になったのだろう。その『フランダースの犬』を人生後半[1] になって五十年ぶりに読み直したところ、この物語は、ただかわいそうというのでなく、つらいことや悲しいことの多い、ままならない人生をどう受容[2] するか、そんななかにあって逆境[3] を恨む[4] のでなく、肯定[5] 的な意味をどう見出す[6] かについて考えさせてくれるという読み方もできることに気づき、そのことをエッセイに書いたのだった。
しかし、先の児童[7] 文学者は、この物語をセンチメンタル[8] の一語[9] で一刀両断[10] に切り捨てた[11] のだ。
私は戸惑った[12] 。少年時代に他者[13] の不幸に悲しみを感じ涙を流すという経験をするのを排除[14] して、『明るく、楽しく、強く」という価値観だけを押しつけると、その子の感性[15] も感情生活も乾いた[16] ものになってしまうと、私は考えているからだ。
そこで気づいたのは、日本の高度経済成長期以降の歴史は、大人の世界でも子どもの世界でも、「明るく、楽しく、強く」「泣くな、頑張れ」ばかりが強調[17] され、「悲しみ」あるいは「悲しみの涙」を排除[18] し封印[19] してきた歴史ではなかったか、ということだった。
悲しみの感情や涙は、実は、自らの心を耕し[20] 、他者への理解を深め、明日を生きるエネルギー源となるものなのだと、私は様々な出会いのなかで感じる。私と同じ世代のある知人[21] は、小学生時代に『フランダースの犬』に何度となく涙を流したことが、やがて養護[22] 学校の教諭[23] となり、子どもたちの教育に情熱[24] を注ぐ[25] ようになる原点[26] となったという。
愛する人や家族を病気や事故で失って悲嘆にくれる人々が、悲しみを分かち合う[27] ための「生と死を考える会」を東京でささやか[28] に発足[29] させたのは、一九八〇年代はじめのこと。九〇年代になると、全国各地に同じような会が続々[30] と生まれ、二〇〇〇年には百を超えるまでになった。それは、封印されてきた「悲しみ」の感情を解放[31] し、
[1]後半◎【こうはん】【名】
后半,后一半。(前後二つに···けた、あとのほうの半分。)
△19世紀の後半。/十九世纪的后半期。
△後半は中国語で書かれている。/后一半是用中文写的。
△後半期。/后半期。
△後半戦。/后半场。
[2]受容◎【じゅよう】【名·他动·三类】
容纳,接受。(···けいれること。 )
△西欧文明を受容する。/接纳西欧文明。
△受容性に富む。/乐于接受。
△受容器。/感受器,受纳器。
△受容体。/接受体,被诱体。
[3]逆境◎【ぎゃっきょう】【名】
逆境,拂逆的处境。(物···がうまくゆかず,苦労の多い身の上。不遇な境遇。)
△逆境にある人。/处于逆境的人。
△逆境と闘う。/同逆境作斗争。
[4]恨む②【うらむ】【他动·一类】
怨,恨,抱怨。(相手···仕打ちを不快·不満に思う。また、くやしくのろわしく思う。恨み言を言う。恨みを晴らす。仕返しをする。)
△人に恨ま··る。/招人恨;得罪人。
△我が···を恨む。/怨恨自己。
△ひどい仕打ちを恨む。/对那种极端恶劣的态度,怨恨不已。
[5]肯定◎【こうてい】【名】【他动·三类】
肯定,承认(··事を,正しく妥当であると認めること。積極的に意義を認めること。同意。是認)。
△事実の存在を肯定する/肯定事实的存在。
△肯定的な答えをする/作肯定的回答。
△肯定も否定もしない/既不肯定也不否定。
[6]見出す③◎【みいだす】【他动·三类】
找到,找出来,看出··,发现(見つけ出す。発見する)。
△人材を見出す/发现人材。
△逃げ道を見出す/找到逃脱的道路。
△暗闇の中にひとすじの光明を見出す/在黑暗中看到一线光明。
[7]児童①【じどう】【名】
儿童;学龄儿童(身体·精神と···にまだ十分に発達していない者。普通,小学校に在学する者をさすが,児童福祉法では一八歳未満の者をいう)。
△児童向··の小説/童话故事。
△児童画··儿童画。
△児童期/童年。
△児童文学/儿童文学。
△児童教育/儿童教育。
△児童劇/儿童剧。
△児童心理学/儿童心理学。
[8]センチメンタル④【センチメンタル】【形动】【英】 sentimental
多情···感(的),易动情感(的),感伤(的)。(ちょっとしたことにも感じやすいさま。涙もろいさま。感傷的。)
△センチメ··タルな話。/感伤的话。
△セ··チメンタルになる。/感伤起来。
△彼女はセンチメンタルで小説など読んでもすぐ涙ぐむ。/她易动情感,看小说也会马上眼泪汪汪的。
△センチメンタルな娘。/多情善感的姑娘。
[9]一語②【いちご】【名】
(1)一个单词,一个字。(一つの語。)
△一語も発しない。/一句话也不说。
(2)几句话,只言片语。(短い言葉。一言半句。 )
△一語も発しない。/一句话也不说。
[10]一刀両断 [U]
いっとうりょうだん
[0]〔一刀両断〕〈名〉
ひとたちで?まっ二つに切るように?ものごとを思いきって処置すること/一刀切成两块,比喻处理事情干脆?一刀两断?
△~の処置をとる/采取果断措施?
[11]切り捨てる④◎【きりすてる】【他·二类】
(1)切〔砍〕下扔掉···切掉,切去。(必要でない部分を切って捨てる。)
(2)任意斩杀···(人などを刀で切り、そのまま放っておく。切ってしまう。)
(3)舍去,舍···。计算中吧所求位数后面的尾数忽略不计。(計算で、求める位に満たない端数を無視する。)
(4)舍弃,丢开,抛弃,不顾。(ある基準以下のものを無視する。···
△弱者を切り捨てる。/舍弃···者。
△過去を切り捨てて新し···生活を始める。/抛弃过去的一切,,开始新的生活。
[12]戸惑う②【とまどう】【自动·一类】
不知如何是好。(手···や方法を思いつかないでまごつく。)
△部屋をまちがえて戸惑う。/走错房间而徘徊。
△家が広いので戸惑う。/房子大,找不着门。
△予想しなかった質問をされて戸惑う。/对方提出了没有料到的问题,不知如何回答才好。
△何をとまどっているのだ。/你犹豫什么?
[13]他者①【たしゃ】【名】
别人,其他人。(なんらかの意···で自分と対立する存在として考えられる自分以外の人。)
△他者の目から見ると。/在别人看来。
[14]排除①【はいじょ】【名·他动·三类】
排除。(おしの···てそこからなくすこと。)
△···力を排除する。/排除暴力。
△じゃまものを排除する。/消除障碍'。
△外国勢力の干渉を排除する。/排除外来势力的干涉。
[15]感性◎【かんせい】【名】
(1)感性,感受性。( 物事··心に深く感じ取る働き。)
(2)感性。(外界からの刺激を受け止める感覚的能力。)
△ 感性の世界。/感性世界。
△ 感性論。/感性论。
[16]乾く②【かわく】【自动·一类】
干燥。(熱などのため···水分や湿気がなくなる。)
△···たく物が乾いた。/洗的东西干了。
△池の水が乾いてしまった。/池子里的水干了。
[17]強調◎【きょうちょう】【名】【他动·三类】
强调,极··主张。(ある部分を特に調子を強めていうこと。また、意見·内容を強く主張すること)
△事の重大性を大いに強調する/极力强调事情的重要性。
△それはとくに強調する価値がある/那值得特别加以强调。
[18]排除①【はいじょ】【名·他动·三类】
排除。(おしの···てそこからなくすこと。)
△···力を排除する。/排除暴力。
△じゃまものを排除する。/消除障碍'。
△外国勢力の干渉を排除する。/排除外来势力的干涉。
[19]封印◎【ふういん】【名·自动·三类】
封印;封条。(···の物の使用や開閉を禁ずるために、封じ目に押したり証紙を張り付けること。また、その印や証紙。)
△封印をする。/贴··条,加封印。
△封印付き。/··封条的;加了封印的。
△遺言··に封印する。/给遗书贴封条。
[20]耕す③【たがやす】【他动·一类】
耕。(作物を作るた···に、田畑の土を掘り返す。)
△畑を耕す。/耕地。
△山の中···を耕してそばの種をまく。/把山腰耕了,播上荞麦种子。
△新たに荒れ地を耕す。/开荒,新开垦荒地。
[21]知人◎【ちじん】【名】
相识(知りあい);熟人。(親···い人。)
△知人を頼って渡米···る。/去美国投奔熟人。
△知···関係。/朋友关系。
[22]養護①【ようご】【名·他サ】
(1)护养,护养。保健。···别加以保护地帮助成长。(特別に保護を加えながら成長を助けること。)
△からだの弱い子どもを養護する。/护养体弱的儿童。
△養護施設。/保健设施··所〕。
(2)养护,保育。根据儿童身心的成熟程度,对儿童加以保护,促进成长、发··。(〔教〕 児童の心身の成熟の程度に応じ、これを保護しその成長·発展を促進すること。)
[23]教諭◎【きょうゆ】【名·他サ】
(1)教诲『書』,训谕···書』,教导。(おしえさとすこと。)
△養護教諭。/保健教师。
(2)教谕。依据《日本教育职员资格法》取得普通···格证书、且从事学校教育的人员。小学、中学、高中、盲人学校、聋人学校、养护学校以及幼稚园的正教员。(教育職員免許法に基づく普通免許をもち、学校教育に従事する者。小·中·高の学校、盲学校、聾学校、養護学校および幼稚園の正教員。旧制では、中等学校の正教員。)
△養護教諭。/保健教师。
[24]情熱◎【じょうねつ】【名】
热情,激情。(激しく燃え···つ感情。)
△燃えるような情···。/火一般的热情。
△非常な···熱を示す。/显得非常热情。
△登山に情熱をもやす。/一心想要爬山。
△情熱を欠く。/缺乏热情。
△情熱をさらけ出す。/表示出激情。
△情熱を傾ける。/倾注热情。
△情熱をこめて。/满腔热情。
△情熱家。/热情的人。
[25]注ぐ◎【つぐ】【他动·一类】
斟;灌(进),注入;倒··倒入。(液体を容器にそそぎ入れる。そそぎ入れる。)
△茶碗にお茶を注ぐ/往茶碗里倒茶。
△杯に酒を注ぐ/往杯里斟酒。
△もう少し湯をついでください/请再给倒上点热水。
△しょう油つぎ/酱油壶。
△ごはんを注ぐ/盛饭。
[26]原点①【げんてん】【名】
(1)基准点,原点。(距離などを計る時のもとになる地点。)
(2)出发点;根据;根源。(その問題のそもそもの出··点。)
(3)座标的交点,原点。(数直線や座標平面··の基点。)
△座標の原点を通··直線。/过坐标原点的直线。
[27]分かち合う④【わかちあう】【他動】
互相分享,共同分担。(···け合う。)
△喜びを分かち合···/共同〔分享〕喜悦。
△苦し···と楽しみを分かち合う/同甘共苦;苦乐与共。
[28]ささやか②【ささやか】【形动】
(1)细小;小。(小さく細かいさま。)
△ささやかな店。/小规模的店铺。
△ささやかな収入。/为数不多的收入。
△ささやかな宴会。/小(小的)宴会。
△わたしのささやかな著作。/我的小作。
(2)微薄;简单;简朴。(わずか。)
△ささやかな贈り物。/小小的礼品;略表心意的礼品;菲薄的礼物。
△ふたりでささやかに暮らしている。/两个人简单地过日子。
△ささやかな家庭を築く。/建立一个简洁的家庭。
[29]発足◎【ほっそく】【名】【自动·三类】
(1)出发,动···(出発する)。
△新しく発足する。/从新开始。
△協議会は来月から発足する。/协议会下月成立(开始活动)。
△会社は4日より発足する。/公司从四号开始工作(活动)。
△協会は発足したばかりだ。/协会刚开展活动。
△発足当初。/成立当初。
(2)开始活动(始まる)。
△新しく発足する。/从新开始。
△協議会は来月から発足する。/协议会下月成立(开始活动)。
△会社は4日より発足する。/公司从四号开始工作(活动)。
△協会は発足したばかりだ。/协会刚开展活动。
△発足当初。/成立当初。
[30]続々◎①【ぞくぞく】【副】
源源不断,陆续,接着。继续···(ひきつづいて絶えないさま。絶え間なく続くさま。)
△観客が続々と詰め掛ける。/观众蜂拥而至。
△見物人が続々と入場する。/参观者不断涌来。
[31]解放◎【かいほう】【名·他动·三类】
解放,摆脱,解···。(束縛(そくばく)されたり、制限されたりしているものを、ときはなして自由にすること。)
△奴隷解放。/解放奴隶。
△婦人を家事から解放する。/把妇女从家务解放出来,使妇女走出厨房。
△罪人を牢獄から解放する。/从监牢放出罪犯,释放监狱里的罪人。
△やっと苦痛から解放された。/好容易解除了痛苦。
△1日の家事労働から解放される。/从一天的家务解放出来,摆脱了一天的家务。
△窮屈な思いからやっと解放される。/好容易才从拘束的局面解脱出来。