らである。花びらのピンクは、幹[1] のピンクであり、樹皮[2] のピンクであり、樹液[3] のピンク
花瓣的粉红, 其实是树皮的粉红,是树液的粉红,是树叶的粉红。
であった。桜は全身[4] で春のピンクに色づいていて、花びらはいわばそれらのピンクが、
樱花树用其全身染成了春天的粉红, 而花瓣,只不过是这些粉红表露在花
尖上的一点而已。
考えてみればこれはまさにその通りで、木全体の一刻[6] も休むことない活動の
细想起来也的确如此, 整棵树一刻不停活动的精髄,
精髄[7] が、春という時節[8] に桜の花びらという一つの現象になるにすぎないのだった。
到春天这个时节,只不过形成花瓣这惟一的现象。
しかし、われわれの限られた視野[9] の中では、桜の花びらに現れ出たピンクしか見えな
而在我们的视觉范围内见到的只是表露在花瓣上的粉红。
い。たまたま[10] 志村さんのような人がそれを樹木[11] 全身の色として見せてくれると、はっと
当志村把这粉红色作为整棵树的颜色给我看吋, 我惊叹
驚く。
不巳。
このように見てくれば、これは言葉の世界での出来事と同じことではないかという
如此看来, 我倒觉得这和我们寓言世界里的情況,如出一辙。
気がする。言葉の一語[12] 一語は、桜の花びら一枚一枚だといっていい。一見したところ
可以把一句一句的语言比做一瓣瓣的花瓣。 乍看起来,
ぜんぜん別の色をしているが、しかしほんとうは全身でその花びらの色を生み出してい
完全是别种颜色, 其实是树身用它整个身心孕育了那花瓣的颜色,
る大きな幹、それを、その一語一語の花びらが背後[13] に背負っているのである。そういう
而这ー瓣ー瓣的花瓣又依托这巨大的枝干。 难道我们
ことを念頭[14] におきながら、言葉というものを考える必要があるのではなかろうか。そ
不该用这种观念来思考语言吗? 只
ういう態度をもって言葉の中で生きていこうとするとき、一語一語のささやかな言葉の、
有当我们抱着这种态度运用语言的时候, 才能亲身感受到那一句句朴素的
ささやかさそのものの大きな意味が実感されてくるのではなかろうか。美しい言葉、正
语言中所蕴藏着的巨大意义。 美的语言、正确
[1]幹①【みき】【名】
(1)树干。(木本植物の木質化した茎のこと。)
(2)骨干。(物事の重要部分。)
△幹の働きをする。/发挥骨干作用。
[2]樹皮①【じゅひ】【名】
树皮
[3]じゅえき【樹液】
树液,树胶?
[4]全身◎【ぜんしん】【名】
全身,浑身,满身,遍体。
△全身汗だくになる。/浑身汗水淋漓。
△全身泥だらけ。/满身泥。
△全身傷だらけ。/遍体伤。
△全身を打ち込む。/全以赴。
△全身がだるい。/浑全〕身酸懒。
△全身の力をこる。/使出浑身力量。
△怒り全身が震える。/气得浑身发抖。
△全身麻酔をかけられる。/被施行全身麻醉。
△全身不随。/全身瘫痪。
△全身運動。/全身运动。
△全身像。/全身像。
[5]尖端◎【せんたん】【名】
顶端;(时代的)尖端
[6]一刻④①【いっこく】【名·形动】
(1)短时间,片刻,一刻。〔わずかな時。〕
△刻一刻迫ってくる。/一刻一刻地紧迫起来。
△一刻も猶予できない。/刻不容缓。
(2)刻板,冥顽不灵,顽固听不进别人意见的人。(一国とも書く。頑固で人の意見を聞き入れないこと。)
△一刻な男。/冥顽不化的家伙。
[7]精髄①【せいずい】【名】
精华
[8]時節①【じせつ】【名】
时节;季节;时世;时代;时机;机会
[9]視野①【しや】【名】
(1)视野。(外界の一点を凝視するとき、その点を中心として見える範囲。視力の及ぶ範囲。)
△視野に入る。/进入视野,映入眼帘。
△視野をさえぎる。/遮住视野。
(2)眼光,眼界,见识,思路。(物事を考えたり判断したりする範囲。)
△視野を広げる。/打开眼界。
△視野の広い人。/眼界宽阔的人。
△あの人は広い視野に立ってものを考える。/他广开思路考虑问题。
[10]たまたま◎【たまたま】【副】
(1)偶然,碰巧,无意中。(偶然。ちょうどその時。)
△たまたま隣りあわせた人/偶然碰在一起的人。
(2)偶尔',有时。(稀に。時折。)
△たまたま電話をかける/有时〔偶尔〕打电话。
[11]樹木①【じゅもく】【名】
树木。(木。立ち木。)
△樹木の茂った公園。/树木茂密的公园。
△樹木に囲まれている。被树木所环绕。
△樹木園。/物园,树木园。
[12]一語 [U]
いちご
[2]〔一語〕〈名〉
一つの単語?また?短いことば/一个单词?也指短语?一(个)词?一言?一句?
△~も聞きもらさない/一句话也不听漏?
△彼を評すれば?無能の~に尽きる/若论他,一言以蔽之?无能?
[13]背後①【はいご】【名】
(1)背后。〔物のうしろ。背中の方。後方。〕
△背後は海だ。/背后是大海。
△背後から襲う。/从背后袭击,暗箭伤人。
(2)背地,幕后,背后。〔裏側。物事の表面に現れていない陰の部分。〕
△犯罪の背後。/犯罪的幕后关系。
△犯人を背後であやつっているやつがいちばん悪い。/在犯人背后进行教唆的家伙是最坏的。
△背後関係を調査する。/调查幕后关系。
[14]念頭◎【ねんとう】【名】
心头,心上。(こころ。胸のち。心頭。)
△念頭に置く/在心上。
△金のことなどまる念頭に置かない/根本不把钱的问题放在心上。
△そのことがたえず念頭を去らない/那件事总是忘不掉。