ)を透(す)かしてくる低(ひく)い陽射(ひざ)し[8] が奥(おく)までさしこんで、晴(は)れた日(ひ)の昼過(ひるす)ぎまでは暖房(だんぼう)も要(い)らないほど暖(あたた)かい。
- ここまで記(しる)して出(で)たように、庭(にわ)に四季(しき)の反映(はんえい)を強(つよ)く求(もと)め、それを「眺(なが)める」ことに庭(にわ)の最大(さいだい)の意義(いぎ)を見出(みいだ)すのは、どうも日本人(にっぽんじん)特有(とくゆう)の庭園(ていえん)観(かん)であるようだ。いかに私的(してき)に囲(かこ)われていようと、また人(ひと)の手(て)が加(くわ)えられていようと、日本人(にっぽんじん)が庭(にわ)に求(もと)めるのは自然(しぜん)のミニチュア[9] であり、その自然(しぜん)志向(しこう)[10] は石(いし)を山(やま)に、砂(すな)[11] を水(みず)に見立(みた)てた枯山水(かれさんすい)[12] のような屈折(くっせつ)[13] した操作(そうさ)[14] を含(ふく)む庭(にわ)まで一貫(いっかん)[15] している。これは結局(けっきょく)、自然(しぜん)を克服(こくふく)[16] すべき対象(たいしょう)としてではなく、親和(しんわ)[17] 的(てき)な環境(かんきょう)としてとらえる日本人(にっぽんじん)自然(しぜん)観(かん)に由来(ゆらい)[18] するもので、むろんぼくの雑木林(ぞうきばやし)[19] 好(この)みもその影響(えいきょう)下(か)にあると言(い)えるだろう。
- (『住(す)まい方(かた)の演出(えんしゅつ)』中央公論社(ちゅうおうこうろんしゃ)より。一部(いちぶ)削除(さくじょ)あり)
ぼくはこの落葉樹の恩恵[1] を自分の家で年々実感しつづけている。両親の家の庭先に南北[2] に細長く建っているわが家は南端[3] がほとんど敷地[4] 境界[5] に接し、その面に庭を持たないのだが、さいわい隣地[6] は公園で、その落葉樹の木立ちが陽当たり調整効果をもたらしてくれる。夏はうっそう[7] と茂る葉が室内を緑の反映でほの暗く満たし、冬は枯れ枝を透かしてくる低い陽射し[8] が奥までさしこんで、晴れた日の昼過ぎまでは暖房も要らないほど暖かい。
ここまで記して出たように、庭に四季の反映を強く求め、それを「眺める」ことに庭の最大の意義を見出すのは、どうも日本人特有の庭園観であるようだ。いかに私的に囲われていようと、また人の手が加えられていようと、日本人が庭に求めるのは自然のミニチュア[9] であり、その自然志向[10] は石を山に、砂[11] を水に見立てた枯山水[12] のような屈折[13] した操作[14] を含む庭まで一貫[15] している。これは結局、自然を克服[16] すべき対象としてではなく、親和[17] 的な環境としてとらえる日本人自然観に由来[18] するもので、むろんぼくの雑木林[19] 好みもその影響下にあると言えるだろう。
(『住まい方の演出』中央公論社より。一部削除あり)
[1]恩恵◎【おんけい】【名】
恩惠,恩德;好处;赐予,恩···。
△恩恵に浴する。/沾恩惠···受到好处。
△恩恵を施す。/···恩惠。
△あのかたには非常な···恵をこうむっています。/我受了他很大的好处。
△われわれは自然界からさまざまな恩恵を受けている。/我们得到大自然的种种恩典。
[2]南北①【なんぼく】【名】
南北,南方和北方。(南と北···)
△南北を縦断する。/贯穿···北。
△南北戦争。/(美国)···北战争。
△南北朝。/(中国···)南北朝;(日本的)南北朝(吉野J朝)。
△南北問題。/南北问题。
[3]なんたん【南端】
南端
[4]敷地◎【しきち】【名】
地基;用地,地皮。(建物をた···るための土地、用地。建物や道路·堤防などの施設を設けるための土地。)
△学校の敷地。/学校用地。
△敷地面積。/地基面积、占地面积。
[5]境界◎【きょうかい】【名】
境界;疆界,边界。(さか···。区域。)
△境界を定める/···定边界。
△境界を封鎖する/···锁边界。
△境界河川/边界河···;界河。
△境界線/(边)界···。
[6]隣地①【りんち】【名】
邻地;毗连的土地
[7]鬱蒼②【うっそう】【形动】
郁郁葱葱,葱绿茂密;茂盛···(樹木が茂ってあたりが薄暗いさま。)
△鬱蒼とした森林。/茂密的森林。
[8]陽射し◎【ひざし】【名】
(1)(照射的)阳光。(日光の照りつけること。)
(2)白天,白昼。(日脚。)
△陽射しが延びる。/白天变长了。
[9]ミニチュア [U]
[2]〔英miniature〕〈名〉
(1)細かい部分までていねいにかきこんだ?小さな絵/连细部都画得很工整的画?袖珍画?
(2)小型?また?小型模型/小型?也指小型模型?
【参】也说“ミニアチュア"?
[10]志向◎【しこう】【名·他动·三类】
志向;意向。(心···一定の目標に向かって働くこと。こころざし向かうこと。また、こころざし。)
△志向と信念を同じくする。/志同道合。
[11]砂◎【すな】【名】
(1)砂にする。/浪费,骗取。
(2)砂をかます。/相扑比赛中把对方摔倒在地。
[12]かれさんすい【枯れ山水】【枯山水】[3]
水の無い所に石を配置して?山水を表わした庭?枯れせんすい?
[13]屈折◎【くっせつ】【名·自动·三类】
(1)弯曲,曲折。(折れ曲がること。)
△屈折の多い海岸線。/富于曲折的海岸线。
(2)歪曲,不正常,不自然。(物の考え方やその表現などが素直でなく、わかりにくいところがあること。)
(3)屈折,折射。(光や音などの波動が、ある媒質から他の媒質に進むとき、そ···境界面で進行方向を変えること。)
△光線は水に入ると屈折する。/光线一入水中便发生折射(现象)。
△屈折角。/折射角。
△屈折率。/折射率。
△屈折望遠鏡。/折射望远镜。
△屈折プリズム。/折射(三)棱镜。
[14]操作①【そうさ】【名】【他动·三类】
(1)操纵(机器···)。操作。驾驶。((機械などを)あやつって働かせること。)
△遠隔操作。/遥控。
△コンピューターを操作する。/开〔操纵〕电子计算机。
(2)〔金銭の〕设法安排。筹措。窜改(帐··)。(自分の都合のよいようにうまく運用·処理すること。)
△資金の操作が上手だ。/善于筹措资金。
△帳簿を操作して売り上げをごまかす。/窜改帐簿,掩盖营业额的真相。
△市場の··作。/操纵市场。
[15]一貫 [U]
いっかん
[0]〔一貫〕〈名?自サ〉
(1)始めから終わりまで?一つの考えかたややりかたで?つらぬき通すこと/用一个想法或作法从头到尾贯彻下去?一贯?
△~した政策/一贯的政策?
△~して反対の立場をとる/一贯坚持反对立场?
(2)重さの単位?やく3.75キログラム/日本重量单位?约3.75公斤?一贯?
[16]克服◎【こくふく】【名·他动·三类】
克服。(努力し···困難にうちかつこと。)
△イ···フレを克服する。/克服通货膨胀。
△あらゆる艱難(かんなん)を克服する。/克服一切困难。
[17]親和◎【しんわ】【名】【自动·三类】
(1)亲睦,和睦···(互いになごやかに親しむこと。なじみ、仲よくなること。)
[18]由来◎【ゆらい】【名·副·自动·三类】
(1)来历,由来。(物事がそれを起源とするところ。)
△この寺院の由来を調べる。/调查这座寺院的由来。
△中国に由来する美術。/来自中国的美术。
(2)原来,本来。(そもそも。)
△彼は由来ものを知らない男だ。/他本来是个不懂事的人。
[19]雑木林④【ぞうきばやし】【名】
杂树丛,杂树,林杂树林···(いろいろな木が混じって生えている林。)
△雑木林は自然にできたものではない。/杂树丛并非自然衍生的东西。