第二に、他者に伝えるために表現しているという意識を忘れないことだ。とかく、自己を表現することに熱中してしまうと、相手の存在を忘れがちになる。けれども、表現というものは、それが相手に伝わってはじめて完結[1] するものだ。「どんな人たちに」「何を」伝えたいのかということを意識することは、ものを書く場合、不可欠の条件だ。
これは、日常生活の中で「相手を意識した」話し方をしていないと、うまくできるものではない。ところが、若い人たちは書くことと同様、こういう話し方が苦手なようだ。
それが難解[2] で独りよがり[3] な表現とつながり、飛躍[4] ばかりでとりとめ[5] もない表現とつながる。これでは、当人[6] は自分を表現しているつもりでも、独り言[7] を言っているのと変わりはない。
「言語不信」などと言う人に限って、ありきたり[8] の没個性[9] 的な表現に寄りかかって、こと足れり[10] とする傾向がある。それでいて[11] 、他人に理解されないとこぼして[12] いるのは、甘えというものだ。「弘法[13] 筆を選ばず[14] 」というが、実際には、弘法大師は書体[15] によって筆を選んだという。表現も同じことで、相手によって選ぶ言葉も違ってくる。そのためには、ふだんから様様な文章を読み味わって、言葉に関する感覚を養っておかなくてはならない。
[1]完結◎【かんけつ】
【名·自动·三类】
完成;完结;结束。(すべて終わること。)
△1冊で完結している。/一册完成。
△仕事はひとまず完結した。/工作暂告结束。
△この仕事が完結したらつぎの仕事にかかる。/这一项工作作完,就开始下一项工作。
△この叢書は15巻で完結する。/这套丛书十五卷出完。
△雑誌に連載のまんがも今月で完結する。/杂志上连载的漫画这个月登完。
△完結編。/[小説]终卷〔集〕;下集;终集。
[2]難解◎【なんかい】
【名·形动】
难解,费解。(解釈しにくいこと。分かりにくいこと。)
△難解な文章。/晦涩的文章。
[3]独りよがり④【ひとりよがり】
【名·形动】
自以为是(的人),自命不凡,自大。(自分ひとりだけでよいと思って、他人の説を顧みないこと。)
△独りよがりな言動。/自以为是的言行。
[4]飛躍◎【ひやく】
【名·自动·三类】
(1)跳跃,腾跃。(飛び上がること。跳躍。)
(2)活跃。飞跃,跃进。(大きく発展して活躍すること。また、急速に進歩·向上すること。)
△政界に飛躍する。/活跃于政界。
△いまや一大飛躍をなすべき時だ。/现在是应该大干一场的时候了。
△売り上げが飛躍的に伸びている。/销售额正在飞跃上升。
(3)飞跃,超越,不连贯。(順序や段階をふまずに、急にとびはなれたところに移ること。)
△君の言うことには論理の飛躍がある。/你说的那事,有点不合逻辑。
[5]取り留め◎【とりとめ】
【名】
(谈话等的)要点,要领。(はっきりしたまとまり。それと定めた目的。)
△取り留めのない話。/没有要领的话。
[6]当人①【とうにん】
【名】
本人;当事人。(その人。本人。)
△当人の意志。/本人的意愿。
[7]独り言◎④【ひとりごと】
【名】
自言自语(的话)。并非说给别人听,而是一个人无意识地说。亦指其说的话。(人に聞かせるというわけでなく、一人で無意識に言うこと。また、その言葉。独語。)
△独り言を言う。/自言自语。
△老婆はいつもぶつぶつ独り言を言っていた。/老婆婆总是唠唠叨叨地自言自语。
[8]ありきたり③【ありきたり】
【名·形动】
通常,一般,常有,不希奇,老一套的。(珍しくないこと。ありふれていること。)
△ありきたりの品。/一般的东西。
△ありきたりの考え。/普通的想法, 并不出色的想法。
△こんな装飾はありきたりだ。/这种装饰是常有的,并不怎么了不起。
[9]没個性【ぼつこせい】
【名】
没个性。(個性が無い、個性が薄い、などという意味の表現。「没個性的」などという具合に使われる。 )
[10]足れり【たれり】
【连语】
足,够,满足。(それ(これ)で十分だ。)
[11]それでいて◎【それでいて】
【接】
尽管那样,虽然那样。(前に述べた事柄とは、似つかわしくない事柄を次に述べる意を表す。それでいながら。それなのに。)
△十分な手当てをした、それでいて小犬は死んでしまった。/做了充分的治疗,尽管如此,小狗还是死了。
[12]零す②【こぼす】
【他动·一类】
(1)洒,撒,泼,漏,掉,落。(不注意から器を傾けたりして,中の液体·粉末·粒状の物を外に出してしまう。)
△涙を零す。/洒泪,落泪。
△塩を零す。/撒盐。
△手がすべってお茶をこぼしてしまった。/一失手把茶洒了。
(2)发牢骚,抱怨,鸣不平。(不平·愚痴などを言う。ぼやく。)
△ぐちを零す。/发牢骚。
[13]弘法◎【ぐほう】
【名】
弘法,普及佛法。(仏法を世間に広めること。)
△弘法するため日本に行った。/为普及佛法赴日远游。
[14]弘法筆を選ばず【こうぼうふでをえらばず】
【惯用语】善书者不择笔。(達筆で知られる弘法大師ならばどのような筆でも素晴らしい書が書ける、転じて優れた技量を持つ者は道具の優劣に左右されないという意味である。)
[15]書体◎【しょたい】
【名】
(1)字体,笔体。(文字の書きぶり。書風。文字の書き方。)
△書体にくせがある。/有笔体。
(2)字体。(字体を基本とした文字の体裁。漢字の楷書·行書·草書·篆書·隷書など。活字では、明朝体·清朝体·宋朝体などや、欧文でのローマン·イタリックなど。)
箱書き 这里的意思是“分场景要点”