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- 本文
- 庭(にわ)というものは住(す)まいの外(そと)にありながら、室内(しつない)の雰囲気(ふんいき)に少(すく)なからぬ影響(えいきょう)を与(あた)える住(す)まいの装置(そうち)[1] である。たとえば居間(いま)[2] などに座(すわ)って何気(なにげ)なく[3] 外(そと)に視線(しせん)[4] を投(な)げる[5] とき、そこにあるのが明(あか)るい芝生(しばふ)[6] の広(ひろ)がりであるか、こんもりとした松(まつ)[7] の茂(しげ)み[8] であるであろう。ぼくは親(おや)の庭先(にわさき)[9] に家(いえ)を建(た)てて住(す)んでいるので自分(じぶん)の庭(にわ)と言(い)えるものを持(も)たないのだが、それでも窓辺(まどべ)[10] の食卓(しょくたく)[11] から父母(ちちはは)の庭(にわ)を望(のぞ)むことが出来(でき)る。この庭(にわ)は“庭園(ていえん)[12] ”風(ふう)に整(ととの)えられて[13] はいない雑木(ざつぼく)[14] はかりの広(ひろ)がりだが、それがかえって四季(しき)折々(おりおり)[15] の移(うつ)り変(か)わりを鋭敏(えいびん)[16] に映(うつ)し出(だ)す[17] ことになって好(この)ましく感(かん)じられ、春先(はるさき)[18] にヒョロリとした梅(うめ)[19] が思(おも)いもかけぬ片隅(かたすみ)[20] を小(ちい)さく彩(いろど)ったり[21] 、枯木(かれど)立(だち)[22] が冬(ふゆ)の入(はい)り陽(ひ)をちぢ[23] に裂(さ)いたり[24] するのを眺(なが)めやることで、ささくれ立(た)った気分(きぶん)が和(なご)む思(おも)いをすることが多(おお)い。
- 庭(にわ)を眺(なが)めるという一見(いっけん)目立(めだ)たない[25] 行為(こうい)は、ぼくを含(ふく)む日本人(にっぽんじん)の日常(にちじょう)生活(せいかつ)の流(なが)れの中(なか)で意外(いがい)に重要(じゅうよう)な一種(いっしゅ)の節目(ふしめ)[26] になっているらしい。たとえば山口(やまぐち)瞳(ひとみ)の哀切(あいせつ)[27] きわまりない[28] 私小説(ししょうせつ)[29] 集(しゅう)『庭(にわ)の砂場(すなば)[30] 』の中(なか)の同名(どうめい)の短編(たんぺん)はその典型(てんけい)的(てき)な例(れい)の一(ひと)つであろう。この小説(しょうせつ)は次(つぎ)のように書(か)き出(だ)される。
- 「今年(ことし)の梅雨(つゆ)は殊更(ことさら)に長(なが)く感(かん)じられた。三月(さんがつ)にも四月(しがつ)にも雨(あめ)が多(おお)かったせいだろう。私(わたし)は陰鬱(いんうつ)[31] な気分(きぶん)で暮(く)らしていた。梅雨(つゆ)時(じ)は必(かなら)ずしも嫌(きら)いではなかった。それは繁(しげ)った樹木(じゅもく)のせいだ。青葉(あおば)[32] の繁(しげ)った樹木(じゅもく)に雨(あめ)が降(ふ)りかかるのを見(み)るのは好(よ)い気持(きも)ちのものだった。紫陽花(あじさい)[33] は好(す)きだし、紫式部(むらさきしきぶ)[34] の薄(うす)いピンクの花(はな)が咲(さ)くのもいい。
- 私(わたし)は樹木(じゅもく)が間近(まぢか)に見(み)える居間(いま)[35] の長椅子(ながいす)[36] に坐(すわ)って庭(にわ)に降(ふ)る雨(あめ)を見(み)ていた。そうしていると気分(きぶん)が沈(しず)んでくる。……」
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上外《日语综合教程》第5册
第四課 庭
本文
庭というものは住まいの外にありながら、室内の雰囲気に少なからぬ影響を与える住まいの装置[1] である。たとえば居間[2] などに座って何気なく[3] 外に視線[4] を投げる[5] とき、そこにあるのが明るい芝生[6] の広がりであるか、こんもりとした松[7] の茂み[8] であるであろう。ぼくは親の庭先[9] に家を建てて住んでいるので自分の庭と言えるものを持たないのだが、それでも窓辺[10] の食卓[11] から父母の庭を望むことが出来る。この庭は“庭園[12] ”風に整えられて[13] はいない雑木[14] はかりの広がりだが、それがかえって四季折々[15] の移り変わりを鋭敏[16] に映し出す[17] ことになって好ましく感じられ、春先[18] にヒョロリとした梅[19] が思いもかけぬ片隅[20] を小さく彩ったり[21] 、枯木立[22] が冬の入り陽をちぢ[23] に裂いたり[24] するのを眺めやることで、ささくれ立った気分が和む思いをすることが多い。
庭を眺めるという一見目立たない[25] 行為は、ぼくを含む日本人の日常生活の流れの中で意外に重要な一種の節目[26] になっているらしい。たとえば山口瞳の哀切[27] きわまりない[28] 私小説[29] 集『庭の砂場[30] 』の中の同名の短編はその典型的な例の一つであろう。この小説は次のように書き出される。
「今年の梅雨は殊更に長く感じられた。三月にも四月にも雨が多かったせいだろう。私は陰鬱[31] な気分で暮らしていた。梅雨時は必ずしも嫌いではなかった。それは繁った樹木のせいだ。青葉[32] の繁った樹木に雨が降りかかるのを見るのは好い気持ちのものだった。紫陽花[33] は好きだし、紫式部[34] の薄いピンクの花が咲くのもいい。
私は樹木が間近に見える居間[35] の長椅子[36] に坐って庭に降る雨を見ていた。そうしていると気分が沈んでくる。……」
[1]装置①【そうち】【名·他动·三类】
装置,设备;装备(武器·器材の);配备(セットになった);安装(取りつける);舞台装置。(舞台の。)
△安全装置。/安全装置。
△冷暖房装置。/冷气暖气设备。
△装置してある。/配备着。
△自然に発火する装置になっている。/它是一种自然发火装置。
△あ···劇場は装置が整っている。/那个剧场舞台装置齐备。
[2]居間◎②【いま】【名】
起居室,起座间。(家の中で,家···がくつろいだりして,ふだんいる部屋。)
△テレビを居間に備える。/把电视机放在起座间。
[3]何気ない [U]
なにげない
なにげな?い
[4]〔何気ない〕〈形〉
はっきりした目的や意図をもたずにふるまうようす/没什么明确目的和意图行动的样子?漫不经心?无意的?
△~?いことばが相手の心を傷つけた/无意的话伤了对方的心?
[4]視線◎【しせん】【名】
视线。眼睛和所视对象之间的(···想)连线,注视的方向。(目の向き。目で見ている方向。目の中心と、見ている対象とを結ぶ線。視軸。他人を、また、他人が見る目付き。ある気持ちの表れた目付き。)
△冷たい視線。/冷淡的视线。
△視線を向ける。/向……看去。
△視線をさける。/避开视线。
△視線をそらす。/移开视线。
△一瞬ふたりの視線が合った。/一瞬间两个人的视线碰到一起了。
△一同の視線はことごとく彼に集まった。/大家的视线都集中到他的身上了。
[5]投げる②【なげる】【他动·二类】
(1)投,抛,扔,掷。···ほうる。)
△ボールを投げる···/投球;扔球。
(2)摔。(投げつける。)
△相手を床に投げる。/把对方摔在地板上。
(3)提供。(提供する。)
△話題を投げる。/提供话题。
(4)投射。(放つ。)
△淡い光を投げる。/投射微弱的光线。
(5)投。(入水する。)
(6)放弃(あきらめる);··认真搞,潦草从事。(なげやりにする。)
△仕事を投げる。/放弃工作;不认真做工作。
△試合を投げる。/放弃比赛。
△さじを投げる。/束手无策。
△身を投げる。/自杀。
[6]芝生◎【しばふ】【名】
草坪,矮草地。
△芝生に入るべからず。/请勿进入草地。
△芝生に寝そべる。/躺在草坪上。
△芝生撒水機。/草坪洒水机。
△庭を芝生にする。/庭院里铺上草坪。
[7]松①【まつ】【名】
(1)松,松树,松木(マツ科の針葉樹。特に,アカマツ·クロマツ·ゴヨウマツ·ハイマツなどマツ属の植物をさす)。
△松の木/松树。
(2)新年装饰门前的松枝装饰;松枝的期间(門松。また,門松を飾っておく期間)。
△松の内/新年期间(元旦至正月七日)。
△松が過ぎてから/过了正月七日(以后)。
[8]茂み◎【しげみ】【名】
草木繁茂处。(草木の生い茂っ···いる所。)
△立ち木の茂み。···树丛。
[9]庭先◎【にわさき】【名】
(院子接近房檐的部分)庭前···院子。(縁側に近い庭の部分。ていぜん。)
△庭先相場。/产地价格。
[10]窓辺◎【まどべ】【名】
窗户附近,窗边。(窓のそば。···の近く。)
△窓辺の席がいい···。外の夜景見れるから。/窗边的座位比较好,可以看到外面的夜景。
[11]食卓◎【しょくたく】【名】
饭桌,餐桌,食案'。(食事用の卓。テーブル。)
△食卓につく。/就席,就餐。
△食卓を共にする。/一同进餐。
△食卓をかたづける。/收拾饭桌。
△食卓用ナプキン。/餐桌用餐巾。
[12]庭園◎【ていえん】【名】
庭园,花园,园林。配置有树···、花草、假山、泉水等,供休闲观景的场所。(観賞やレクリエーションのために樹木を植えたり、噴水·花壇を作ったり、あずまやなどを設けたりして人工的に整えた場所。にわ。)
△屋上庭園。/屋顶花园。
△日本式の庭園。/日本式庭园。
[13]整える④【ととのえる】【他动·二类】
(1)弄齐。整理。···顿。(きちんとした状態にする。)
(2)备齐。备至。准备。(足りないものがないよう···揃える。)
(3)谈妥。办妥。使达成。(まとめる。成立させる。)
△交渉を整える。/达成协议。
[14]雑木◎【ぞうき】【名】
杂样树木,不成材的树木。(良···とならない種々雑多の樹木。薪材などにする木。ざつぼく。ぞうぼく。)
△雑木林。/杂树林。
[15]折々◎【おりおり】【名】
随时;时时。每次。(その時···の時。機会がある時ごと。)
△四季折々の眺め。/四季景色。
△折々見かける。/偶尔看到。
[16]鋭敏◎【えいびん】【名】【形動】
灵敏,敏锐。(感覚などの鋭いこと。)
△手先の··覚が鋭敏だ。/指尖感觉灵敏。
△鋭敏な頭の働き。/敏锐的才智。
△気候の変化に鋭敏な動物。/对气候变化敏感的动物。
[17]映し出す④【うつしだす】【他五】
放映出。(映写する。)···光をあてて、物の姿·形·影などが、何かの上にはっきり現われるようにする。)
△アルプスの山々を画面いっぱいに映し出す。/阿尔卑斯山脉布满整个画面。
[18]春先◎③④【はるさき】【名】
初春,早春,春初。(春の初···。)
△きょうは春先の冷たい···気が北海道から南下。/今天有一股来自北海道的早春的冷空气即将南下。
[19]梅◎【うめ】【名】
(1)梅,梅树。(木)
(2)梅子。(果実··
[20]片隅③◎【かたすみ】【名】
一隅,(一个)角落。(中央···から離れた目立たないところ。)
△へやの片隅。/屋子的一个角落。
△町の片隅に住む。/住在城镇的偏僻角落里。
[21]彩る③【いろどる】【他动·一类】
(1)上色,涂上(施···)颜色,施彩色,着色。(着色する。彩色する。)
△壁をうすい黄色に彩る/把墙涂上浅黄色。
(2)化妆。(顔に白粉(おしろい)や紅(べに)·黛(まゆずみ)をつける。化粧す··。)
(3)装饰,点缀。(種々の色をとりあわせて飾る。潤色す··。)
△花で食卓を彩る/用鲜··点缀食桌。
△桜で彩られてい··島々/满是樱花的岛屿。
[22]かれ‐こだち【枯木立】
冬になって葉が枯れ落ちた木立?冬木立?〈[季]冬
[23]千千①【ちぢ】【名·形动】
(1)很多,极多,许许多多。(非常に多いこと。また、そのさま。)
(2)种种,形形色色,各种各样。(種類·変化などに富むこと。また、そのさま。さまざま。)
△心が千千に乱れる。/心如乱麻。
[24]裂く①【さく】【他动·一类】
(1)撕裂,撕开。(布や紙などを、二方から強く引っ張って二つに引き離す。ひきやぶる。)
(2)切开,剖开,破开。用刀具剖开动物的腹部。(動物の腹を刃物で切り開く。)
(3)分裂,拆散。硬把有亲密关系的人分开。(親密な関係にある人をむりやり引き離す。)
△二人の仲を裂く。/拆散两个人的亲密关系。
[25]目立つ②【めだつ】【自动·一类】
显眼,显著,引人注··(きわだってみえる)。
△彼··はいつも目立つ格好をしている/她总是打扮得引人注目。
△最近,彼の言動があまり目だたない/最近他的言行不那么引人注目。
△彼の才能はひときわ目立つ/他的才能分外突出。
△黒と白とではたいへん目立つ/黑色配白色非常鲜明。
△国会ではいっこうに目だたない存在だ/在国会里是个向来不显眼的人物。
△彼のいないのが目だった/他的不在引起了注意。
[26]節目◎【ふしめ】【名】
(1)节眼。(木材や竹の節のあるところ。)
(2)阶段,段落。(物事の段階。)
△人生の節目。/人生的一个段落。
[27]哀切◎【あいせつ】【名】【形动】
悲惨,悲哀。(非常···哀れでもの悲しいこと。また、そのさま。)
△哀切極まる物語。/极其哀切的故事。
[28]窮まりない⑤【きわまりない】【形】
无限的(同この上もない)
[29]私小説 [U]
ししょうせつ
[2]〔私小説〕〈名〉
作者自身の生活や体験を素材として?その時どきの心境をありのままに書くことによって人間の真実を追求しようとする?日本独特の小説の形式/以作者自己的生活和体验为素材如实地写出当时的心境以此追求人生的真实的,日本特有的小说形式?自叙体小说?
【参】也叫“わたくし小説"?
[30]砂場◎【すなば】【名】
(1)沙池、沙坑。为了让孩子···耍,在幼儿园、公园等地,填入很多沙子的场所。(幼稚園や公園などで、子どもが遊べるように砂をたくさん入れた場所。)
[31]陰鬱◎【いんうつ】【形动】
忧郁,郁闷;不舒畅,不痛···,闷闷不乐。(陰気で、明るさや快活さを全く感じさせない様子。)
△陰鬱な顔つき。/忧郁的面容。
△陰鬱な天気。/阴沉的天气。
[32]青葉①【あおば】【名】【日本地名】
(初夏的)嫩叶,···绿,绿叶。(緑色をした草木の葉。特に、若葉のころを過ぎて、青々と茂った木の葉。)
△木々は青葉になった。/树叶绿了。
[33]紫陽花②【あじさい】【名】
八仙花;绣球花。(ガクアジ···イから日本で改良された園芸品種。高さ1~1.5メートルの落葉低木。葉は大きな楕円形。)
△紫陽花まつり。/绣球花的节日。
[34]むらさきしきぶ【紫式部】
〈植〉紫珠
[35]居間◎②【いま】【名】
起居室,起座间。(家の中で,家···がくつろいだりして,ふだんいる部屋。)
△テレビを居間に備える。/把电视机放在起座间。
[36]長椅子◎【ながいす】【名】
长椅子;长沙发