おどおど[1] とへつらうように隣の人は言いました。これを聞いてお姑さんは、アイに魚を焼くように言いました。そこでアイは、又木の葉をお客の数だけ鍋に入れました。
「さあさあ、遠慮なく食べていってください」とお姑さんは言いました。お客は大喜びで魚を食べて帰ったのです。
ところが、困ったことになりました。
あの家に行けば、魚がただで食べられるという噂が、村から村へと広まり、遠い道を歩いて飢えた人達が、アイの家をたずねてくるようになったのです。アイは、朝から晩まで台所に閉じこもって、木の葉を鍋に入れては魚の料理を拵えました[2] 。ああ、これで何十匹、海の魚が死んだろうか……そんなふうに思いながら、それでもアイは手を休めることができませんでした。魚を食べたい人達は、それでもアイは手を休めることができませんでした。魚を食べたい人達は、あとからあとからやって来ましたから。
ある日、とうとうお姑さんが言いました。
「こんなときにただで魚を振舞う[3] こともあるまい。うちも貧乏なんだから、魚一匹につき、米一合[4] でも、大根一本でも、いくらかのお金でも、もらったらいいと思うが……」
これを聞いてアイはすぐこう答えました。
「あの鍋はやたら[5] に使ってはいけないと、里[6] の母さんに言われました。ただで魚を上げるのならまだしも[7] 、お金や物と交換するのでは、海の神様にすみません。鍋に入れた木の葉の数だけ海では魚が死ぬのだと聞いています」
すると、お姑さんは笑いました。
「山の木の葉と海の魚はおんなじ[8] ことさ。山の木の葉が取っても取ってもなくならないように、海の魚だって、なくなりゃしない」
[1]おどおど①【おどおど】【副·サ変自】
提心吊胆『成』,战··兢兢,惴惴不安『成』。(恐れや不安で落ち着かないさま。おずおず。)
△おどおどとあたりを見まわす/提心吊胆地东张西望。
△おどおどした態度/惴惴不安的态度。
△おどおどしてなにもいえなかった/战战兢兢地什么也说不上来了。
△悪事が人に知られないかと思っておどおどする/担心坏事(会不会)被别人知道而忐忑不安。
△この子···人前に出るとおどおどする/这孩子见人就紧张。
[2]拵える◎【こしらえる】【他动·二类】
(1)制造,做。〔··る。〕
△料理を拵える。/做··。
△家を拵える。/盖房子。
△包みを拵える。/打个包儿。
△孫にセーターをこしらえてやる。/给孙子织新毛衣。
△庭を··える。/修建庭园。
△基礎を··える。/打好基础。
(2)筹(款)(),凑(钱)。〔お金を準備する·そろえる。〕
△金を拵える。/凑钱;赚钱。
△借金を拵える。/··款; 借债。
(3)化妆,打扮。〔身なりを飾る。〕
△ないことをこしらえて言う··/无中生有。
△話を拵える。··捏造谎言。
(4)捏造,虚构,假装。〔うそを言う··
△ないことをこしらえて言う··/无中生有。
△話を拵える。··捏造谎言。
[3]振舞う③【ふるまう】【自他·一类】
(1)(在人面前)行···;动作(行動をする。動作をする。)
(2)请客;款待;招待。(人に飲···物を提供する。もてなす。また、おごる。)
△酒をふるまう。/请客人饮酒。
[4]一合◎【いちごう】【量词】
(1)一合,合是日本的容积单位,每合等于0.180公斤,十合为一升。(容量。)
△最初の一合で相手の実力を知る。/在第一回合摸清对手实力。
(2)一个回合。(剣道などで、互いに···を一度打ち合わせること。)
△最初の一合で相手の実力を知る。/在第一回合摸清对手实力。
[5]矢鱈◎【やたら】【副·形动】
(1)胡乱,随便,任意。···みだり。むやみ。)
△矢鱈(···)金を使う。/随便花钱。
(2)非常,过分。(非常に。)
△矢鱈(に)眠い。/困得要命。
△矢鱈(に)のどがかわく。/嗓子非常干。
[6]里◎【さと】【名】
(1)村落,村庄。(村落。人里。)
△里に春がきた。/春天来到村庄上。
△あんずの里。/杏儿的产地;产杏之乡。
△実り豊かな里。/鱼米之乡。
(2)乡间,乡下。(いなか。)
(3)娘家,生家,自··家。(妻や奉公人などの実家。〕
(4)寄养人家。(里親の家。)
(5)故乡,老家,故里。(ふるさと。故郷。)
△お里はどちらですか。/你的故里是哪里?
△そんなことをすると、お里が知れるぞ。/你要是做那样事,就会暴露出你的老底来〔就会露出你的马脚来〕。
[7]未だしも①【まだしも】【连语】【副】
还算可以,还说得过···。(よくもないがそれでも。)
△一人や二人なら未だしも、一〇人も来るとは。/来一两个人还行,居然来了10个人。
[8]同じ◎【おんなじ】【名】
(同おなじ)相同;一样;同···;相等;同一。