目录
町が自慢する桜公園を抜けて、林道[1] を奥に入る。さすがに人影[2] はない。雨の中で、大花延齢草[3] の白さがきわだって[4] 見える。横なぐり[5] の風が吹き、蝦夷[6] 大桜草の花が激しくゆれている。風に散る桜もあり、散らない桜もあった。桜の散るさまを見に来たつもりではあったが、ここで見た北の桜はやはり、風雪[7] に耐えて咲き続ける姿に風情[8] があった。
手がかじかみ[9] 、ぬれそぼって[10] 歩いているうちに、いきなり眺望[11] が開けた。
遠景[12] に雪の山々があり、手前[13] の山々には辛夷[14] が咲き、落葉松[15] があわあわ[16] とした緑を見せている。赤茶色のひろがりは、楓[17] やぶなの新芽[18] だろう。その赤茶色の炎[19] の中に紅山桜が点在[20] している。私は立ちつくした。立ちつくしているうちに露草色[21] の空が見えてきた。風の中のしぶき[22] が銀色[23] に光っている。
近づいて桜をあおぐ[24] 。花びらに、ツメ[25] でひっかいた[26] ような跡[27] がある。紅色[28] がはげて[29] いる部分がある。風や雨との闘いの跡だ。その傷あとに、私は桜の生命力を見た。
桜は時にはぶきみな暗さを見せ、移ろい[30] のはかなさ[31] を見せ、死の相を見せる。そして時には生の歓喜[32] の表情を見せ、しぶとさを見せ、豊かな実りの予兆[33] となる。私たちが桜をたずねずにはいられない秘密の一つは、この桜の両面性にあるのではないか。
後日[34] 、箱根へ行き、阿弥陀寺所蔵[35] の?弾誓上人絵詞伝?を見せていただいた。確かに、眼光[36] 鋭い上人が刻む桜の木からは赤い血が流れていた。
桜木の熱血伝説を信じた古人は、桜に霊性を見、その霊性の中にぶきみさと、あふれる生命力を見たに違いない、と私は勝手に解釈している。
(『世界花の旅 1』朝日新聞社より)
新しい言葉
紅
紅◎【くれない】【名】
(1)〈植〉红花。(ベニバナの古名。)
(2)鲜红色。用红花汁染成的颜色。(鮮やかな赤色。紅花の汁で染めた色。)
△夕焼けが西の空を紅に染める。/晚霞把西方的天空照得通红。
[1]林道◎【りんどう】【名】
林中道路;运木材路.
△林道をぬけて山小屋へ向かう/穿过山林小道,向山里小木房走去.
[2]人影◎【ひとかげ】【名】
(1)人影。〔人の影。〕
(2)人。〔人の姿。〕
△人影もまばらだ。/看不到几个人影。
△夜ふけの町はすっかり人影が絶えた。/深夜的街道上断了行人。
[3]えんれい‐そう【延齢草】‥サウ
ユリ科の多年草?やや湿った山地の林下に自生?茎は直立して20~40センチメートル?頂に菱形の葉を3枚輪生?5月頃中央に短い花茎の帯紫紅色の花を開く?果実は食用とし?また根茎を乾したものを延齢草根といい?胃腸薬とする?よく似た別種に白花のシロバナエンレイソウがある?延年草?
[4]際だつ③【きわだつ】【自动·一类】
显著,突出,与众不··。(他との区別がはっきりとして目立つ。顕著である。)
△際だった特色。/突出的特色。
[6]蝦夷①【えぞ】【名】
阿伊努族的古称;北海道的古称
[7]風雪◎【ふうせつ】【名】
(1)风和雪。(風と雪。)
(2)暴风雪。(強い風を伴って降る雪。吹雪。)
(3)风霜,艰苦。(きびしい苦難や試練。)
△人生の風雪に耐えて来た人。/饱受人生苦难的人。
[8]風情①◎【ふぜい】【接尾】
(1)风趣,趣味,情趣,(别有)风格。(風雅な趣。情緒。)
△この庭は風情がある。/这个庭院很雅致。
△風情のあるながめ。/幽雅的风致。
(2)样子,情况。(様子。ありさま。)
(3)招待,款待。(もてなし。)
△なんの風情もありませんが…/没什么好招待……
[9]かじかむ [U]
かじか?む
[0]〈自五〉
寒さのために?手足の指先がこごえてうごかしにくくなる/由于寒冷手脚的指尖儿冻得难以动弹?冻僵?
△手が~?む/手冻僵了?
[10]ぬれそぼつ【濡れそぼつ】
湿透?
▲たもとが露に~/(和服)袖子被露水湿透?
[11]眺望◎【ちょうぼう】【名·他サ】
(1)眺望,了望。(遠くを見わたすこと。)
(2)风景,景致。(見わたしたながめ。見晴らし。)
△眺望のきく高台。/便于眺望的高台。
[12]遠景③【えんけい】【名】
远景,后景,背景。(遠方の···色。遠くに見える景色。画面の背景で、遠方となる部分。)
△富士の遠景。/富士山的远景。
[13]手前◎【てまえ】【名】
(1)跟前儿〔自分の目の前)。
△そのレバーを手前に引く/把那个拉杆拉到前边。
(2)这边,靠近自己这方面〔こちら〕。
△川の手前/河的这边。
△東京の手前にある/在东京的这边。
△北京の一つ手前の駅で降りる/在北京的前一站下车。
(3)(当着的)面,(对……的)体面。
△客への手前怒るわけにも行かない/当客人面前也不好发脾气。
△誓った手前酒を飲まない/由于起过誓,所以不喝酒。
△世間の手前もある/也得考虑体面(那样做要受社会指责)。
△約束した手前行かざるを···ない/已经约好了,不去不行啊。
△手前の兄/我的哥哥。
[14]こぶし【辛夷】
〈植物〉日本辛夷
[15]落葉松②【からまつ】【名】
日本落叶松
[16]あわあわ‐し?い【淡淡しい】アハアハ‥
〔形〕[文]あはあは?し(シク)
①いかにも(色や味が)うすい?あっさりしている?
②かるがるしい?軽薄である?実意がない?枕草子24?宮仕へする人を―?しうわるきことにいひ思ひたる?
[17]楓◎【かえで】【名】
(1)枫树。((カエルデ(蛙手)の約。葉の形が似ているからいう)カエデ科の落葉高木の総称。)
△楓科。/枫树科。
△楓糖。/枫糖。
△楓紅葉。/枫红色。
(2)衣服的一种色调。(襲の色目。表裏とも萌葱。)
△楓紅葉。/枫红色。
[18]新芽◎【しんめ】【名】
新芽,嫩芽。(新しく出た草木···芽。若芽。)
△新芽を出す。···冒出新芽。
[19]炎①②【ほのお】【名】
(1)火焰。燃烧的火。(気体が燃焼して熱および光を発する物。)
△ろうそくの炎。/烛光。
△ガスの炎。/煤气的火苗。
△炎が出る。/冒火苗。
△炎に包まれる。/被包在火焰中。
△炎の海と化す。/变成一片火海。
(2)怒火。(恋慕·怨恨·憤怒·嫉妬の情で心のいらだつのを火の燃え立つのにたとえて言う語。)
△怒りの炎。/怒火。
△しっとの炎を燃やす。/燃起忌妒的火焰。
[20]点在◎【てんざい】【名·自サ】
散在,散布。分散在各··。(あちこちに散らばってあること。散在。)
△岩礁があちこちに点在する海岸。/散布着暗礁的海岸。
[21]つゆくさ‐いろ【露草色】
露草で染めた色?うすい藍色?つゆくさ?
[22]飛沫①【しぶき】【名】
飞沫,水花。(水などが細かく···び散ること。また、その水滴。)
△水飛沫。/水花。
△飛沫···あげて泳ぐ。/溅起飞沫游泳。
△波が岩に当たって飛沫があがる。/浪打在岩石上溅起水花。
△飛沫が散る。/水花四溅。
△飛沫がかかる。/溅上飞沫。
△飛沫を飛ばす。/溅起水花。
[23]銀色◎【ぎんいろ】【名】
银色。(銀のような色。しろ···ねいろ。)
△銀色の翼。/银···。
[24]仰ぐ②【あおぐ】【他动·一类】
(1)仰,瞻。(上を向···。)
△仰いで空をみる/仰望···空。
△天を仰いで嘆息する/···天叹息。
(2)尊为;推为。(尊敬する。)
△彼を首領と仰ぐ/推他当头头。
△会長に仰ぐ/推为会长。
(3)仰赖,仰仗,依靠。(依存する。)
(4)请,求。(教えや命令·援助などを請う。求める。)
△裁可を仰ぐ。请求批准。
(5)饮,服··(上を向いて飲む。一気に飲む。)
△毒を仰ぐ/服毒(自杀)。
[25]爪◎【つめ】【名】
(1)指甲;趾甲;爪。(指の背の先に生じる。)
△爪を切る。/剪指甲。
△爪のあか。/指甲泥。
△赤く染めた爪。/染红的指甲(趾甲)。
△爪でひっかく。/用指甲挠。
(2)拨子,义甲。(琴爪。)
△爪が長い。/贪婪;贪得无厌。
△爪で拾って箕(み)でこぼす。/满地捡芝麻,大篓撒香油。
△爪に···なく,瓜に爪あり。/爪字无爪,瓜字有爪.
△爪に火をともす。/拿指甲当蜡烛;非常吝啬.
△爪のあかほど。/少得可怜;一星半点;微不足道。
△爪を立てる所もない。/无立锥之地。
△爪を研ぐ。/磨爪,跃跃欲试。
(3)钩子;爪;别扣。(ひっかけるもの。)
△爪が長い。/贪婪;贪得无厌。
△爪で拾って箕(み)でこぼす。/满地捡芝麻,大篓撒香油。
△爪に···なく,瓜に爪あり。/爪字无爪,瓜字有爪.
△爪に火をともす。/拿指甲当蜡烛;非常吝啬.
△爪のあかほど。/少得可怜;一星半点;微不足道。
△爪を立てる所もない。/无立锥之地。
△爪を研ぐ。/磨爪,跃跃欲试。
[26]引っ掻く②【ひっかく】【他动·一类】
用力搔,抓,挠。(···めで掻く。)
△爪で黒板を引···かく音はなぜ不快なのか。/为什么听到指甲抓黑板的声音会觉得不舒服呢。
[27]跡①【あと】【名】
(1)印,迹,痕迹。(通ったところに残るしるし)
△足跡/脚印。
(2)··象,痕迹。遗迹。(ある事が行われた、あるいは存在したことを示すしるし。また、その場所)
△その顔には苦痛の跡が表れていた/他的脸上显出痛苦的迹象。
△進歩の跡がみえる/现出进步的迹象。
(3)行踪,下落。(ゆくえ)
(4)家··。后继者,后任。(家督。跡目)
△跡を継ぐ/继承家业。
△N···がわたしの跡へすわる/N氏来接替我的工作。
[28]紅色◎【べにいろ】【名】
红色
[29]はげる【剥げる】
(1)〔塗りが〕剥落?
▲おわんの塗りが~/碗上的漆脱落?
(2)〔色が〕褪色?
▲この色は洗ってもはげない/这个颜色洗也不褪色?
[30]移ろい◎【うつろい】【名】
更迭,变化。(移り変わるこ···。)
△四季の移ろい。/四季···迁。
[31]果敢なさ③②【はかなさ】【名】
短暂,虚幻,无常。(頼りな···こと。無常であること。むなしいこと。また、その度合。)
[32]歓喜①【かんき】【名·自サ変】
欢喜,欢呼。非常喜悦···乐。亦指大喜。(非常に喜ぶこと。また、大きな喜び。)
△歓喜の涙。/欢喜的眼泪。
[33]よちょう【予兆】
预兆,先兆?
[34]後日①◎【ごじつ】【名】
(1)将来,日后(何日かたったあと)
△後日またお目にかかります/改日再见。
△災いを後日に残す/留下后患。
(2)事后(事件がすんだあと)
△後日談/日后谈,后话。
[35]所蔵◎【しょぞう】【名·他动·三类】
所藏,收藏。(所有物をしまっておくこと。また、そのもの。)
△所蔵の品。/收藏品。
[36]眼光◎【がんこう】【名】
(1)目光,眼光。(物をじっと見つめるときなどの、目の光。目の輝き。)
(2)观察力。眼力。(物事の真意を見通す力。観察力。眼力。)
△眼光炯炯(けいけい)として人を射る。/目光炯炯射人。
△眼光紙背に徹す。/眼力透纸背;理解深透。