東シナ[1] 海の冷酷[2] な青い波、くらげ[3] の浮かぶ[4] ボルネオ[5] 海の白緑色のねっとり[6] した波、インド洋の壮麗[7] な落日[8] の下で黄金色に砕けていた[9] 波、地中海[10] の凄み[11] を帯びた青黒い[12] 波――いずれも刻々に私の魂[13] を奪って[14] やまなかった[15] 。朝から晩まで私は舷側[16] からただ海の青さ、広さに見入っていた。
人間は愛する物のは、ひたすら[17] 愛する物を失ったからではないだろうか。この大航海の間、私は自然の素晴らしさと同時に人生の過し方も学んでいたようなきがする。
あれからもう三十年。今も海が恋しい[18] 時、懐かしい三好達治[19] の詩を読む。
「海よ、僕らの使ふ[20] 文字では、お前の中に母がいる。そして母よ、フランス人の言葉では、あなたの中に海が在る。」〔フランス語の母はmere、海はmer〕
(『生きて愛するために』中央公論社より)
[1]しな【支那】
(?秦しん?の転訛)外国人の中国に対する呼称?初めインドの仏典に現れ?日本では江戸中期以来第二次大戦末まで用いられた?戦後は?支那?の表記を避けて多く?シナ?と書く?
[2]冷酷◎【れいこく】【名·形动】
冷酷无情,铁石心肠『··』。(思いやりがなく、冷たく、むごい·こと(さま)。)
△きわめて冷酷な人。/非常冷酷无情的人;铁石心肠的人。
△冷酷な仕打ちを受ける。/遭受冷酷无情的对待。
△あいつは冷酷な人間だ。/那家伙是个冷酷无情的人。
[3]くらげ◎【くらげ】【名】
(1)海蜇;水母。(腔腸動物の··ドロ虫類·ハチクラゲ類の浮遊世代と,有櫛(ユウシツ)動物の個体の総称·)
△彼はくらげのような人だ。/他是个没有定见的人。
(2)没有定··的人。〔考えのはっきりしない人。〕
△彼はくらげのような人だ。/他是个没有定见的人。
[4]浮かぶ◎【うかぶ】【自動】
(1)漂,浮。(物が液体の表面にある。物が空中にある。浮いている。)
△空中にふわりと浮かぶ/在空中飘荡。
△木の葉が水に浮かぶ/树叶在水上漂浮。
(2)想起,想出。··考えや思いが意識されるようになる。)
△むかしの苦しみが心に浮かぶ/过去的苦难涌上心头。
(3)浮现,露出。(感情が表情に現れる。)
△口もとに微笑が浮かぶ/嘴上含笑。
△霧の中に船の姿が浮かんで見えた/船影在雾中隐隐出现。
[5]ボルネオ◎【ボルネオ】婆罗洲(马来群岛中的一岛)
(英) Borneo
[6]ねっとり③【ねっとり】【副】
胶粘,粘粘糊糊。(とろりと···てねばりけのあるさま。また、ねばねばするさま。)
△ねっとりした薬を塗る。/涂上粘糊糊的药。
[7]壮麗 [U]
そうれい
[0]〔壮麗〕〈形動〉
とても大きくて?美しい/非常大而美丽?壮丽?
△~な宮殿/壮丽的宫殿?
[8]落日 [U]
らくじつ
[0]〔落日〕〈名〉
沈んでいく太陽/落下去的太阳?落日?
△~の美観を見る/观看落日的美景?
[9]砕ける③【くだける】【自动·二类】
(1)破碎,粉碎,碰碎,打碎。(打たれてこわれる。こなごなになる。)
△白波が砕ける。/浪花四溅。
(2)(锐气、气势等)受挫折,减弱,衰败。(勢いなどが弱る。くじける。)
△意志が砕ける。/颓废,意志衰退。
(3)融洽起来,不拘形迹,谦虚起来,平易近人。(打ち解ける。儀式ばらない。)
△あの人はくだけていて感じがよい。/那个人平易近人给人好印象。
[10]ちちゅうかい【地中海】
〈地〉地中海?
[11]凄み③【すごみ】【名】
可怕;惊人;吓唬人的话
[12]青黒い④【あおぐろい】【形】
青黑色的;蓝黑色的
[13]魂①【たましい】【名】
(1)魂,灵魂,魂魄(人の肉体に宿り,生命を保ち,心の働きをつかさどると考えられているもの。肉体から離れても存在し,死後も不滅で祖霊を経て神霊になるとされる。霊魂)。
△死者の魂をなぐさめる/安慰亡魂。
△三つ子の魂百まで/江山易改,禀性难移。
△仏つくって魂入れず/画龙而不点睛;功亏一篑。
(2)精神;精力;心魂(気力。精神。心)。
△魂を奪う/吸引住;迷住;夺人心魂。
△魂を引きちぎられるようだ/心如刀绞一般。
△魂をうちこんだ仕事/倾注全副精力的工作。
[14]奪う②【うばう】【他动·一类】
(1)(物·地位·職な···を)夺,抢夺;剥夺;夺去。
△店頭の宝石を奪う。/抢走店里的宝石。
△発言権を奪う。/剥夺发言权。
△官職を奪う。/罢官。
△熱を奪う。/吸收热。
△雪で足を奪われる。/下雪使交通阻塞;下雪不能出门。
(2)(心を)强烈吸引住;迷人;惊人(驚かせる)。
△心を奪う。/迷人。
△魂を奪う。/销魂。
△人の肝を奪う。/使人丧胆。
△その美しさは目を奪うばかりである。/绚丽夺目。
[15]止む◎【やむ】【自动·一类】
(1)休,止,停止,中止,停息。(止まる。)
△雨が止むまで待つ。/等到雨停。
△痛··が止む。/疼痛停止。
△ふたり···争ってやまない。/二人争论不休。
△声がぴたりとやんだ。/声音一下子就止住了。
△目的を達成しなければやまない。/不达到目的不罢休〔不停止〕。
△倒れて···止む。/死而后已。
△止むにやまれず旅に出る。/迫不得已而出走〔离去〕。
△止むを得ず遅れた。/不得已来迟了。
△雨が降ってきたので止むを得ず家へ引き返した。/因为下起雨来,不得已返回家中。
△止むを···ず最後の手段をとる。/不得已而采取最后的手段。
[16]舷側◎【げんそく】【名】
船舷。(船体の側面。ふなば···。ふなべり。)
[17]ひたすら◎【ひたすら】【副】
只顾,只管,一心,衷心,一···劲儿地,光。心里只想着一件事。(ただその事だけに心が向かうさま。いちず。ひたぶる。)
△ひたすらあやまるのみ/只··一味道歉。
△ひたすらに息子··無事を祈る/一心祝愿儿子平安无事。
△ひたすら頼み込む。/一个劲儿地恳求。
[18]恋しい③【こいしい】【形】
恋慕的,思慕的。(離れてい···人がどうしようもなく慕わしくて、切ないほどに心惹かれるさま。)
△恋しい人。/情人;恋人;亲爱的。
△戦友が恋しい。/怀念战友。
△ふるさとが恋しい。/怀恋故乡;想家。
△もう火が恋しくなってきた。/该生火了。
[19]みよし‐たつじ【三好達治】‥ヂ
詩人?大阪市生れ?陸士中退後?東大卒??詩と詩論?の新詩運動に参加?のち堀辰雄らと?四季?を創刊?知性と感性の調和した抒情詩を完成?詩集?測量船??南窗集なんそうしゅう??一点鐘??随筆集?路傍の秋?など?(1900~19
[20]つか?ふ【使ふ?遣ふ】
他動詞ハ行四段活用
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①用いる。役立てる。使う。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事につかひけり」
[訳] 野山に分け入って、竹を採取しては、いろいろなことに使っていた。
②召し使う。用をさせる。使う。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「近くつかはるる人々」
[訳] (かぐや姫の)おそば近くに召し使われている人々が。
③〔多く「心つかふ」の形で〕(心を)働かせる。使う。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「たけき心つかふ人も、よもあらじ」
[訳] 強い心を働かせる人は、まさかありますまい。
④〔受身の形で〕あやつる。支配する。
出典徒然草 三八
「名利(みやうり)につかはれて、閑(しづ)かなる暇(いとま)なく」
[訳] 名誉欲や利欲に支配されて、心静かなときもなく。