自分のことに関連していうときには、いくぶん自分をかばいたいという心理をも充足させることができる。たとえば?屈辱をおぼえた?というべきところでも、?屈辱的だ?といったりする。親しい相手などに対していうときは、あいまいさがうまく生きて、かえって効果的なはたらきを示すおり[1] もある。?君はすばらしい?と単純にいってしまうよりも、?君は魅力的[2] だ?といった方が、相手のいいしれぬ[3] 質素がかえってそこはかとなく[4] 示されるというものだ。
ことばにニュアンス[5] をともなわせる接尾語[6] として、日本語における?的?ということばは、日本人の質素[7] にかなった、ふしぎな交響[8] をただよわせる[9] 、おもしろいことばである。?ドイツ的?とか?ブルジョア[10] 的?とか、外来語にも?的?は自由につけられる。つい[11] このあいだまで、やまとことば[12] にじかに?的?をつけたことばとして?どろてき?(泥的[13] )?とりてき?(取的[14] )ということばがあった。本職[15] のどろぼう的な?こそどろ[16] ?が?どろてき?であり、本職のすもうとり[17] 的な「ふんどしかつぎ[18] 」が「とりてき」であった。ほんものとはいいがたいもの、ほんものより一歩さがった[19] もの、という意識をこめた[20] のが、「どろてき」「とりてき」の「的」の心理である。それは漢語に「的」をつけて用いる心理と共通している。
このあいだ。これも料理番組であったが、ある若いアナウンサーが、「あじ(味)的にどうですか」とやっていた。日本語の「的」には、まったく無意味[21] なそえ字としての「的」もあり、たとえばよくアナウンサーなどが相手に問いかける「気分[22] 的にはどうですか」などがそれであるが、「あじ的」の「的」は、「気分的」の「的」と同類[23] の用法[24] なのであろう。どうもやまとことばにじかに[25] 「的」をつけるのは、なおいささかなじめない[26] ものをおぼえるのであるが、それはわたくしが年をとった証拠なのかもしれない。若い人々は、いっこうに頓着[27] せずに、「まるであらし的な雨だ」とか、「あそび的にはともかくおもしろいぞ」などとやってのける。そうした用法を耳にすると、さっそく日本語の乱れ[28] などと世の識者[29] はいうかもしれないのであるが、しかしそれもよいではないか。「どろてき」「とりてき」のれいもある。とらわれずに[30] 新しいいいかたを自由にくふうしてゆくのが、若者の特権でもある。そうしたことから次の世代のことばが生まれてくるというものだ。
[1]時
[2]魅力的◎【みりょくてき】
【形動】
有魅力的。··魅力のあるさま。)
△魅力的··人。/有魅力的人。
[3]言い知れぬ◎④【いいしれぬ】
【连语】
说不出来的、··以表达的、难以形容的。(言葉では表せない。なんとも言いようがない。言い知れない。)
[4]そこはかとなく◎【そこはかとなく】
【连用】
说不出(··由、场所)地,难以形容地。(形容詞「そこはかとない」の連用形。理由や原因ははっきりと分からないが何となく。どこがどうという理由はないけど、そんな雰囲気があるさま。)
△白梅が2、3輪ほころび、日はうららかで春の気配がそこはかとなく漂う。/天气晴朗,几朵白色的梅花微微绽放,让人隐约感到了春天的氛围。
[5]ニュアンス②【にゅあんす】
【名】【法】
(神韵,··调,音调,意义,感情等的)微妙差异。(言葉などの微妙な意味合い。また、言外に表された話し手の意図。色彩·音色などの微妙な差異。)
△彼は微妙なニュアンスの違いがわかる。/他知道语感的细微差别。
△詩の表現の微妙なニュアンス。/诗的表现的微妙味道。
[6]接尾語【せつびご】
〈語〉接尾词〔辞〕,后缀.【名】
接尾语
[7]質素①【しっそ】
【名·形動】
朴素;俭朴;··陋。(かざらないこと。質朴なこと。派手でない。つましい。おごらず、つつましいこと。倹約なこと。家屋·設備などが粗末。)
△質素な家。/简陋的房屋。
△質素な服装。/朴素的衣服〔装束〕。
△きわめて質素な暮らし。/非常俭朴的生活。
△質素な食事をする。/吃简单的饭食。
[8]交響◎【こうきょう】
【名】【自サ】
交响
[9]漂わす④【ただよわす】
【他动·一类】
使漂浮,泛浮,露出。(ただようようにする。ただよわせる。よるべないようにさせる。落ち着かない状態にする。)
△口もとに微笑···漂わす。/嘴角露出微笑。
[10]ブルジョア◎【ぶるじょああ】
【名】【法】bourgeois
··1)资产阶级者,(资产阶级革命中)新兴的市民阶层。(近代資本主義社会で、資本家階級に属する人。)
[11]つい①【つい】
【副】
(1)相隔不远,就在眼···。(時間や距離がわずかなさま。ちょっと。時間·距離が近いこと。)
△ついさっき。/刚才;刚(刚)。
△ついこのあいだ。/就是(就在)前几天。
△ついいましがた寝たところです。/刚刚睡。
(2)不知不觉(地),无意中;不由得,不禁。(はからず。思わず。う··かり。)
△つい忘れた。/无意···就忘了。
△ついその気にさせ···れる。/不知不觉地上了圈套。
△つい口をすべらした。/无意中说漏了嘴。
△話しこんでいて、つい時間がたった。/谈得很起劲,不知不觉时间就过去了。
△つい笑い出してしまった。/不由得笑了起来。
[12]大和言葉【やまとことば】
(1)〔和語〕日本固有的语言R.
(2)〔平安時代のことば〕平安时代的日语P'R.【名】
[13]どろ‐てき【泥的】
(テキは接尾語)泥棒を軽んじていう語?
[14]取的【とりてき】
〈相撲〉最下级的相扑力士〔运动员〕.
[15]本職③【ほんしょく】
【名】
(1)本行,本职···本来行业,本来的职业。(主な職業。)
(2)行家,专业,内行。(専門家。)
△あなたの料理は本職はだしですね。/你做的饭菜很内行。
[16]こそ泥③【こそどろ】
【名】
毛贼,小偷。(人··すきをみて、こっそりと物を盗むどろぼう。また、わずかばかりの物を盗むどろぼう。こそこそどろぼう。)
△こそ泥をはたらく。/当小偷。
[17]相撲取り【すもうとり】
相扑力士,职业相扑家,相扑运动员.【名】
角力士;力士(同りきし)
[18]ふんどしかつぎ⑤【ふんどしかつぎ】
【名】
(1)〈相扑···最下级的力士〔摔交者〕。(相撲で、最も位の低い力士の俗称。)
(2)职位低微的人。···その世界で最も低い位置にいる者。下っぱ。)
[19]下がる②【さがる】
【自动·一类】
(1)下降。··落。降低。(位置が低いところになる。くだる。おりる。)
△エレベーターが下がってくる。/电梯降下来。
△順位が下がる。/名次降低。
(2)垂。下垂。垂悬。(ぶらさがる。つりさがる。)
△ヘチマが下がる。/丝瓜垂下来。
(3)下降。降低。降价。((物価·相場などが)安くなる。)
△製品のコストが下がる。/产品成本降低。
△物価が下がった。/物价下降了。
(4)降温。((温度などが)低くなる。)
(5)(功能、本领)退步。衰···。下降。降低。后退。((価値·技量などが)低下する。劣る。)
△品質が下がる。/质量降低。
△成績が下がった。/成绩下降了。
△けいこをしないので腕が下がった。/因为不练习,技术退步了。
(6)推移。时代前进。(時が過ぎる。)
(7)向后倒退···后退。往后退。(後の位置へ行く。すさる。)
(8)(从地位高的人的身旁)退出(下)。···貴人の前から退出する。)
(9)放学。下班。自学校、机关、工作单位等处回家。···勤め先·学校などから帰る。)
(10)(政府机关等)发给。发下。(官庁から給与や許可証などが渡される。)
(11)(日本京都指)往南去。((内裏が北にある京··では)南へ行く。)
△寺町三··下がる。/自寺町三条向南行。
[20]込める②【こめる】
【他动·二类】
(1)装填。···ある物の中に、しっかり収め入れる。詰める。)
(2)包括在内,计算在内。···その中に十分に含める。特に、ある感情や気持ちを注ぎ入れる。)
(3)集中(精力),贯注(全神)。(力でおさえつける··また、やりこめる。)
△心を··めて書く。/全神贯注地写。
△仕事に力を込める。/把精力集中在工作上。
△まごころを込めた贈り物。/诚恳的礼品。
[21]無意味【むいみ】
【名·形動】
无意义,没意··,没价值,无聊,无益。(価値なく、つまらないこと。また、そのさま。無意義。ナンセンス。)
△無意味な仕事。/无意··的工作。
△無意味な犠牲。/··谓的牺牲。
△この一節は無意··だ。/这一段节没意思.
△それ···こそわたしの骨折りも無意味でなくなる。/正因这样,我才没有白辛苦。
[22]気分①【きぶん】
【名】
(1)心情;情绪;心···;心境〔心持、気持ち)。
△···しい気分/快乐的心情。
△う···うきした気分/轻快的心情。
△気分がよい/心情舒畅。
△気···が悪い/情绪不佳〔不好〕。
△気分が穏やかになる/心绪平静。
△気分をこわす/破坏情绪。
△気分がなごやかである/心平气和。
△芝居を見る気分になれない/没有心情看戏。
△気分を転換する/转换心情。
(2)气氛,空气〔ふ···囲気〕。
△北京はいまお祭り···分だ/北京现在充满着节日气氛。
△郊外に出てみると、ちょっと気分が違う/到郊区一看,空气有点不同。
(3)舒服,舒适(体の具合〕。
△きょうはご気分はいかがですか/今天您觉得身体怎样?
(4···脾气,性格( 気質。気性)。
△さっぱりした気分の人/性格直爽的人。
[23]同類◎【どうるい】
【名】
(1)同类,同种类···(そのものと同じ種類。)
(2)同伙。(仲間をも指す。)
△私たちは同類なのね。/我们真是一类人。
[24]用法◎【ようほう】
【名】
用法。(もちいか··。使用の方法。)
△用法を誤··。/用法不对。
[25]直に①【じかに】
【副】
直接得。(間に人を··したり、物をはさんだりしないだま。直接に。)
△直に手渡す。/亲手交付。
△地面に直に置く。/直接放在地上。
[26]馴染む②【なじむ】
【自动·一类】
(1)熟识。···なれて親しくなる。)
△悪習···馴染む。/染上恶习。
△新し···環境にすぐ馴染む。/很快适应新的环境。
△機械に馴染む。/熟习机器。
△くつははいているうちに足になじんでくる。/鞋穿着穿着就合脚了。
(2)融合。(しっくりする。調和する。)
△絵と額縁がよく馴染む。/画和镜框恰好合适。
△なじんだみそ。/味道调和的豆酱。
△この石けんは硬水になじまない。/这种肥皂不适于使用硬水。
△雰囲気になじめない。/和周围的气氛格格不入。
[27]頓着②【とんじゃく】
【名·自动·三类】
放在···上,介意,在意。(深く心に掛けること。気にすること。懸念。)
△一向に頓着しない。/毫不在意。
△頓着無い。/没关系。不在意。
[28]乱れ③【みだれ】
【名】
(1)乱,错乱,混乱···(秩序が失われること。乱雑なこと。乱れること。)
△髪の乱れを直す。/梳整蓬乱的头发。
△ダイヤの乱れ。/行车时间的混乱。
(2)变乱···骚动。(内乱。)
△世の乱れ···/变乱。
[29]識者◎【しきしゃ】
【名】
有识之士,有见识··人。(物事をよくわきまえた人。知識や見識を有する人。)
△識者の意見を聞く。/听有见识的人的意见。
[30]捕らわれる④◎【とらわれる】
【自动·二类】
(1)被···,被逮捕,被俘。(つかまえられる。)
(2)受拘束,受限制,局限于,囿于,拘泥。(固···した価値観や考え方などに拘束される。)
△先入観に捕らわれる。/局限于先入之见。