日本は、ヨーロッパ諸国の軍事力の圧力の前に到底[1] 匹敵[2] しがたい自己を感じると共に、ヨーロッパの科学技術文明の生み出す生産力におどろいたのである。ヨーロッパ文明を移入して、強く豊かな国を作れ、それが過去[3] 百年の間の日本の目標であった。こういう目標の中に自己を集中させた日本は、従って、ヨーロッパよりはるかにヨーロッパ的な技術文明を生んだ[4] 国、ヨーロッパ諸国より、はるかに[5] 技術文明に価値をおく国となった。そういうことは、しばしば文化的後進国[6] に起こることである。科学技術文明は、ヨーロッパにおいて、伝統的な精神文明、特にキリスト教文明との調和の中にあった。しかし日本やアメリカやロシアのように、おくれて技術文明を採用しようとする国において、このような調和は問題ではなく、技術文明だけが性急[7] に移入されたのである。
このような文明の中にあった明治百年の日本において、三つの価値が、価値の王座に君臨[8] した。一つは勤勉[9] 。勤勉は、生産力の向上には、欠くべからざる徳[10] である。しかも、おくれてヨーロッパ文明を採用した日本において、勤勉は二重に重視される。私は明治百年の日本人の第一の徳は、やはり勤勉ではなかったかと思う。小学校の庭に二宮尊徳[11] の銅像がつくられる。しかもその像は、たきぎ[12] を背負い勉強している像である。かつて多くの像を日本人は尊敬したが、この像ほど、ミミッチイ[13] 像はない。一分の寸暇[14] をおしんで[15] 働いている。余裕がちっともないのである。働け、働け、さらば救われん、そのような宗教が、明治百年の日本人の宗教であった。二宮尊徳の銅像は、悲しいまでにいじましいわれわれの自画像なのである。
[1]到底◎【とうてい】【副】
无论如何也,怎么也,无法。···あとに否定の語を伴う。いかにしても。どうしても。とても。)
△到底まにあわない。/怎么也赶不上。
△到底逃げきれない。/怎么也逃脱不了。
△到底信じられない。/无论如何也不相信。
△到底彼には及ばない。/跟他···直无法相比。
△彼は到底助か···まい。/他无论如何救不活了。
[2]匹敵◎【ひってき】【名·自サ】
匹敌。比得上,顶得上··对等的力量、地位,相称。(同じような力量をもったり、地位をしめたりすること。肩を並べること。つりあうこと。)
△英語力で彼に匹敵する者はいない。/论英语没有比得上他的。
△その時代の10円はいまの1万円に匹敵する。/那时候的十日元顶现在的一万日元。
[3]過去①【かこ】【名】
(1)过去,既往。(過ぎ去った時。昔。前歴。)
△過去をしのぶ/回忆过去。
△過去を顧みる/回顾往事。
△過去のことは問わない/既往不咎。
△それもいまは過去のものになってしまった/今天那也已经成为过去了。
(2)前生,前世。(仏の三世の一。生まれる前の世。過去世。)
△過去形/过去形;过去式。
△過去完了/过去完成。
(3)过去(时)。(過去型。)
△過去形/过去形;过去式。
△過去完了/过去完成。
[4]生む◎【うむ】【他动·一类】
(1)分娩。母体把胎儿或···产出体外(出産する。分娩する。)
△子供を生む/生孩子。
(2)新生,产出,产生(新しく作り出す。)
△疑惑を生む/产生疑惑。
△良い結果を生む/产生好结果。
[5]はるかに①【はるかに】【副·形动】
(1)遥远。形容时间···距离离得很远。(距離·時間の非常に隔たってるさま。)
[6]後進国③
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[7]性急◎【せいきゅう】【名·形动】
性急,急性(子)(zi),急躁。(気が短いこと。せっかちなこと。)
△性急な結論は失敗のもとだ。/想要过早地得出结论是危险的。
[8]君臨②【くんりん】【名·自动·三类】
(1)君临,支配··统治,掌握主权。(君主として臣下に臨み、その国を統治すること。)
(2)称霸,有巨大势力。(強大なものが他をおさえて絶対的勢威を振るうこと。)
△画壇に君臨する。/称霸画坛。
[9]勤勉◎【きんべん】【名·形动】
勤勉,勤劳。(仕事や···強に一心に励むこと。)
△勤···に働く。/努力工作;认真工作。
△業務に勤勉である。/对业务勤奋。
△勤勉家。/勤勉的人。
△勤勉実直。/勤勉耿直。
[10]徳◎【とく】【名】
(1)德,德性。(努力しないでも、すべての行いが人の模範とするに足ること。)
△徳が備わる。/有德。
(2)德行,恩惠,恩德。(精神的·物質的に人を救済する善行。)
△徳を施す。/施恩'。
(3)德望。(声望。)
△世人は彼の徳を慕った。/世人钦佩他的德望。
△故人の徳を傷つける。/有伤死者的德望。
△彼の徳を仰ぐ。/敬仰他的品德。
△徳は孤ならず必ず隣あり。/德不孤必有邻。
△徳をもって怨みを報ず。··以德报怨。
[11]にのみや‐そんとく【二宮尊徳】
江戸末期の篤農家?通称?金次郎?名は尊徳たかのり?相模の人?徹底した実践主義で?神?儒?仏の思想をとった報徳教を創め?自ら陰徳?積善?節倹を力行し?殖産を説いた?(1787~1856)
[12]薪◎【たきぎ】【名】
(1)柴火,柴,薪。填进炉灶等中供作燃料的木头。(かまど·炉などで燃料にする細い枝や木。たきもの。まき。)
△ひと束の薪。/一捆柴火。
△薪を切る。/砍柴;劈柴。
(2)日本地名。
[13]みみっちい④【みみっちい】【形】
吝啬,小气。(細かくて、···ちくさい。しみったれている。)
△みみっちい人。/小气的人。
[14]寸暇①【すんか】【名】
寸暇,片刻的闲暇。(わずかの···ま。)
△寸暇を惜しんで働く···/珍惜片刻闲暇辛勤工作。
[15]惜しむ②【おしむ】【他五】
(1)珍惜。爱惜。
△命を惜しむ。/惜命;珍惜性命。
△寸陰惜しむべし。/应该惜寸阴;应该珍惜每寸光阴。
(2)惋惜。
△彼の死は国家にとって惜しむべきである。/他的死对国家是值得惋惜的。
△あの先生が去るときはみなに惜しまれた。/那位老师离开的时候大家都表示惋惜。
△あんなまちがいをしたことを彼のために惜しむ。/他犯了那样的错误我为他可惜。
(3)吝惜,小气。
△金を惜しむ。/吝惜金钱。
△骨を惜しむ。/惜力;不肯费力。
△物を惜しまない。/不吝惜东西;舍得东西。
△骨身を惜しまない。/不辞辛苦。
△協力を惜しまない。/不惜···以协助。
△賞賛の言葉を惜し···ない。/备加赞扬。